EP62 アイシャ・ローゼンバーグが謎を解き明かす *
2023年12月8日
地球人類滅亡まで16日
「12月8日ともなれば、SHADOクルーたちも流石に緊張している。
芽衣、アセンション波を艦内に流してくれ。Xデーを前にしてクルーが落ちつかんようでは、戦えんからな!」
午前10時
アフ~ン、アフ~ン、
「レーダー反応あり」
「大佐、小型恒星間シャトルが来ます! 推定進路、SHADO本部と思われます!」
「恐らくアイシャだろう。コード認証確認が取れたら誘導してやれ」
「はっ!」
程なくしてアイシャ・ローゼンバーグのシャトルが到着した。
シャトルの貨物室から、コンテナを一つ運搬用アンドロイドが運びだしている。
カッ カッ カッと、ヒールを鳴らして彼女が来る。
「あなたがカロヤン大佐ですね。お世話になっています」
アイシャの左薬指には、シンプルだが美しい指輪が嵌められていた。
暗黒帝国国王陛下が、帝国高校の修学旅行で会ったという美人館長だ。
『少し歳はとられているが、陛下の言われたとおり、絶世の美女だ。ここは陛下もお呼びした方がよいだろう。
しかしピーマン医師、どこでどうしたらこんな美女と!』
「大佐、事の次第はニガテヤネンから聞いております。今どこに?」
「はい、私がご案内しますから、ついて来てくださいますか」
アイシャはピーマン医師の死を知っている。なのに取り乱す様子はなかった。
霊安室に到着すると、扉の前で立ち止まり嵌めた薬指のリングを回して、はずそうと?しているように見えた。
『まさか、未亡人になったから、指輪をもうはずすの?』
「どうぞ、こちらです」
マリアが扉を開けて、案内した。
「霊安室内はたくさんの花が飾られ、良い香りで満たされている。
花を敷き詰めた床には、11柱の透明保存ケースが並んでいる。
その中からニガテヤネンのケースを見つけ出すと、ケースの上の銀色のカプセルを抱きしめた。
「あんた・・コホっ、あなたは今、ここに居るのね」
遺体は目の前にあるが、魂がカプセルに保存してある以上、まだ絶望する事はない。クローン蘇生の可能性は残されている。
とは言え、死亡した肉体からクローンは作成できない。別の生きた人間から作成したクローンが必要になる。
それは、ここに並んでいる10柱の彼女たちも同じだ。
つまり外見は別人になるという事だ。
どうやら彼女の落ち着きは、クローン蘇生に希望を持っているからだろう。
「大佐、そしてそちらのお綺麗な娘さんたち、遺体を丁重に扱っていただき、感謝申し上げます」
このような悲しい対面時でも、感情を乱さずなかなか落ち着いた礼儀正しい出来た女性だと、皆が感心した。
その時、部屋を黒いカラスが横切っていく幻を見た。
「それで私が会えない間に、宅のニガテヤネンがお嬢様方に不埒なマネをしませんでしたか? セクハラとか女風呂を覗くとか、その他もろもろです」
ガ~ン
淑女のイメージが、ガラガラと崩れ落ちた。
「いえいえ、ピーマン医師はそれはそれは堅物で有名な紳士でしたわ・・・おほほほ」
『まさか!』
実際、ピーマン医師に浮いた話などなかったのだが、何故か作り笑いをしてしまうのだ。
「ふ~ん、解せないわ。私にあれほど嫌らしく迫った、遊び人で有名なニガテヤネンが・・・あのパワーは、尋常じゃなかった」
「あーマダム、ご主人との対面は、もうよろしいので?」
パッ、一瞬で人相が変わった。
『この人、大道芸人で食べていけるな』
「あら、申し訳ございません、妄想と疑惑の世界に入り込んでいました。大佐、大切なお話が御座います。別室をご用意願えませんか?」
しんみりムードになるだろうと、慰めの言葉を用意していた我々は、複雑な心境でSHADO特設研究ラボに足を運んだ。
「それでマダム、大切なお話とは・・?」
その前に、私が持参したコンテナをここに運んでくださいませ」
アンドロイドがコンテナを運んで来る間、紅茶と甘い菓子を振る舞う。
10分程度でカラカラコロコロと、コンテナが運ばれて来た。
それと同時に帝国国王陛下もご入室された。
「あ、あなたは、あなた様は、あ、暗黒帝国星系国王陛下様!」
「うむ、ノーブル・〇ミエールⅣ世である。連絡を受けてそちの顔を見に参った。
修学旅行以来であるな、以後息災でなによりじゃ」
「陛下、アイシャ・ローゼンバーグさんは、大切なお話があるそうです。同席してお聞きになられてはいかがですか?」
「ふむ、もとよりそのつもりで参っておる!」
「では、早速てすがコンテナの中身をご覧ください」
アイシャが2m四方はあるコンテナから、一つの鈍い光をを放つ黒い塊を取り出す。それはとても小さく、手の平の上に乗る大きさだった。
「マダム、それはいったい?」
「PS変換コンバーターです」
「これは、プラズマエネルギーをソウルエネルギーに変換する事が出来ます」
「なんと! 我々が研究しても分からなかった完成品がここに!」
ニコラ・テスラ博士は驚きの余り、手にしたコーヒーカップを落とした。
「それは当然、富永ナイアに関係しているのだな!」
「兵器博物館の前館長が来ているのは、主人との対面だけではあるまい!」
「ご推察のとおりで御座います。陛下」
「陛下、これは1万年前にナイアを消滅した際に使われたPS変換コンバーターです。帝国には1万年前のナイア殲滅戦闘記録が、極秘で残されている筈」
「ほう、よくそこ迄知っておるな! それに1万年前のものが、一つ残っておったか、保存状態がよさそうじゃな」
「なるほど、それをSHADOが解析して、コピー品を大量に作れは良いのですね」
「いいえ、このコンテナの中に1万年前に使われたPSコンバーターが、1000個あるのです!」
「な、なんですとぉぉぉ!」
「解せんな、1万年前の兵器が、このように新品同様に保存されているなど、不可能であろう!
アイシャ、お前は何を企んでここへ来た!」
陛下が疑問に思うのも無理はない。
「そうだ! ピーマン医師は、その事を知らされず、帰還する前にメッセージだけを残して殺されている! これをどう説明するんですか?!」
大佐がアイシャに詰め寄り、眼光鋭い陛下がアイシャを睨む。
二人の剣幕に身を縮めるアイシャ。
「私は、レティキュリ・β星の子孫なのです!」
「なんだ、その星の名は?」
「陛下、帝国に代々伝わる1万年前の戦闘記録、あの記録に書かれている惑星こそ、私の母星レティキュリ・β星なのです!」
この場にいる全員が、アイシャの話についていけなかった。
「マダム、我々には何の話なのか、全く理解できん。詳しい話を聞かせてもらえるか?」
「これは私の家系に伝わる話です。
a long time ago in a galaxy far far a way
レティキュリ・β星の住民は、とても好戦的な種族でした。
1万年前、母星近くに接近したナイアに過剰反応して、1000隻の戦艦が霊子破壊ビーム砲をぶっ放してしまったというのです」
「ナイアの目的を調べる事なく、ただ、魂を食べるという理由に恐怖してぶっ放したのです」
「確かに記録では1000隻の戦艦とあったな」
「はい、ここにあるのが、その1000隻分のPSコンバーターなのです」
マリアが高速検索をする。
「現在の星系マップには存在しません。古代星系マップを検索します。ヒット!
1万年前、レティキュリ・β星はレティキュリ・α星と双子星でした」
「そうです。二つの惑星はいつも戦闘を繰り返していました。β星がナイアを滅ぼした事でその勢いにのり、永年の敵であるレティキュリ・α星を惑星ごと滅ぼしたのです」
「その時滅ぼしたα星の人間の魂が憎悪の塊となり、一万年後ナイア復活を助けたのではないかと思うのです」
うーむと、全員が唸るが、まだ疑問がある。
「マダム、それをピーマン医師に伝えていないのは何故です?」
「霊子の事を訪ねて来た時点では、私は1000個のPSコンバーターの存在を知りませんし、私の家系に伝わる話をする必要がないと判断したからです」
「更なる情報をと、調べ回るとPSコンバーターが、私が以前勤務していた、兵器博物館の地下に隠されていました。
ニガテヤネンにはプラズマエネルギーを変換すれば、霊子破壊ビームが作れるとは話しましたが、私は技術的な事までは知りません。
あくまで私の知っている霊子の事、兵器博物館長として知っていた事のみを話すと、ニガテヤネンはすぐに地球に戻っていったのです」
(それで、ピーマン医師は何も持ち帰れなかったのか・・・)
一同が、ピーマン医師のダイイング・メッセージの謎が解けたという表情をしている。
「その話には続きがあります」
「うむ、申してみよ」
今アイシャの口から、我々の疑問に対する最大の答えが返って来る。
全員が緊張のあまり、生唾を飲み込んだ。
ゴクリ
「隠し部屋には、一枚の羊皮紙が箱の上に置かれていました」
「ふむふむ、それで如何いたした!」
「いつの日かナイアが復活するであろう。我、ここにPSコンバーターを封印する」
そこで私は以前アインシュタイン博士に教えていただいた、ディスペル魔法を唱えたのです。
では再現ビデオスタート!!
カマルザード・アマルザード・キ・スク
ビヨンセ・デブデ・ヤセナアカン
糞便と化せ!!
冥界の愚者 !
七つも鍵を落とし !
開けるな 便所の扉 !
ディスペル! 解けよ封印!!
歯ぁぁぁっっっっっっ!!
と唱えたので御座います。
「おお、儂のオリジナル魔法を唱えたのじゃな!」
アインシュタイン博士がドヤ顔をしている。
「話が逸れて失礼しました。その封印魔法が、PSコンバーターの賞味、消費期限を保ったのだと思います」
1000個のPSコンバーターを眺めながら、大佐、アインシュタイン博士とニコラ・テスラ博士が同じ考えに到達した。
「「「これを地球防御シールドNEW-BENZA1000基に取り付ければ、富永ナイアを滅ぼせるかも知れない!」」」
3人が興奮しているが、女性組は冷静だ。
「霊子に霊子をぶつけても、無意味なのでは?」
「皆さんが何を議論しているのか分かりませんが、PSコンバーターは、ナイアの霊子を崩壊、消滅できるのです。原理は知りませんが、そのように作られいる筈です」
「むう、大佐、その効果は早急に検証した方が良い、我が帝国の技術とSHADOの技術を合わせて、PSコンバーターの解析をするのじゃ、今すぐにな!」
正論であった。アイシャの齎した過去の言い伝えと、PSコンバーターが対ナイア、地球救済の切り札になるのだ。大佐と陛下を残して、みな解析作業に移った。
*******
「のうアイシャ、余にはまだ分からぬ事がある」
「はい、何で御座いましょう?」
「帝国の記録には無かったが、レティキュリ・β星は、その後どうなった? 今の星系マップには、そんな惑星は存在しておらん」
「私もそれが疑問だ。そして、PSコンバーターは誰が、兵器博物館の地下に封印したんだ?」
「私はレティキュリβ星の子孫、言い伝えですが、α星を破壊消滅した後、母星では内乱が勃発して、全面核戦争になったそうです。
そして最後にはα星を滅ぼしたのと同じ、惑星そのものを破壊し尽くす爆弾"エンド・オブ・プラネット"という凶悪な爆弾を使ったと伝わっております」
「な、なんだと! 帝国が誇るミサイルのルーツが、そなたの星で完成していたのか!」
「私の先祖は、その凶悪な爆弾が使われる前に脱出して、暗黒帝国星系を彷徨い、帝国勢力圏内の辺境惑星に辿り着いたそうです」
「脱出組の中には、反戦派の科学技術者たちも大勢いて、その後帝国と交流をしたと」
「なるほど、その科学者がミサイルの技術情報を話した・・・反戦派の科学者が、そんな情報を帝国に漏らすとは思えんが、1万年近く前の話だ。真相はわかる筈がない」
過去永年に渡る暗黒帝国星系と惑星連邦の争いが、ナイア消滅のため一丸となっている事、帝国星系辺境の惑星に辿り着いたレティキュリ・β星の子孫、アイシャ。
そのアイシャが兵器博物館の館長であった事、そしてSHADOのピーマン医師とネンゴロになった事により、封印が解かれるきっかけになったPSコンバーター1000個・・・
「「1万年前から、全てが繋がっておる!!」
大佐と陛下は驚愕した。
「むむっ、陛下これは何か我々の後ろに、途轍もない存在がいるのでは?」
「余もそれしか考えられん! 1万年をかけた計画、どれ程の存在なのだろうか!」
はぁ、はぁ
拳を握りしめ、二人は興奮のあまり大きく息をしていた。
「あの、陛下と大佐、余談ですが」
「うむ、この際じゃ、なんなりと申してみるがよい」
「はぁ、実は私、ニガテヤネンなど全く眼中になくて、タイプじゃなかったんです。
それが何かに逆らう事が出来ずに、今日までズルズルと・・・指輪はしていますが、まだ結婚している訳ではないのです」
「でも、霊安室ではカプセルを抱きしめて、泣かれていましたが」
「TPOに合わせた演技です」
ガ~ン!
「ですから私はまだ独身の清らかな身、このような偽りの指輪をはずして、そちらの殿方と・・ポッ♡」
『アイシャさん、そんな目で俺を見ないでください!』
今日一番の驚愕の真実!
『カプセルの中のピーマン医師の魂が号泣していると思う』
『哀れよのう、ピーマン! 貴様はこのまま眠っておるが良い』
『これ以上増えないでぇぇ!』
陛下、大佐、俺は、心の中でピーマン医師の冥福を祈るのだった。
*ふん、伏兵がいたか。余計なものを持ち込んで来たな。あの女を今殺しても何も変わらん。
今は人類を混乱に落としいれるデマを流す事にしよう。
それにしても、アレを封印したのは・・まさかな。
今日もご来店の読者様、ありがとうございます。
2か月ほどかかりましたが、今週末までに完結する予定です。
最後まで楽しんで書きたいと思っていますので、完結までお付き合いしてもらえると嬉しいです。
では。




