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第11話

 翌日は、全員休暇日なので、それぞれのんびり過ごす。

 マルーン湖のレインボートラウトは有名なので、午前中は釣り大会の様になった。

 昨日の飲み会から、トウバとシルファヒンは、仲睦まじい姿を隠さなくなった。

 二人が並んで釣りをして、トウバがシルファヒンの餌をつけてあげたりしている。


 結局、年の功か、セバスティアンが一番沢山釣っていた。

 変わり種として、メルル―テとイナバが”ラージマッドクラブ”を二人で釣っていた。

 名前の通り、甲羅の部分だけでも1メトルくらいある巨大な蟹である。

 大きいにも関わらず、身が締まって大変美味。

 滅多に見れない高級食材である。

 食堂班が興奮していた。

 そのまま、昼から、飛竜甲板の上でバーベキューになる。

 釣りたてのレインボートラウトも美味しいが、ラージマッドクラブの、焼きガニ、カニ鍋、カニみそと酒の肴には事欠かない。

 レンマ特産の米の酒にもよく合う。

 総勢18名が食べても余るくらいあった。

 二日連続の酒宴に、シルルート組とミナヅキの乗組員の仲がさらに良くなった。

 


 翌日の朝、


「錨を上げろ」


「ヘリウムガスを規定値へ」


「ミナヅキ。離水」


「離水しました」


「高度上昇。シルルートに向けて発進」


 レンマ方面の入口から約45度の方向にあるシルルート方面の出口に向かい、ミナヅキは前進した。

 これから徐々に高度を上げ、万年雪が積もるルートに入っていく。


 二日進んだ。

 辺りは一面、真っ白の雪景色である。

 乗組員は、ミナヅキと胸に書かれた防寒用のコートを着ている。

 ブリッジの真ん中にダルマストーブが置いてあり、ポッドが白い煙を上げていた。


「シル様。ホットコーヒーはいかがです?」


「ありがとう。いただきます」

 いつものように、艦長席の斜め後ろの椅子に座ったシルファヒンが答える。

 藍色のミナヅキの軍用コートが似合っていた。


 トウバは、ブリッジの後ろの部屋にある給湯室に、ポッドを持って二人分のコーヒーを作りに行った。


「艦長。山脈の峠を越えます」

 操縦士のカリンが言う。

 これから先は緩やかに高度が下がって行く。


「どうぞ」

 トウバは、コーヒーをシルファヒンに渡す。


「ありがとう」

 フーフー言いながら飲み始めた。


 その姿を微笑ましく思いながら、右舷を見ると


「おっ。シル様、”冬将軍”がいますよ」

 右舷の遠くの空に、大型の白い竜と中型の白い竜が三匹飛んでいる。

 四匹とも、”フロストドラゴン”である。

 四匹の竜はハナゾノ帝国の東方を、北から南に、強烈な寒気を伴って渡っていく。

 本格的な冬の始まりだ。

 大型の竜は、六枚翼が特徴的なエンシェントドラゴンの、”スノーフラワー”である。

 

「手の空いているものは、右舷に注目。”冬将軍”の到来だ」


 しばらく、コーヒーを片手に巨大な竜たちが渡っていくのを。右舷の外部廊下から見送った。



 その後、約二日飛行しシルルート側の白眉山脈の麓に降りてきた。

 出迎えに、シルルートの主力艦である、ガルド級飛行艦”シュペリオン”が来ていた。

 少し明るめのオリーブグリーンに塗られた艦体。


 ガルド級飛行艦”シュペリオン”


 ミナヅキより一回り小さい艦体。

 術式ジェット八機搭載。

 曲面が多用された、シルルート特有のモノコックボディー。

 上部ブリッジの後ろに、飛竜甲板と竜舎があり、一騎の竜騎士を搭乗可能。

 特徴的なのは、上部の後ろと下部の前後につけられた、パイルバンカー用の回転砲台である。

 各砲台に二門ずつ、計六門のパイルバンカー射出機が搭載されている。


「こちらシルルート空軍所属、飛行艦”シュペリオン”艦長サウトルです。この度はシルファヒン王女を助けていただき、大変ありがとうございます」

「シルルート王都”エルダーウッド”までの案内を仰せつかっております」


「お迎えありがとうございます。レンマ空軍所属、飛竜空母”ミナヅキ”艦長トウバです」

「案内よろしくお願いします」


 艦の外部廊下に出て手を振っている、シルファヒンとメルル―テを見つけたのか、


「二人とも元気そうで何よりです。メルル―テ教官にもよろしくお伝えください」 


 ”ミナヅキ”から”シュペリオン”に移ることを、シルルート組三人に提案したが、満場一致で否決された。

 シルルート組三人に、密かに”ミナヅキホテル”と呼ばれている事をミナヅキの乗組員は知らない。


 約三日ほど飛行し、シルルート王都”エルダーウッド”が見えてきた。

 

 遠くからでも、王都の真ん中にそそり立つ巨木が見える。


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