EP9 宇宙の生と死&SHADO &"プロジェクト・メシア"
話が大幅に逸れてしまった。
俺の所属は、銀河惑星連邦太陽系支店 地球人類滅亡救済を使命としたSHADO。
その中の"プロジェクト・メシア"のキーパーソンなのだ。
ここで何故俺が地球の救世主なのかを話しておこう。
生物は絶えず細胞の入れ替えを行いながら成長、体を維持している。それは宇宙も同じであり、言うなれば宇宙全体が巨大な生命体と同じなのだ。
人間は時には病気にかかる。大抵は市販薬を飲んだり、行きつけのクリニックで診察、処方してもらう。
自力で治すという手もあるが、そんな猛者はあまり存在しないだろう。
それに地球人類はまだ、治癒魔法が存在することを知らない。
少数の人間が、オカルトや錬金術などを真剣に研究していた時代があったが、
もっと探求すれば魔法理論の糸口に辿り着けたはずだ。
科学の進歩が、魔法理論の研究を阻害し、科学で全て解明できるという、科学万能主義が地球に蔓延ってしまった。
実に惜しい選択をしたものだ。
さて、地球人類が滅亡する原因。それは宇宙の生と死にあった。
我らが太陽は、昔から"おてんとう様"と親しまれてきたありがたい存在。
世界中の国旗を見ても、神の象徴として描かれ、人間の生活、否、地球生命全てに無くてはならないもの。
その我らが太陽が3年後に狂う。我々を殺すほどに。
太陽の異変は実は第二波であり、ある第一波の到来と共にそれが相乗効果をもたらし、地球に壊滅的ダメージを負わせる。
高校生の時にアブダクションされインプットされた時には、とても信じられるような話ではなかった。
太陽が狂う、ストレートに言えば太陽の生きる過程で起こる思春期。なぬ?と声を出さないで、も少し聞いてほしい。
我々の太陽は若い故に、思春期の人間のように状態が不安定になる。
太陽が更なる成長過程で、状態が不安定になるという事は、太陽内部で大胆なエネルギーの改変が進む。
その結果不要な老廃物は、対外に排出されるのだ。
この老廃物というのが、膨大な量のストームフレアであり紫外線だ。
連邦の計算では、通常の10万倍のフレアが太陽系に放出される。
ジュラ紀、白亜紀の王者 恐竜が絶滅したのは、当時の太陽が起こした小規模なオナラが原因なのだと言う。
そんな屁で、恐竜が絶滅。3年後は、屁より超強力なストームフレアが暴風のごとく地球に降り注ぐのだ。
連邦は古くから太陽の観測を行い、500年前に太陽が思春期に入ることを掴んでいた。そして、もっと恐ろしい要因に対しても。
予測計算によると、地球に超フレアの嵐が降り注ぐXデーは2023年。
太陽の異変は太陽系内だけで済む話ではない。500年前、連邦は直ちに防衛手段を考案、Xデーに対応していた。
地球を除いて。
思い出してほしい。500年前の地球を。
1500年代の地球の科学力はとてもチープであり、連邦が密かに介入する余地がなかった。
連邦の規則により、該当する惑星住民と協力支援して救済するのが救済の原則。
ところが、領土争い、主義、主張、エゴによる戦争、己の欲のためなら、平気で隣人さへ殺す。そんな野蛮でどうしようも無い地球人など、救う価値などない、見捨てれば良いという声も上がっていた。
そこに、『同じ生命、同じ宇宙に住む地球人の可能性を信じて救おう』という当時の連邦議会の決定があって、地球人類救済の道が開けたのだった。
以後、連邦は地球側SETI 、SERN、NASAなど、地球人類側の最高頭脳集団と極秘にコンタクトすることになる。
SHADO (Supreme Headqnarters of Attack Defence Organisation)
(地球)最高攻撃防御組織
1940年以降、2023年に起こる地球人類滅亡に備えて組織された。
本部は建設工事で目立たないよう、全長3,000mの超巨大母船G-ツェッペリン3000型を代用して伊勢湾沖に潜航させている。
G-ツェッペリン3000仕様
乗員2,600名 プロジェクト・メシアのために必要な装置製造、要の反重力エンジンの設計、建造ができる母船だ。
連邦は、防御システムとエンジン開発のための人類最高の知能、知識、理論を持つ天才科学者、技術者を求めて徹底的に調査をした。
結果三人の候補者が挙がる。
ご存知 アルベルト・アインシュタイン博士、二コラ・テスラ博士、フォン・ブラウン博士の面々だ。
アインシュタイン博士以外の二人は、第二次世界大戦終了間際のどさくさに紛れて拉致、人類滅亡から救済する"プロジェクト・メシア"計画の全貌を教育マシンでインプットした。
その際にβ版クローンを作成し、彼らの死後転生させた。
連邦が防御システム製造、反重力エンジンも供与すれば良いという意見も出た。それが可能なら一番早い解決策になるはずだ。
だが、最も大きな問題は防御システム起動に特殊な触媒が必要になる。
惑星は様々な条件で成り立っており、同じ触媒では拒絶される。その触媒とは、地球人から選ばれた特別な能力を持つ存在が必要なのだ。
救世主と呼ばれる存在、早い話が俺だ。
三人の科学者たちは、教育マシンでこれらの製造、建造に関する理論と技術をマスターしている。
彼らの仕事は、地球の特性と001との同期調整、更に防御システム起動に必要なアクセス認証及び実行プログラムの開発だった。
これらは、連邦の技術者にはできない。
同期調整が最大の難問なのだが、これが出来るのは三人の博士たちのみ。どうやら地球人であることが鍵となっている複雑な要因が絡んでいるようだ。
連邦は本部となる巨大母船、技術提供と資材の50%、建造に関わる人員を提供し、人類救済に向けて体制と準備が整うと思われた。
ところが地球側の協力体制が進まない。米国や日本、イギリス、フランス、ドイツからの協力体制は秘密裏に進んいる。
こんな緊急事態であっても、自国第一主義、資源確保、民族主義、宗教思想の強い社会主義国、発展途上国などが反発した。
多難な2020年が始まった。