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SF 正妻の座争奪戦争   作者: やまじじい
58/70

EP56 口は災いのもと 愛の責任バトル *

俺とアビゲイル、マリアの初陣は満足な結果ではなかった。

地球人類に少なからず被害者が出てしまったのだ。

反省と改善点はたくさんある事が判明し、改めて飲み会を開催する事になった。

 俺は飲み会で、一人の人物に違和感を感じる事になる。

挿絵(By みてみん)


2021年5月9日 午後5時


 昨日は、アストラル・ブルー号のクルーたちも、俺たちSHADO本部クルーも疲れまくっていた為、翌日の夕方になって冥福を祈る会とペテルギウス対策会議を開く事になった。

 

 救世主として初陣だった俺とアビゲイルは、精神的疲労が凄かった。

帰還するなり俺とアビゲイルが、俺のベッドに倒れ込んでそのまま爆睡してしまったからだ。


 謎の酒ブラック・ホールから脱出したパンツ王女は、俺たちを見て激怒したが、マリアが事の全てを話すと、怒りの矛先を収めてくれた。


「むう、儂がブラック・ホールに飲まれていた時に、そんな大変な事になっていたとはな。すまん、肝心な時に役にたたなんだ! この通りじゃ!」


 人に頭を下げる事など決して無いパンツ王女が頭を下げた。ミューの死を嘆いて、一人酒に酔いつぶれた自分を恥じたのだ。


 午後5時

何故かまた皆が俺の部屋にいる。


 カロヤン大佐、G・スタイニー少佐、ステラ、メーベ、ホル・マリン、ウィルマ・ラミネート、パンツ王女、シュミーズ、天乃芽衣、ソフィア、今回俺と初陣したマリアとアビゲイル。

その他、酒を飲みたいだけのアインシュタイン博士、ニコラ・テスラ博士、ピーマン医師と、俺が飲み会に誘った富永元審判員の16人だ。


「まあまあ皆さま、昨日は大変なご活躍、さぞお疲れでしょう。ささやかですが、ウィルマが作った手料理を召し上がれ」


「おい、ウィルマって料理できたのか?」

「いや知らん。初耳だ」

「聞いた話では、ディープ・グラスをはずしてキッチンに立ってたって」


 嫌な予感しかしない。


「タケシ、酒は何があるんじゃ?」

飲んべえ3人組が早速酒を催促しだした。


「あっ、それなら芽衣が用意しました。飛騨の迷酒 竜巻旋風脚"と濁酒"昇天拳"です。竜巻旋風脚は、飲めば飲むほど体が回転し、昇天拳は文字通り昇天が可能という、とてもディンジャラスな一品ですわ」


「ふふっ、甘い! わが帝国のブラック・ホールを知らんと見える。ブラック・ホールこそ宇宙一の銘酒よのう!!」


芽衣とパンツ王女の酒自慢が始まった。

飲んべえ3人組は、それを「ふむふむ」とか、「なんと! 」とか、「そんな馬鹿な! 」などと興奮している。


もうあの3人は捨てて置こう。


 などと騒ぎ出しているところへ、ウィルマの手料理がしずしずと運ばれてきた。

その料理に、全員の目が点になった。


「これは料理なんでしょうか?」

皮も剥いていないジャガイモ、ニンジン、玉ねぎが運ばれてきた。

おまけに、ガマガエルが一匹、皿の上でゲロゲロ鳴いている。


「ウィルマよ、これをどうやって食せ(しょくせ)と?」

「あら嫌だ、こんなに美味くできましたのに、さぁ召し上がれ♡」


「ウィルマさん、ちょっとディープ・グラスでよ~く御覧なさいな」

早くもステラが爆発寸前だ。


「皆さんは料理の本質を理解していませんね。これはとても悲しい事です。

料理は素材の旨味を生かす事が最大のポイント! そして深みを増すために、この京都産七条ねぎを首に巻き、ねぎの香りを味わいながら、自然の恵みに噛り付く・・・・・・これぞ究極の料理と言えましょう」


 ゲロゲロ


 初参加のスタイニー少佐が笑う。

「おい大佐、SHADO本部では、変わったものを食うんだな。あの姉ちゃん、入って来た時はあまりの美人に驚いたものだが、あれは天然の生き物か?」


 大人しくしていた富永さんも

「あのガマガエルは生贄、いえ活き造りのつもりでしょうかね?」

 返す言葉がない大佐は唸るだけだ。

むぐうううぅぅ。


「ぶはは、そんな事はいいからまあ飲め! 芽衣、"竜巻旋風脚"を持って来てくれ!」

「はいな♡ 流石は大佐、よくわかていらっしゃる。少佐もこれを飲めば、イチコロですわ♡ ふふ」

 

 何がイチコロだよ! ウィルマと芽衣の馬鹿話に今は付き合っていられない。


 ギラ!!


 話を逸らしながら、本題に入ろうとする大佐の目が、地球人類救済計画本部太陽系支店支店長の目に変わった。

それを見て、スタイニー少佐の目の色も変わる。


「タケシ、マリア、アビゲイル、お前たちには色々聞かねばなるまい」


「それで太陽からのSUVの照射時間は?」


マリア「きっかり4分でした」

4分ジャスト?? ふむ。


「COMETのSUV反射シールドの持続時間は?」

アビゲイル「約3分でした」


「通信で聞いていたが、出力80%だったな。フル・パワーだったら3分以内にエネルギーが切れていた。少佐の機転でギリギリ助かったのは、その判断が良かったのかもしれん」


「褒めてくれるのは嬉しいが大佐よぉ、アストラル・ブルー号のシールドでさへ15分だぜ。これは見直すべき反省点じゃないのか?」


「今回は予測不能の緊急事態だった。2023年12月のペテルギウス大災禍にばかり気をとられていた事もあるし、まだ建造が始まったばかりのこの段階で、なんとか防げたは・・・・・・いや防げてはいないな。いずれにしても予想外の出来事に加えて、対処する時間が無かった」


 アビゲイル「COMETのシールド持続時間が短か過ぎるのと、外販がSUVに耐性効果のないホームセンターのトタン板、この2つを早急に改善、改良しなければなりません!」


「俺からも一つ。やはりBENZAのシールド持続時間が短いのと、テスト機とは言え、シールド展開が10km四方では、都市を守り切れません」


 酒と肴に舌鼓を打っていた飲兵衛3人組。

アインシュタイン博士が口を開く。


「今回の事で、日本とアジア諸国で多くの犠牲者が出ました。今の話から、BENZAのシールド展開能力を10倍から20倍を目標にしたい」


 次はニコラ・テスラ博士の番だ。


「当初シールド展開は、今の10kmから100kmにする計画でした。いずれにしてもエネルギー源となるプラズマ核電池の性能を上げなければなりません。その点は私とアインシュタイン博士が、責任を持って完成させますから」


 日本とアジアを中心に、多数の犠牲者が出てしまった。これがアメリカ大陸、ユーラシア大陸だったとしたら、もっと死者が出たに違いない。


「よし、博士たち、直ちにBENZAシールド強化改良作業に移ってくれ。アビゲイルはCOMETの改修強化を頼む」


「了解!!」


 状況を聞いていた富永さんが、

「BENZAシールドは全部で1000基ですか。 それぞれに新開発の超合金が使われるんですね?それはいつ頃完成するのです? 」


 昨日起きたばかりの初防衛戦なのに、この御仁は妙に聞きたがるな、とG・スタイニー少佐は思った。


「現段階では何とも言えん!」

大佐も少し機嫌が悪い。


「そうなんですかぁ」


 「おや?」

 俺は今の富永さんの言葉に違和感を感じた。

なんだか残念そうな言い方と、1000基と新開発の超合金・・・・・・富永さんは、そんな事は知らないはず。


富永元審判員は、岐山大学理工学部 大月教授の推薦でSHADOに配属されたと聞いている。

配属はアセンション計画実行部で、俺が昏睡状態の時、ディープ・グラスを補佐していた事もあった。


 アセンション計画は順調で、富永さんは今は殆どする事がなくなり、SHADO本部内で見かける事が少なくなった。帰省していたとは言っていたが、それにしても、いつもどこにいたんだろう? 彼は。


 富永さんは、もともと岐山大学からの助っ人という立場の自由人。

正妻のザ・ゲーム審判も無くなった今、この先大学に戻るのかな?


******


「よし、今回の初防衛戦で改善、改良しなければならない重要事項が分かった。

①防御シールドBENZAの能力向上

②プラズマ核電池の容量と性能の大幅な改善

③新開発した超合金を早急に外販に装備する事

 この3点に尽きる! 」


 ここにいる全員が、それぞれの持ち場で、最高、最大の成果を上げようと決意した。


「よーし、私もがんばるわよ~!」

SHADOの誇るIQ250の関野芽衣が吠えた。


マリア「ふふん、芽衣さん一度私の頭脳と勝負しない? 私のAIは世界中のスーパーコンピューターが束になっても勝てないのよ!」


芽衣「おやおや、AIなんてプログラムにバグがあったら役にたちませんわ。それにプログラムは人間が考えたもの、所詮あんたは只のプログラムの塊でしょ!」


「むきー! あんたのクローン転移には、私も手伝っているのよ!」


「分からないAIね、その転移プログラムだってアインシュタイン博士たちが考えたプログラムなのよ!」


「所詮、プログラムは人間に勝てないのよ! 」


「人間はAI無しで生きていけないでしょう!」


「ならあんた、電池なしで無人島で暮らせるかしら?」


「自家発電するわ。それに今の私はクローン・ボディ! 生身の人間と同じよ!」


 IQ250VS AIマリアとマリア


 おお始まった。今度は芽衣とマリアの頭脳合戦だ!

これはいい意味でSHADOの為、いや結果的に地球人類の為になるな。


 俺はここでとんでもない事を言ってしまった。


「マリア、芽衣、俺はお前たちの頭脳を頼りにしているからな。しっかり結果を出して欲しい。その時はお前たちが望む事なら、なんでも聞いてやるぞ!」


ふたりの瞳に紅蓮の炎が!


えっ? はっ! またやっちまった!


失言だった。俺はハッパをかけるつもりで言ったのだが、またやらかしてしまった。

一度口に出した言葉は、もう引っ込まない。


マリア「♡だんな様ぁぁぁ~、い、今のお言葉、しっかりと受け止めました! 」


芽衣「武士に二言はないと言います。責任はちゃんととって頂きますのでね! お忘れなく。うふん♡」


やっぱりだぁぁ! 俺の意志とは違う事、考えてるやんけ!


ウィルマ「お二人とも、今更なんですの? 私は料理で既に勝利しています! ご主人様、永遠に責任をとってくださいませ!」


パンツ王女「愚か者ども、争う事は無駄じゃ! 既にそのゴールデン・ボールは前世から儂のものと決まっておる! ご主人様と儂は前世から夫婦じゃからな!」


ステラ「またこの馬鹿が寝ぼけて! 王女さま、あんたは本物のブラック・ホールに頭を突っ込んで来なさい!」


メーベ「本当に皆さん、見苦しいわよ。ご主人様はメーベにぞっこんなのを知らないんですか?」


ホル「メーベさん! あなた、故郷のβカロテン星で、トコロテン屋でも開店してたら?」


アビゲイル「私は初陣でタケシさんと生死を潜り抜けた間柄。これは夫婦の契りを結んだのと同じです!」


シュミーズ「さきっぽ、さきっぽだけでも」


ソフィア『フフン、皆さんがどれだけ頑張ろうと結果は同じです。私の名言"勝負は始まる前には終わっている"ですから』




*なんですのこの茶番は?

*ふっ、いいではないか。あと少しで死ぬんだから。

*うん、このくらいのイチャイチャがあった方が楽しいよ。

*ケッ! もう待たずによぉ、今すぐさっさとやっちまおうぜ!



*まぁ待て、今やってしまったら奴らの計画が未完成のままだろ? これでは赤子の手をひねる位つまらん事になる。我々には時間があるんだ。奴らの計画が完成した時、今までの努力が無駄だったと魂に深く刻んでやった方が、とても美味くなるんだからな


*ケッ、しゃあない、そうするか

*そうしちゃおう!

*賛成、そうしましょ


 闇に潜む何者かが、こんな事を考えているとは、誰も分からない。

第3回冥福を祈る会は、彼女たちの責任バトルで終了した。


 その後、第三の暗殺事件が起きる事なく時は過ぎていった。

 いよいよ完結に近づいてきました。

ここまでお付き合いしてくださいました読者の方々に感謝します。


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