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SF 正妻の座争奪戦争   作者: やまじじい
6/70

EP6 UFOキャビン・アテンダントUCAの秘密

彼女たちは俺に好意以上の感情を抱いていた。その辺の理由を妖怪課長が話してくれたのだが。

「関野君、いやこれからはエージェント001と呼ぼう。君は日本で生活している時、モテたかね?」

 『くそ、一番痛いところを突いてきやがる。思ってねーわ!』

「課長も知ってるでしょ、こんな団子鼻の30過ぎの変人がモテたら事件ですよ」

「深く理解しておるな、結構、結構。しかし何度も言うが、私は課長ではないぞ」

持っていた日の丸付きの扇子を振り下ろし、膝にパシンと打ち鳴らす。


『今度は、俺が便所スリッパでシバいたろか!』

いろいろな小道具で俺を翻弄する課長に、イライラしてきた。

「せっかく色っぽい話をしてやろうと思おておったに、残念なことよのう」

機嫌が悪くなり、扇子を畳んで席を立とうとした課長を無理やり引き留める。


「なんじゃ、聞きたいのなら素直に聞けばよいものを。よかろう教えよう、お主に隠された驚愕の真実を!」

公開前映画のPR文句みたいなセリフを吐く課長。経験上そういう映画は大抵つまらない。

一通りの理由を聞いた俺の心は複雑。忘れよう。


 一週間のリハビリが終わって、いよいよ「エージェント001とは何か」という講義がはじまる。大学で本題に入る前の概論のようなものだ。


 講師アインシュタイン博士


 翌日から、地球の状況と俺のこれからの任務について軽くレクチャーを受ける。

講義室には、俺とお世話係のステラとメーベが両脇に座り、課長が教壇に立った。

 

「まず講師を紹介する。博士お願いします」

課長がアインシュタイン博士の入場を宣言。同時にドラゴンHの序曲がなり響く。


♪パーパパパッパッパパー♪ オーケストラバージョンだ。

 燕尾服の男性が、これまたウェディングドレスを着た女性に手を引かれて入室。(後で聞いたら、どうやら介護クルーのようだ。

ウエディングドレスは博士の趣味で、正式な制服になったという)片手に竹のステッキを持ち、足をガクガクさせながら入ってきた。

 『この人物は・・・新婦の父か?』

「アインシュタイン博士ですよ。」とステラが耳打ちする。


 歴史教科書に出て来る"相対性理論"のアルベルト・アインシュタインに瓜二つ。

「紹介しよう、ご存知アインシュタイン博士じゃ」

俺が白目をむくと同時に、魂が口から出ていこうとする。それを慌ててメーベが抑え込む。クローン体に魂がまだ馴染んでいないのが原因か。

 

彼女たちが傍らに控えていたのは、予測不能な事態に備えていたからだ。しかし、魂って掴めるんかい?


アルベルト・アインシュタイン、20世紀最高の理論物理学者。彼は1955年に亡くなっている。

 「よくやったメーベよ」

上官らしい課長が褒める。


「第一段階クリア!」

 

課長が高らかに叫ぶ。

『なんの第一段階や、俺の魂流出を防いだことか? あん?』


「よし、これからが本題じゃ。第二段階に移行する。博士、今までの経緯を説明してやってください」

「うむ」

 アインシュタイン博士が椅子に座り、口を開く。

「エージェント001 関野くん、驚いたじゃろ。わしは65年前に死んでおる。じゃが、君と同じように連邦の科学力、クローン技術によって生き長らえておる身じゃ。クローン体なのは君と同じ故、理解はできるだろう?」


 確かに俺もクローン、でも何故にそんなにご老体なのかが疑問だ。

その質問に課長が答える。

「いい質問じゃ。わしらは若い頃から優れた知識と理論を持つ博士にずっと唾をつけていたのじゃ。ぺっぺっ

 じゃが博士の理論が一応の完成をみたのが73歳の時でな、わしらは、それが完成するのを待っていたんじゃ」


 「つまりこういうことか。75歳で死んだ魂を若い世代のクローンに移すと、肉体と魂の間で知識の拒否反応が出る、その場合、魂の記憶より肉体の年齢に引っ張られてしまうからか」


「理解が早くて助かる。お見込みのとおり」

「俺の場合は問題なかったのか?」

 ふと疑問に思ったことを口にする。

「001の場合は、死亡する二年前の健康なクローン。死亡時との誤差は殆どない。

 それに高校時代に拉致したのは、この日のためエージェント養成教育マシンで、必要な知識を事前にインプットするためじゃった。

それはBLACK BOXに封印してあってな、これから生きるに必要な能力だけを封印せず、001をアシストしていたのじゃよ」


「残り全ての封印を解除すれば、001に必要な知識がコンプリートする。

だから二年前のクローン体と今の魂の間に拒否反応は出ない。必要な知識が全て最初からクローン体に存在しているからNO PROBLEM 」

 チッチッと指揺らすな!


「心配するでない。封印を解けば、001の任務 何故エージェントなのかが速攻で理解できる仕様になっておる」


「いや待て、まだ分からん事がある。俺が病気で死んだのはどう説明する」

課長の顔に黒い縦線が浮かび上がったのを俺は見逃さなかった。

『女に引っ掻かれた古傷か?』


重い沈黙が続く。やがて

「うむ 001、君の死亡は我々の計画になかったのじゃ。極めて特殊なステルス癌。それがSTAGE3となると、我々でも君を助ける手段がなかった。もっと早く気づいておれば、打つ手はあったのじゃ」

 

「すると、俺が死ななかったらクローンにならなくても良かったのか?」

「そうだ」

虚空を見上げて目を閉じる課長、アインシュタイン博士もうなづいている。


「本当にお前の死は想定外。我々は大いに狼狽えたよ」

「クローンの研究が進んで、博士のクローンボディβ版より優秀なリリース版TypeAが完成したのが二年前。 

001をメンテナンスで拉致した折、クローン作成の条件をクリアするモデルがいなくてな、その条件をクリア出来た君で、クローン体を作成したんじよ。」

 

「万が一のことは考えていなかった。何しろ001の周りにはガーディアン役を複数配置していた故、いかようにも対処可能だと思いこんでしまった」

「テスト作成したクローンは研究室に保管し、ステラとメーベに管理を任せていたという寸法よ」


『どういう寸法だよ!』

アインシュタイン博士が補足する。

「テスト作成に001を選べたこと、あれは本当に偶然じゃった。我々はその偶然に助けられたんじゃよ」

 

俺は返す言葉がなく混乱していた。

俺のガーディアンが複数人いたのか、会社に?・・・

何故か俺のワークルームは、超合金NEW-Z製。


『NEW-Zが使われていることは、 保毛山課長は理由を知らないと言っていたが、それは嘘だったのか?』


 テレパシーが使える隣のステラとメーベがオロオロしている。俺の精神状態が普通ではないことを敏感に感じとったのだ。

 

 少し間を置いて博士が真相を語る。


「関野くん、わしもクローン体であることを教えられた時、最初は混乱したよ。今の君以上にな。わしのはβ版・・・せめてキャンディ・リリースCR版で・・バグが多すぎ・・・これでは・・ピチピチギャルと・・・パフパフ・・・でき」


『古い肉体のクローンなんだから、αだろうがβだろうが関係ないだろうに』

「すまん取り乱した、願望がロケットスタートしよった」

『どこぞの○仙人みたいだな』

白い髭にサングラス、アロハシャツを着たスケベ丸出しのエロシジイが、サムズアップしている姿が脳裏に浮かぶ。

 

「ストレートに言おう、我々がクローンとして蘇った理由は・・・」

ドラムロール!!


「地球人類を滅亡から救うためだ!!」

 ドャァ!!      フガァァァァ


 入れ歯を発射しやがった。器用だ。

緊張感ゼロの笑劇の告白に、また俺の魂が旅に出ようとする。

それを今度はステラが阻止。間髪いれずメーベが、頭部着弾寸前の入れ歯を、 破っ!! 手刀で叩き落とす。絶妙のコンビプレイだ。

 放心状態の俺を見て課長も、入れ歯を飛ばしてフガブカ言ってる博士も、続けるより、落ち着いてから封印を解除することが最善だという結論に達した。       

 短いようで、やはり短かかったが講義1日目が終わった。


 課長回想

 

 精神状態が不安定な場合、教育マシンを使うのはリスクが高いが、高校時代の関野は元々UFOや超常現象に興味があった。

 

 我々と対面しても柔軟で理解が早く、こちらの話を真剣に聞いてくれた。その上教育プログラムも喜んで受け入れてくれたのだ。

 自分がエージェント001であること、エージェント養成プログラムの知識は封印され、任務は解除するまで思い出せないという事情も含めてな。

 必要とされる時が来るまでは、普通の人間として暮らして来た001。混乱するのは想定の内なのだ。

 

 今は無理をするのは厳禁。計画が水泡と帰すのは、全力で避けなければならないのだ。

  

 何故なら彼は地球人類で唯一の適合者なのだから。


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