EP57 幕魔
今から1万年前。
広大な宇宙空間を放浪する旅人がいた。
*「お腹すいたよぉ~、何か食べようよぉ~」
*「すまない我慢してくれ、獲物が全くいないんだ。くそ、どこにいるんだ!」
ある動物の魂は、人間のそれに良く似ている。
しかし、滅多に見つからない為、宇宙空間を放浪していたのだ。
*「確かに限界よ。最後に食べたのは1年前だもの」
*「俺はこんな宇宙空間で、まだくたばりたくねぇな! 手近なとこで、あいつら食っちまおうぜ!」
*「丁度目の前に手頃な惑星があるじゃねぇか!」
*「ダメだ! そんな事をしたら、益々宇宙の嫌われ者になってしまう」
*「それはそうなんだけど、僕たちだって生存のために食べなきゃ、宇宙から消滅しちゃうんだよ。人間だって生きる為に動物を殺して食べてるんだよ、それは許される事?」
*「あの時、創造神様から言われた事、忘れたのか! 人間を殺めることは決して許さんと」
*「そんな身勝手な! じゃあどうやって生きていくのさ! こんな嫌われ者を創造しておいて、創造神様の糞神様は何が面白いと言うんだよ!」
*「創造神様はこう言われた。お前が宇宙で生きる理由を、お前自身が見つけてみよと・・」
*「ケッ、謎々なんて真っ平御免だぜ! 俺はただ腹を満たしたいだけだ! それが何故悪い!」
*「確かにそろそろ限界だ。創造神様はここ1万年、何も教えてくれないからな」
*「おい見ろ、あの惑星からうじゃうじゃ戦艦が出て来たぞ! 何隻いる?」
*「ざっと1000隻!」
*「こちらに向かって来る! 奴等攻撃態勢に入っていやがる!」
*「あれは霊子破壊ビーム砲! あれを食らったら永久に消滅してしまう!」
*「どうすんだよ!」
ギユォォォォォォォ!
ドシューン、ドシューン
*「奴等攻撃してきやがった! 回避出来ん!」
戦艦1000隻からの一斉射撃。逃げ場などなかった。
*きゃぁぁぁぁ!
*うわ~ん!
*糞ったれぇぇぇ!
内宇宙空間に閃光が煌めいた。
体がバラバラになって千切れていく。
意識が遠のく中で
*「創造神様、この1万年、あなたの言いつけ通りにして生きて来ました。しかし人間たちは・・・何故です? あなたは何を望んでいるのです?
どうせ何も答えてはくれないのですね・・・
*もし、この命が冥界に拒絶され、まだ宇宙空間に存在していたら、その時はあなたの言いつけに背きます。
もう意識が消えそうです。さようなら、創造神様。
******
あれからどの位の時間がたったのか分からない。
気が付くと人間たちが戦っていた。
片方は十字の先端が曲がったマークがついた、キュラキュラと音を立てる鉄の兵器が動いている。
時折、砲塔から炎を出して砲弾を発射した。
空を見ると五角形の星のマークを付けた、先端に何か回転体を付けて飛翔する戦闘機が機銃掃射している。
目の前の兵士が、銃弾に倒れた。
よろよろとその兵士に近づいて、湧き出てきた魂を吸う。
*美味しい! 少しずつ意識がはっきりとし、破壊されてバラバラになった筈の体が再生しようとしている。
*まだ足りない・・・
だが新鮮な死体がゴロゴロしていて、食料には困らない。
飢えた獣になっていた。
死体から出てくる魂を、吸って吸って吸いまくる。
5体、10体、100体・・・もう何体の魂を吸ったか覚えていなかった。
満腹を自覚した時、体は完全に再生していた。
意識がはっきりとしたお陰で、この戦場で戦っている軍隊が、ドイツ軍とアメリカ軍と呼ばれる軍隊である事が分かった。
形勢はドイツ軍が不利。撤退している。
傍らのドイツ軍兵士の死体に憑依転移して、ドイツ軍本部に潜り込んだ。
そこにはトゥーレ協会とブリル協会という秘密結社の幹部たちがいた。
敗北が近く、緊急打開対策会議の最中だった。
更に死亡した協会研究者の体に憑依、転移してその秘密結社に入り込む。
*形勢不利な方に味方しよう。それにはここには無い科学技術を教えて、秘密兵器を作らせ、相手国の兵士を殺しまくる・・・それが平等ではないか!
*教えてやる科学技術は、お前たちが持っていない反重力理論だ。うまくやれ。
1945年、連合軍により戦火が悪化して、それらの技術で新兵器を開発する前に、ドイツ帝国は敗北した。
*タイミングが悪かったな、しかし沢山美味い魂を食えた。
これからも地球? 地球と人間が呼ぶこの惑星の人間を殺しまくり、当分の間食料に困らないほどの魂をため込んでおこう。
もちろん、人間自身の手で殺し合わせるのだ。ふふっ、これは愉快だ!
*糞創造神は言っていたな。自分で生きる理由を見つけてみよと・・
これだよ、これが生きる理由だよ! はっはっはははは。
戦後、その埋もれた科学技術は、トゥーレ・タキヨネーターとシューマンレビレーターと呼ばれた。




