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SF 正妻の座争奪戦争   作者: やまじじい
8/70

EP8 唸る便所スリッパW炸裂!!

俺は、拉致された時に明かされた地球に襲い掛かる終末、それを回避するために自分が選ばれ、何をするのか全てを理解した。


凛々しい顔つきに変化した俺の手を握って課長が言う。

「帰ってきたな、001、いや、救世主よ」


その時、課長の姿が二重にぶれる。片方が右にスライドして、白く輝きだした。やがて白い輝きに課長が飲み込まれて姿を消す。

輝きが収まり、そこに立っているは課長ではない、凛々しい軍人だ。

身長180㎝はある。緑色の軍服に肩章、緑色のズボンにブーツを履き、

"SHADO"の刺繍が入ったキャップが誇らしい。


あの時の出来事が呼び戻される。

笑顔で接する軍人が口を開く。


「もう理解しているはずだが、改めて自己紹介する。私は銀河惑星連邦 太陽系支店 支店長 カロヤン大佐だ。

わかるな? 001と会うのは二度目だ。今から君の直属上司になる。必ず任務を遂行してくれ」


過去の記憶が蘇っているので、もう慌てることはないが、久しぶりなので驚いてしまった。  

『高校生の時に会って以来だからな』

アインシュタイン博士にも、その時に会っている。


「よく戻った。関野君、この日を待ちわびたよ」

博士とも固い握手を交わす。

ステラとメーベが仮称UCAに採用されたのは、二年前からなので面識はない。

だが、二人揃って俺に抱き着き、匂いを嗅ぐ。

 フンスカ フンスカされながら  

『パイがイッパイ パイの森ぃぃぃ 楽園でござるぅぅぅ』

思わぬご褒美に昇天一歩手前の俺だった。


「「ご主人様ぁぁ お帰りなさいませぇぇ」」

美女二人の突撃Wアタック&Wホールドに目尻と鼻の下を伸ばさない男などいない。

それを見たカロヤン大佐が、アホがと言った顔つきで話す。


「ディスペルする前に、君はモテたかね?と聞いたことがあるだろ?」

『確かに聞いた。理由を聞いて萎えた』

あの時課長から聞いた、彼女たちが俺に惚れている理由とは


あの時の課長回顧シーン


「二年前、001のクローンをテストで作り上げた。その時連邦本店から新入クルーとして派遣された二人の仕事の中に、001クローン体の保守管理業務があったのだ。

クローンは生きている。生命維持方式が冷凍睡眠カプセルではないため、生存のためのエネルギー補充、健康管理を二人に任務として命令したのだ。主任がステラ、(ビタビタ)がメーベだ。

 

宇宙航行の推進エンジンは数種あり、最高峰のドライブはやはりワームホールを移動するジャンプだ。

これを使えばわさわざ冷凍冬眠する必要がない。

ジャンプドライブを装備しているアンドロメダ2000、アストラル・ブルー号に搭載されていないのは当たり前なのだ。

こんな方法を使うのはレトロ愛好家か、金のない一部の宇宙冒険者だけだ。


ところが、管理者たちにちょっとした盲点があった。

要点だけピックアップすると

①連邦で育った彼女たちはリアル地球人を見たことがない。

②連邦の種族はほぼ美男美女であって、そうであるのが普通。

③アジア系の人間は黒目黒髪だが、連邦種族に黒目、黒髪は存在しない。

④決定的なのは団子鼻。


 連邦種族にこのタイプはいない。連邦内の女性愛好雑誌「Ahe Ahe」の特集記事 "今地球人 団子鼻男性が熱い!" に3D写真付きで紹介されたのが三年前、韓流男子に憧れる乙女たちのように、地球ブームが巻き起こっていた。


 特に日本人が最高であり、地球は適齢女性の憧れの惑星となった。

だが、今は人類未曾有の危機を迎えているため、おいそれと来訪することができない。連邦から外出禁止令が出ているのだ。


「難関を突破して、地球に赴任できたのは嬉しいけど・・・」

クローン体の保守点検かぁ、冴えないわねぇと、二人が顔を見合わせてがっかりしていたのだ。

しかし、001クローン体と書かれた保存ケースを見て彼女たちは、心臓を鷲掴みされたのだ。

 "グリップ・ハート現象"と言われているやつだ。


 ケースの中に眠る001、さながら童話 "眠れる森の美女"の逆バージョンそのもの。

 二人の脳裏にウェディング・ベルがキーン・コーンと鳴り響き、祝福の紙吹雪と白い鳩が舞う。

もう完全に自己陶酔の世界だ。


 いつまでも現実逃避している二人に、カロヤン大佐必殺の便所スリッパがW炸裂、

スパパ スバァーン 

「「っいったぁぁぁいいいいんんんんん♡♡」」


「くそだわけ!が 揃って甘ったれた声出すな! 」

「「あふん♡ 大佐のいけずぅぅ♡」」

たわけより酷いのが "くそだわけ"(解説終わり)


 一瞬で恋に落ちた。それ以来二人は001クローン体のことを"旦那様"と呼び、上司と部下は、恋のライバルと化したのだった。

 彼女らの001クローン体のメンテナンスは凄かった。ケースを開放しての頬ずりなど当たり前、全身を清掃すると称して全身を触りまくっていた。

無論、あそこも懇切丁寧にメンテナンスした。


 カロヤン大佐もメンテナンスが出来ているなら問題ないだろうと、彼女らの熱愛ぶりには目をつむっていた。

 実際に001クローン体を目覚めさせる事態など想定していなかったからで、備品扱いである。


 新入クルーの彼女らに甘い飴を与え、息抜きになるのならと思っていたのだが、そこへまさかの事態が起きてしまった。


 001クローン体転生が決定した時の彼女たちは、狂喜乱舞の裸踊りをした。

なぜなら、母船内に女性クルーは120名配置されているが、クローン体の存在を知るものは極一部。

 ステラもメーベも120名の女性クルーが乗船していることを敬愛するご主人様に話す訳がない。

男性クルーは拉致された地球人が、船内を歩いている程度の感覚だった。

 つまり彼が001であることを知っているのは、女性クルーでは大佐付クルーであるステラとメーベ、少数の介護クルーのみで、そのことを他のクルーに話すことは無かった。

二人がクローン転生した俺にベタベタする理由がこれだ。


 実は、001の存在を知る一部の女性クルーに対して、ステラとメーベはある共同作戦を実行していた。

暗黒魔術の得意なステラが、認識阻害魔法"チーホウ"をこっそり発動させていたのだ。

 これで邪魔な女たちは排除された。後はご主人様からの愛を獲得するのみ。


 『連邦女性の美的センスは、地球人女性とは大きく違う。つまり地球人の二枚目はスカなのだ。

 連邦の女性は黒目、黒髪に神秘的な魅力を感じる。

特に日本人で地球なら三枚目に評価が落ちる団子鼻の男性が、彼女等にとってそれはもう崇拝の対象となるほどだ。

 乙女の好みは奇々怪々。

俺はその基準に、ドンピシャに適合していて惚れられたということだ。萎えるだろう?


ラノベでは、前世は絶対にモテないオタク青年が、転生して美少年になって、ハーレム状態でウハウハな話があるが、俺の場合は同じ顔のクローンだよ。嬉しくもあるが、複雑なんだよな』



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