EP60 死を賭けたピーマン医師のメッセージ 真実に目覚めよ *
2023年12月5日 午前10時
マリアの事情聴取が始まった。
尋問するのは、大佐とスタイニー少佐。
知らせを聞いて、W芽衣もいる。
「マリア!いったいお前は何を知っている!」
あの日のピーマン医師の行動を知らされなかった大佐とスタイニー少佐は苛立っていた。
「あの時、ピーマン医師は私にこう言いました」
「マリア、俺はこれから銀河宇宙古代兵器博物館へ行く。シャトルの航路設定をプログラムしてくれ。
今SHADOで身軽なのは俺だけだ。頼むマリア」
「私は彼には何か思う事があったと感じました」
「なぜピーマン医師は銀河古代兵器博物館へ行こうとしたのだ? その理由を聞いていないのか?」
「聞いていません。ですがピーマン医師が握っていたメモにその答えが」
「あー、ダイイング・メッセージだろ、ありゃ。秘孔を突かれたとも知らず、死ぬ間際に書いたんだろうな」
脳筋軍人であるスタイニー少佐には、あのメッセージが意味するものが分からなかった。
「ふむ、ではあのメッセージの意味は何んだ? マリアにはわかるか?」
「霊子破壊ビーム プラズマ核電池と書きたかったと思われます。いえ間違いなくピーマン医師が伝えたかった事は、それだと確信します」
「命がけで手に入れた情報という事か」
「唯一、富永ナイアを倒せる方法・・それを探しに古代兵器博物館へ単身で向かったと・・・」
「それは、SHADO本部内戦力として役に立たない医師である自分しか、自由に動けないと思ったからでしょう」
ザッ、ザッ、ザッ
そこへ暗黒帝国国王陛下が入って来た。
ピーマン医師の訃報を聞いたからだ。
「楽にしておれ。話は聞いておった。古代宇宙兵器博物館へは、余も帝国高校の修学旅行で行った事があった。そこの館長がめっぽう若くて美人でな・・・ゴホゴホ。大佐、ここは空気が乾燥しておるぞ。
そこには1万年前の、どこに所属していたか不明の戦艦があったのは、若い美人館長の説明で覚えておる。
しかし戦艦の一部だけでな、ボロボロの鉄くずだった。まさかそれをわざわざ見に行ったのか?」
「ピーマン医師が、その戦艦に何か心当たりがあったからだと推測します」
「ふん、AIの化身が随分と人間らしくなったものよ」
なぜ医師であるピーマンに、古代宇宙戦艦の知識があったのか謎は残る。
「うむ、余の方からも情報部を総動員して戦艦の情報を集めてみよう」
「ゴーヤ・ウマカバイはおるか!」
SHADO本部内で、技術者として派遣されていたゴーヤ・ウマカバイが進み出て片膝をつく。
「はっ、ゴーヤ・ウマカバイここに控えておりまする!」
「うむ、そちに命令する。直ちに1万年前の戦艦の情報を集めよ! どんな情報でも良い! 時間がない、すぐにかかれ!」
「御意!!」
「戦艦に秘密があるのなら、SHADOも惑星連邦に連絡して、どんな些細な情報でも送るように命令を出す。マリア、W芽衣、お前たちもIQ250の頭脳で霊子破壊ビームとは何か、答えを見つけ出して欲しい」
「「分かりました大佐!!」」
国王陛下と大佐の決断により尋問は終わり、各自持ち場に戻っていく。
******
*あちゃー、霊子ビーム砲のこと、バレちゃいそうだね。
*構わんさ、バレたところでアレは1万年前の過去の遺物、霊子の解析が出来たところで、ビーム砲を作る時間はないよ。
*12月24日のクリスマス・イブに地球を滅ぼすなんて、粋なプレゼントね。
*しかし、もう誰も殺さないと言っておきながら、セコイ真似したな。俺はそうゆう騙し打ち、嫌いじゃねぇがよ。
*誤解するな、霊子ビーム砲の存在に気づいたピーマン医師に、邪魔されないよう念を押しただけだ。
*それで秘孔 心霊台を押したってか! 洒落が効いてるな。
それにシャトルに乗った時点で押しとけば、3日後はまだ地球には帰れないからな、上出来だよ。
*念を押しただけだ。
*メモはどうする?
*大丈夫だ。奴等には時間がない。
部屋に戻ると、マリアはピーマン医師の通信記録を調べた。
「11月29日 午前9時30分、恒星間緊急通信だわ。あの緊急会議中に通信したのね。相手は・・・」
「アイシャ・ローゼンバーグ? 」
マリアがデーターバンクを高速検索する。
「アイシャ・ローゼンバーグ、銀河宇宙古代兵器博物館前館長! 43歳独身」
『通信記録の内容は、ピーマン医師は古代博物館に、何か古い兵器の記録がないか打診したんだわ』
『それで何らかのヒントが博物館にある事が分かった・・・それですぐさま古代博物館に飛んだって事ね! これで少し謎が解けたわ』
そして最後の通信記録を見てマリアは赤面した。
『あら、まぁ、そういう事だったのね。ピーマン医師は堅物かと思っていたけど』
通信記録の最後には、こう書かれていた。
" 愛している"
「超遠距離恋愛かぁ、なんて可哀そうな人。結ばれる前に亡くなっちゃうなんて」
マリアの枯れた筈の涙がまた流れた。
マリアはチューブの中のパンツ王女を思う。
「うふ、パンツ王女さまは、何かと前世はご主人様と夫婦だとか言ってステラを怒らせていたわね。
前世かぁ、私はどうだったんだろう? 私ってAIの化身だからね、前世なんてないわよね」
その時、マリアの全身が震え、頭の中に宇宙空間に漂う自分の姿が映った。
「ここはどこ?私は誰? 私は誰かを探している?
次は意志と想念だ。何故、人間は戦い殺し合うの? どうして? 何故? 何の為に?何故愛し合わないの?」
自分の意志なのか、他人の意志なのか、わからない様々な思念が入り込んで来る。
はっと息を吐き出した時、マリアは床に倒れていた。
「今のは何? あれは私の前世の記憶なの? 分からない」
ただ、あの空間に漂っている時、人間には無限の可能性があるのに、戦争ばかりを繰り返し、大切なものを奪い、失う人間の愚かさに怒りを覚えていた。
「もしかしたら、もしかしたらパンツ王女さまが言っていた寝言は、本当は正しかったの?? 私たちはご主人様とみんな、前世で繋がっていた!?」
「これは只の仮説、妄想よ。AIの化身である私がなんて事を考えているの!」
割り切れない夢だと、雑念を払い霊子の解析を始めるマリアだった。
******
*マリアってさぁ、昔の僕たちに似てるね。
*止めろ! 創造神の糞神なんか思い出したくもねぇ!
*そうよ、アレは愛のない無慈悲の塊。私は見捨てられたのよ。
*マリアって娘もああやって悲しみ、苦しんでくれりゃ、とても美味くなるからいいじゃねぇか。
*本当にあんたって野暮ね。




