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SF 正妻の座争奪戦争   作者: やまじじい
61/70

EP59 武士の情けと黒幕の正体 *

挿絵(By みてみん)


 2023年11月28日早朝


 護衛兵士100名を引き連れて、暗黒帝国国王 ノーブル・〇ミエールⅣ世、一歩遅れて高貴な女性が厳かに歩いて来る。


『あれが帝国王妃、ゴージャス・〇ミエールなのか、美しい』

カロヤン大佐もSHADOクルーたちも、心の中で冷や汗をかく。


「暗黒帝国星系国王陛下様と王妃様、お初にお目にかかります。SHADO本部司令官 カロヤン大佐です」


 相手は連邦と永年の犬猿の仲だった暗黒帝国、地球滅亡の危機まで30日を切っているこの時、帝国と争っている場合ではない。それに多大な援助をしてもらっている為、低姿勢で迎える。


「大義である。カロヤン大佐、それで娘はどこにおる? 案内せい」

「あなた、王女は本当に・・・?!」

「狼狽えるな、王妃!それを確かめに来たのだ」


大佐は国王と王妃を霊安室に案内する。

100名の精鋭護衛兵士が陛下と王妃の前後を固めてついていく。

 ザッ、ザッ、ザッ


 やがて霊安室の前に到着して、静かに扉を開けた。

そこには特殊保存されたチューブが10柱、チューブの上には、墓標のように名前が書かれた銀色のカプセルが立っている。


 国王と王妃がパンツ王女のチューブの前に進み出る。


  ・・・・・・・・。

  ・・・・・・・・。


「うぐっ、パンツ、こんな姿になっていようとは!」

「あぁぁ王女・・・私のパンツ・・・返して! 私のパンツを!」


 誰かが王妃のパンツを盗んだのかと、一部のクルーがざわつく中、俺は国王と王妃の前に静かに進み出て、そして片膝をついた。


「国王陛下様、王妃様、全ては俺の責任です。パンツ王女様と、そればかりか護衛のシュミーズ主任を守れませんでした」


 俺は俺に出来る最高最大の謝罪をする。

土下座をし、頭を床に擦りつけ、国王から足蹴にされる事を覚悟して何度も何度も謝罪した。


 国王陛下がベルトのホルダーに手をかけた。


 その場で射殺されても文句は言えない。俺は殺されてもいいと思っている。


「お前が地球の猿、王女が愛したという猿か!、よくその(ツラ)を見せよ!」

 ここで直に頭を上げるのはルール違反なのだ。二回目の言葉があってから顔を上げる。それが暗黒帝国流。


「どうぞ、この場で俺を殺してください!」


「くっ! とにかく面を上げよ!」


 俺は、涙と鼻水でぐしょぐしょになった顔を上げた。


怒りの表情ながらも、国王陛下の目からは雫が流れていた。


「お前がパンツが愛した猿か、殺しはしない今はな!

余はパンツと約束した。地球人類を救済する為に手を貸すと。ここでお前を殺してしまえば、王女との約束を裏切る事になる。

Xデーの翌日、お前がまだ生きていたなら、その時にはお前を殺す! 暫くその命、余が預かっておこう」


 過呼吸のような音が聞こえる。


「はぁ! ♡あなたが、あなたが♡」

腰が砕けるのはこの場ではまずいと、必死で堪える王妃。


だが、次の瞬間には顔つきが変わっていた。


「パンツ王女が愛した男、そう、あなたなのね。それであなたは将来どうするつもりだったの? パンツ王女とは只のいいお友達だったなんて言わないでしょうね!」


 腰が砕けそうだった割には、ドスが効いていた。

この言葉には、同席していたマリア、天乃芽衣もイラっとした。


「失礼かと思いますが王妃様、亡くなった、いえ、暗殺されたのはパンツ王女様だけではありません。私たちの心中もご配慮願えればと存じます」


「何! 暗殺じゃと! カロヤン、それは本当なのか!」

死因については聞かされていなかったらしい。


霊安室に同席していたピーマン医師が答える。


「それは本当で御座います、陛下。温泉に仕込まれた即効性の毒により、一度に8人が殺害されました」


「なななんと、何故パンツ王女が・・・パンツが殺されねばならんのだ!」


「分かりませんが、ここにいるタケシの周りにいる女性だけが殺害されているとしか言えません」


「うむむむ、我が帝国が地球の救済に手を貸したからか? それが原因だったとしても、今更パンツとの約束は破らん! 大佐、タケシとやら、我が帝国はXデーまで地球に居座る。お前たちが生き残るか、死に絶えるのか見届けてやろう! それまでは我々は旗艦キング・ノジャロゥリで待ってやる。

 今のお前たちは、余の世話をする時間もなかろうて。Xデーまでは武士の情けとして対応しよう。

そして我が娘パンツ王女の身柄は、お前たち仲間のもとに居た方が、パンツも嬉しかろ。ここに残しておく。大佐、タケシとやら、頼むぞ」


 なんとか暗黒帝国陛下も事態を考慮して、怒りを鎮めてくれたようだ。大佐もクルーも安堵の表情を見せた・・・


 国王陛下があるカプセルに書かれた名前を見た。

「ミューか・・確かパンツ王女の専属メイドだったな・・・しかしアレは」

「あなた、どうかしましたの?」


「いや、なんでもない」


******


*「ちい、もう少しでドンパチの殺し合いが始まるかと思ったが、回避されたか」


 みんながその言葉に驚き、回りを見回すと、

クルーや護衛兵士の間を割って、一人の男が出て来た。


「いやぁ~、残念、残念、君たちって意外にしぶといねぇ、ゴキブリですか」


「「「富永高夫!!!」」」


「と、富永さん、今、あなたが言った事って、何なんです? 正気とは思えない発言でしたよ!」


「正気も正気、それにね、僕は富永高夫じゃない。改めて自己紹介するよ、僕の名前はナイア。ずっとSHADO本部で君たちを見ていた」


「ちょっと待ってください。じゃあ10人を殺害した犯人って、まさか!」


「ふふふ、ビンゴ! 僕だよ! 僕が殺したんだ。10人ともね。10人とも苦しまないよう、これでも情けをかけてやったんだ。感謝してもらいたいぐらいだよ」


 その場にいた全員が激怒した。

「トォォォ ミィィィィ ナァァァァ ガァァァァ!」


俺は富永に殴りかかろうと拳を振り上げた。

その時、振り上げた俺の拳の横を一条の光線が走る。

ビス!

帝国国王陛下が既にレーザーガンのトリガーを引いていた。


「貴様か! 貴様がパンツとシュミーズを!」

続けてレーザーガンが、富永の額を打ち抜いた。

ビス、ビス


しかしレーザーはあっさりと富永の額をすり抜け、平然とした富永が相変わらずニヤニヤして立っている。


「残念だったねぇ、僕はそんな玩具じゃ死なないんだというより、死ねないんだよ」


「くっ、何故彼女たちを殺した!!」


「それは当然の疑問かな。僕はねぇ、苦しんで死んだ人間の魂が大好物なんだ。

特にタケシを愛した彼女たちは最高のご馳走になるんだよ。

残念ながら、今はカプセルの中だけど、それは人類が滅亡した後にゆっくりと熟成させてから食べさせてもらうよ。

彼女たちのタケシに対する愛は魂の香辛料、格別なんだよ」


「余は聞いているぞ! 宇宙には恐怖して死んだ人間の魂を喜んで食べる存在がいると」


暗黒帝国国王に代々伝わる伝記、それを国王陛下が思い出した。

「あなた、それは御伽噺ではなかったの?」


「否、真実を知れば帝国国民が恐怖する。帝国で代々国王から引き継いで来た秘密事項だ。それが余の代で顕現していたとは!」


「流石は暗黒帝国星系の王、そんな古い伝承が記録されていましたか。

これから僕は地球が滅んだ後、魂をたくさん集めなければなりません。その準備もありますので、もうあなたたちの前に姿を現す事はありません。

 あ、忘れてました。もう誰も殺しませんから。地球が滅亡するのにわざわざ殺す必要がありませんのでね。それでは皆さん、ご機嫌よう」


 その言葉を最後に、富永ナイアは消えた。

「トォォォォ ミィィィ ナァァァァ ガァァァァ!」


俺は今まで出した事がないほどの呪詛を吐いた。

「分かる! 分かるぞタケシ! そちのその無念さがな!」


「あい分かった、これより暗黒帝国星系は全面的に地球を支援する。余もあいつが憎い! 共にあいつ、ナイアを殺すぞ! 力を貸してやるぞタケシ!」


「あ、あなた、私は・・・」

「そうであった。王妃よ、お前は先に帝国に帰っておれ。心配するな。我が娘パンツの仇は余がとってやる! 安心して帰るがよい」


 なんだかホンワカしたムードの陛下と王妃であった。


 しかし、最後は殺される運命かと思っていたが、暗黒帝国と共に戦う事になったのは不幸中の幸いだった。

それに反してSHADO本部、カロヤン大佐の心中は複雑だった。


『富永ナイア、これもお前の想定の内なのか?』


******

 11月29日 午前9時


 SHADO本部内で、緊急対策会議が招集された。


 カロヤン大佐、G・スタイニー少佐、帝国国王陛下、マリア、天乃芽衣、アインシュタイン博士とニコラ・テスラ博士、ピーマン医師、そして戦力として呼ばれた関野芽衣、俺を含めて10人だ。


 この10人がSHADO本部内の最高戦力なのだ。


「黒幕の正体が富永ナイアと判明した。奴はペテルギウス大災禍と何らかの関係があるだろう。そこで、ここで知り得る情報と対策を出し合ってもらいたい」


大佐が開口一番、会議招集の目的を話す。


「ペテルギウス大災禍に対応できるシールドは完成しておるのじゃな?」

「はい陛下、既にシールド2000基が地球衛星軌道上で待機しています。」


「ナイアはそれを承知で、地球が滅びると言っているのか?」

「シールドを突破する何らかの手段があるとしたら、もう地球人類に打つ手はありません」


「そうか、参考になるかは分からんが、帝国の王位継承者に代々伝わる極秘の情報を話しておこう」

「ナイアに関係した事ですか?」


 ナイアに関する情報は誰も知らない。固唾を飲んで陛下の言葉に耳を傾ける。


「今から1万年前の記録ではある。どこの惑星かは分からぬが、ナイアが接近した惑星の戦艦が、ナイアを攻撃、消滅させたという記録が残っている」


「なんと、ナイアは殺せるのですか!」

「ふむ、詳しくは分からん。使用した武器が"霊子"を利用したものらしいとだけ記録されていたのみじゃ」


 霊子・・・魂の根源は霊子だとは分かっているが、それをどのように破壊消滅させるのかまでは、今の科学力では分からない。


「富永ナイアに対抗する方法は、今のところ皆無か」

大佐も少佐も沈痛な表情をしている。


 少し現状を整理しようと

「少佐、各国主要国際空港に配備した、地球脱出艇の具合はどうなっている?」


「それが、今だに何の動きもないんですよ。誰が乗るかという搭乗者名簿はあるようですが、みんな毎日礼拝堂で祈りを捧げた後は、家で過ごしていますね」


「ふーむ、まだ時間があるからな、一週間前には動きが出て来るだろう」

 地球では、女神ウィルマ教を信仰する信者が、礼拝堂を建築して毎日のように祈りを捧げる事が恒例となっていた。


 『ウィルマはとても頑張ってくれた。そのお陰で地球は荒れる事なく毎日を過ごせている。

ウィルマが手料理だと言って、ガマガエルの活き造りを出して来たのには笑ったが・・。

 ああウィルマ、発想がユニークで美しすぎるドジっ子・・お前がいるから賑やかだった。もう二度とお前の笑顔が・・見れないんだ・・・』


「あー会議中悪いのですが、私のような保健室医師では、何のお役に立てません、所要があるので退席してもよろしいか?」


「ふむ、私たちもこれと言って案もない。構わないから退席してくれ」


「ありがとう御座います大佐、では失礼」


 ピーマン医師は一礼して部屋を出る時、マリアを呼んだ。

「マリア、XXXXXXXXXだから頼む」


 何やらマリアに耳打ちしてから消えていき、それからピーマン医師の姿を見かける事はなかった。


 2023年12月4日


ピーマン医師を乗せた恒星間シャトルが、地球衛星軌道上で発見される。

「大変です! ピーマン医師がシャトル内で死亡しています!」

大佐、スタイニー少佐、マリア、天乃芽衣が保健室に急行する。


 運び込まれたピーマン医師を、マリアがすぐさま全身高精度スキャンを開始した。

同時に芽衣がソウル・バキューム装置を起動、ピーマン医師の魂を捕獲する。


「ピーマン医師は何故死んだのだ? 答えろマリア!」

カロヤン大佐もスタイニー少佐も激怒していた。


「秘孔 心霊台を突かれています。死後1日以上経過していますから、恐らくシャトルに乗った時には既に秘孔を・・」


芽衣「死後の経過時間が短いお陰で、船内に魂が残留できたのね」


「マリア、お前はあの会議の時、退出するピーマン医師と何か話をしていたな、お前は何を知っている! 」


「うん?!」


見ると、ピーマン医師の手に紙きれが握られていた。

大佐が閉じた指を開き、殴り書きのメモを読む。


「れいし はかい ーむ ぷらず ま かく でんち」

文字はそこで途切れていた。


「ダイイング・メッセージか!」

スタイニー少佐が呟いた。

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