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第12話

 シルルート王都”エルダーウッド”の真ん中に、樹齢千年近い”アカイア”の大木がそそり立っている。

 建国当時からこの大木は、この地にあったと言われていた。


 ”エルダーウッド”についたトウバは、王宮”エルダーウッドパレス”でシルルート女王と謁見することとなる。

 シルファヒンを少し大きくして、大人っぽくした感じの女性が、一段高いところにある玉座に座っていた。


 シルルート女王、アルクファン・シルルート。


 シルファヒンの母である。


 トウバと、シルファヒンが跪いて礼をする。

 

「この度は、我が娘を助けていただき誠にありがとうございます」

「楽にしてください」


 二人が立ち上がる。


「貴方が、トウバ艦長ね」


 シルファヒンによく似たまなざしに、すこしドキリとした。

 シルファヒンがトウバの様子に気づいて少しムッとする。


「おかえり。シルファヒン」


「ただいま帰りました」

「お母さま。今夜の歓迎の晩餐会に、トウバ艦長にエスコートしてもらいたいのですが」

 トウバをちらりと見た。


「私でよければ、喜んで」


「まあっ。・・・いつまでもエスコートが弟たちではいけませんわね」


 シルファヒンの下には4人の子供がいる。

 ハーフエルフは、パートナーに先立たれても一途に思い続ける反面、子供を沢山欲しがる。

 先立たれた後、寂しくないようにするためである。

 ちなみに、ハーフエルフから生まれる子供は、ハーフエルフか、人間である。


「それでは、今夜のエスコートはよろしくお願いします」


 しばらく、ミナヅキの旅の話をして謁見は終了した。



 夕方、シルファヒンをエスコートして、晩餐会に参加する。

 広間に入った時シルファヒンが、広間の“シャンデリア”とトウバの様子を交互に見て、満足気にうなずいていた。


「?」 


 その後、アルクファン女王と、七人いるシルファヒンの兄弟、姉妹と、挨拶や立ち話をした。

 他、外交的な挨拶が続く。

 しばらくした後、ダンスの時間になった。

 トウバとシルファヒンは、楽しそうに二回続けて踊った。

 しばらく、休憩した後シルファヒンが、顔を赤らめてトウバの腕を取り、強引にホールの中央に引っ張っていく。

「踊りましょうっ」

 一瞬ホールがざわめいた。


「はい」

 二人が踊り始める。


 トウバは当然知らないが、シルルート王国では、未婚の女性が三回連続で同じ人と踊った場合、”将来恋人以上を目指します”という宣言になる。


「トウバは、私のもの」


 と大声で言ったも同然だ。


 アルクファンが満面の笑みで見守っていた。

 (6歳の時から……長かったですね)


 その後、二人は楽しそうに過ごし晩餐会が終わる。

 トウバが、迎えの馬車を待っている間、シルファヒンが、セバスに合図を送った。

 トウバは、セバスから足元を照らす“ランタン”を渡される。


「シル様。今夜は本当に楽しかった。ありがとうございます」


「私も楽しかったです。気を付けてお帰りください」


 ランタンで足元を照らしながら、馬車に乗るトウバを見ながら、二人はうなずき合った。



 次の日、セバスは、国際竜騎士警察の出張所に来ていた。

 レンマ王国から、そっくりのものと入れ替え、密かに持ち出していた”魔術式ランタン”を持ってきている。

 ソファーと低い机がある相談室に通された。

 しばらく待つと、30代前半の女性が入ってきた。


「レリア一級刑事ですわ。この度の御用件は?」


「シルファヒン第三王女の執事をしています、セバスティアンと言います」

 ランタンを前にある机に出す。

 スイッチを入れる。

 やはり、少しクラりとめまいがする。


 昨日、トウバに渡した()()()の”魔術式ランタン”ではめまいはしなかった。


 広間のシャンデリアもレンマ王国と同じ”魔術式”である。


「えっと……」

 レリアは人間だ。しかしトウバと違い何も感じていないようだ。


「このランタンは”魔術式”がいじられているようです」


「えっ」

 魔術は大変危険なものだ。

 約十年前に起きた、ハナゾノ帝国の”魔術”に関する大事件にレリアも深く関わっている。

 魔術式。特に、”魔封じの術式”を勝手に変えることは極刑もあり得る重犯罪になる。


 セバスは、トウバのことも含めて細かい経緯を、レリアに説明した。


「このランタンは証拠品として預かっても」


「はい」

 セバスは、最初からそのつもりで持ってきている。

 レリアは、ハナゾノ帝国の魔術学院に強いパイプを持っている事を、セバスは知っている。


「ハナゾノの魔術学院に、ランタンを調査に出しますわ」 


「よろしくお願いします」


 レリアは竜騎士である。


 次の日、レリアは自分の飛竜に乗り、シルルート王国の西に広がるシェルダの森(旧、帰らずの森。飛行船の発達で簡単に超えれるようになった)を超え、ハナゾノ帝国へ向かった。 


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