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第14話

 王都”エルダーウッド”での滞在は、2週間を予定している。


 シルファヒンはトウバを誘い、何度かデートに出かけている。

 ”シュリミエール”に予約なしで入れるほどのコネは無いが、そこそこ良い所をデートで回った。

 また、トウバと一緒にお茶会にも参加している。

 トウバは、昔からアルクファン女王に気に入られている。

 シルルート国内では”シルファヒンの恋人”と認知されることになった。

 外堀が完全に埋まったことを、トウバは気づいていない。


 2週間が過ぎ、最後のデートの別れ際に、トウバはシルファヒンを呼び止めた。


「……シル様。 好きになってしまいました。私の恋人になって下さい」


 一瞬で真っ赤に顔を染めたシルファヒンは、ぷいっと顔を横に向けた。


「シル……です。もう一度……言って」


「!! シル。好きだ。俺の恋人になってくれ」


「はい。当然なりますわ」


 トウバはシルファヒンの両手を取った。


「ありがとう。とてもうれしい」

 

 二人はその場で三回、くるくると回った。


「ちょっ」

 最初は驚いたシルファヒンだが、三回目で満面の笑みになった。


 まなじりには少し涙がにじんでいた。



 メルル―テとイナバは、打ち合わせのために飛行艦の発着場に来ていた。


 整備士の服を着た5人の男たちが、並んで立っている。


 イナバは、男たちの背後をちらちらと見ている。


 5人のリーダーと思われるドワーフの男が

「エクセリオンの修理のために、レンマ王国に行く整備士チームのリーダー”ドワイト”だ」


 背後には、”ミナヅキ”を少し小さくしたような飛行艦が駐艦している。


「しかし。メル嬢ちゃんも狭いルート内で空賊とやりあったんだってなあ」

 ドワーフの寿命は、300歳くらいある。

 メルル―テより年上だ。 


 姿勢制御用のレシプロ推進器が艦体左右に4つ。

 前進後退用に、後部の上部に2つ。

 

「狭い場所で、破片をよけそこないました~」


 前後左右に収納式のクレーンを4つ装備している。


「ま。無事でよかったよ」

「しかし。シル坊に恋人が出来たんだって」


「シルはがんばってましたよ~」 

 横にいるイナバをちらりと見る。


 さっきから落ち着きがない。


「メル嬢ちゃんもかよ」

「で。若いの。そんなに後ろのが気になるのか」


「はい。・・・”満月級”ですか?」


「そうよ。修理工作艦”ベルゲムーン”」


「工作室も備えた、移動工房よ」


 ”満月級”は、シルルート王国が飛行艦を造れなかった時に、レンマ王国から輸入した第3世代飛行艦だ。

 ちなみに、”ミナヅキ”は、約30年前に異世界から渡ってきた”バイク”の特に”ボールベアリング”の技術を、回転部分に使用した、第4世代飛行艦である。

 ”ボールベアリング”の技術で推進器の性能は、飛躍的に向上した。

 エクセリオンは、魔術式ジェット搭載の、第6世代飛行艦である。


 ”満月級”は”ミナヅキ”のおじいちゃんに当たる。


 ”ミナヅキ”が、ロートル艦なら、”満月級”は、クラッシック艦だ。


「飛ぶんですか?」

 30年以上前の艦だ。


「はは。あんたの国のシタデル構造は丈夫だよ」

「推進器は、第4世代のものに変えてるがな」


「私が初めて乗った飛行艦が、”満月級”でした~」

「懐かしいです~」


「中を見せてもらっても?」


「おう。二人で回ってこいや」


 気を使われてしまった。


 メルル―テの解説と思い出話を聞きながら艦内を回り、中々楽しい時間を過ごした。



 レンマ王国に向かって出発の時が来た。

 船足の関係で、予備の”魔術式ジェット”は”ミナヅキ”に乗せることになった。

 ”ベルゲムーン”に乗せると格段に速度が遅くなる。

 2艦が、階層式の着艦場の外にゆっくりと出てきた。

 形は似ているが、”ミナヅキ”は群青色をしており、”ベルゲムーン”は淡いオリーブグリーンに塗られている。

 2艦は、サイドスラスターを使い、その場で艦を回転させ、並走しながらレンマ王国に向かった。


 もう季節は冬だ。

 白眉山脈のルートは、雪で真っ白になっていることだろう。

まわってしまった……

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― 新着の感想 ―
[良い点] ベルゲティーガーを連想しました。これもまたニッチな……大好きです。
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