EP53 秘孔 心霊台 *
突然のリサの死。
様々な憶測を呼んだが、俺はみんなを信じている。
「さぁ、リサの冥福を祈って飲もう!!」
俺の狭い部屋に居残り組の彼女たちや、カロヤン大佐、アインシュタイン博士たちまでが酒やつまみを持参して集まった。
「リサ、生きていればこんな馬鹿騒ぎ、お前も楽しめたのにな・・・」
その裏で新たな黒幕の登場?
2021年5月6日
早期帰還のクルーに混じって、惑星連邦警察のPOLICEシャトルが到着した。
「おい、見ろよあれ、連邦警察のシャトルだぜ、何かあったのか?」
シャトルから警察官3人と、民間人3人が出て来た。
「あの男は見た事があるぞ、連邦警察の腕利き検視官、ナイス・スキャニーだよ」
「検視官!? じゃあ俺たちが帰省している間に事件が?」
検視官と民間人が、霊安室に入っていく。
「仏さんは?」
「うむ、こちらだ」
挨拶もなく、大佐が検視官と民間人3人を、遺体安置所の前まで案内する。
「「あぅ、あぅ、リサぁぁ!!」」
亡骸と対面した遺族3人が号泣する。
「こちらの3人は、リサのご親族だ。俺もヤマの事を聞きたいのでな、事件の経緯を話してくれないか」
「・・・ふむ、すると誰もいない密室で、リサが一人突然苦しんで死亡したと」
「そうだ。保健室医師である私の所見と、マリアの映像データーが一致しているからね、死因は急性心不全だと断定したよ」
「ふ~む、急性の心不全か・・・」
白手袋をして、ナイス検視官が遺体をじっくりと調べ出した。
「綺麗な仏さんだな、顔にも体にもシミやほくろも何もない。長年検視をしているが、これほど綺麗な仏さんは珍しい」
「私も保健室医師として調べたが、なんの痕跡もなく綺麗なものだ」
「ふむ、ちょっと失礼して、背中を見せて貰えないか」
遺体をひっくり返すのも躊躇われるが、相手は殺人事件を専門にしている検視官だ。
当時の事件を記録したマリアが手伝って背中を向けさせる。
背中の正中線を丹念に調べていると・・・
「ここに何かで突いたような僅かな痕跡がある」
「いや、私も背中は調べたが、何の異常も発見できなかったが」
肉眼や透視スキャンでは見逃すほどの痕。
「鋭利なものではないな。女性の人差し指が触れたような、全く目立たないものだ。肌が綺麗なお陰で見つける事が出来た。そうでなかったら俺の目でも見逃すほどだ」
「それが死亡の原因だと言うのですか?」
今までの検視経験から、これと似た事件を想い出そうと、煙草を取り出し火をつけるナイス検視官。
「仏さんの前で不謹慎だな。すまん。だが俺はこの仕事で何千件も不可解な遺体を見て来た。毒、刃物、窒息、出血の痕跡がなく殺人が出来るとしたら、・・・・」
「秘孔の可能性がある!」
秘孔? とはいったい??
「ふむ、この位置は秘孔 心霊台か!」
検視官の指摘に、AIマリアの膨大なデーターバンクが補足説明を導き出した。
「秘孔心霊台、人体の108ある秘孔の内の一つ。背中の正中線の中心にあって、ここを突かれた人間は3日後に死亡します。針、灸、あんまでもこの秘孔は使わない人間の急所です」
「説明はいらんな」
「その通りだ。そしてそれは昔から拳法で使われて来た。暗殺拳としてな」
あ 暗殺拳??
「3日後に死亡するなら、当日のアリバイがあれば完全犯罪が可能となる。なにしろ死亡推定時刻に、遠い場所にいる事が証明されればいいのだからな」
カロヤン大佐、ピーマン医師、彼女たちはあの光景を思い出した。
"南斗性拳"!!
あれは嫉妬に狂ったジョセフィーヌが、意中の男性クルーに放った愛の暴拳。
「じゃあ、ジョセフィーヌが犯人なの? いったい何の為にリサを」
「まぁ待て、そのジョセフィーヌが犯人でなくても、やりようによっては、心霊台を突く事は可能だ」
「例えばSHADO大混浴場に置いてあるアンマ椅子だ。リサが風呂上りにタオル一枚でアンマ椅子に座る。それを見計らって遠隔操作で瞬間的に突起物を繰り出せば可能になる。問題となるのは、それには神業のような正確さが必要でな、スーパーコンピューター制御なら可能なレベルだ」
その言葉に視線がマリアに移った。
「なに、なんなの、みんな私を疑っているの? やめてよね、何で私がリサを」
「やめろ! マリアじゃない。それは俺が確信を持って言える。皆もテレパシーでマリアの心を覗いてみろ! 」
ジョセフィーヌが犯人かと疑惑を持てば、次はマリアを疑うその変わり身の早さに俺は苛立った。
「ご主人様ぁぁぁっ!! ヒック、ヒック」
マリアが一番頼りにしている俺が、マリアの無実を明言しているのだ。マリアにとってこんなに嬉しい事はない。
俺はマリアの腰を抱き寄せて、強く抱きしめてやる。
「よしよし、いい子だ。泣くんじゃない。お前たちは俺が惚れた女だ。決して俺の想いを裏切らない。信じているからな」
マリアは嬉し涙とご主人様の強烈なハグで、腰が砕けまくっている。オヨヨヨヨヨ。
「むぅ~、でもごめんねマリア、ちょっとだけ疑ってしまったわ。あなたがそんな事する訳ないもんね。本当にごめんね」
死因究明から犯人捜しとなった霊安室。
「えっ、マリアちゃんは殺されたんですか! 検視官!!」
親族3人は泣きながら、真相を問いただそうとする。
「あー、まだその可能性があるという話で、確定した訳ではありません。ご遺族の方々は、今日は着いたばかりでお疲れでしょう。今夜はSHADO本部で仮通夜をしてください」
カロヤン大佐の心遣いで、霊安室に隣接する部屋を用意させる。
「悪いが芽衣とホル、ご遺族を案内してやってくれ」
「「かしこまりました」」
「大佐、我々は明日、朝一番で連邦に帰る事にする。リサの遺体は連邦で再検視の為、ご遺族と共に運ぶ事にするが異論はないな」
「ああ、そうしてくれ」
「リサ、もう帰っちゃうんだね」
「生きていれば、私たちと家族同様の付き合いが出来たかもしれないのにね」
霊安室に遺族3人を残し、俺たちは部屋に戻っていく。
(まだ、遺族の嗚咽が聞こえて来るが、最後に水入らずで別れを惜しんで欲しい)
******
俺は日本人。
日本人なら、嬉しい時も悲しい時も酒を飲む。
「誰か俺に付き合わないか?。飲みたい奴は俺の部屋に集合だ! リサの冥福を祈って飲もう!」
「くぅぅぅ酒かぁ! 地球の酒、飲んでみてぇぇぇ」
「おいお前たち、露骨に残念そうな顔をするな! 俺たちは勤務中だぞ!」
ナイス検視官に一括された連邦警察官と遺族を残して、カロヤン大佐も博士たちも、ここにいる全員が俺の部屋へと向かう。
「じゃあ ミューは手作りクッキーとケーキを持っていくから、ちょっと待っててね♡」
「ふむ、そういう事なら俺は秘蔵のブランデーを出そう」
おお、大佐は太っ腹ですな!
酒好きの博士たちは大歓迎だ。
「芽衣からは銘酒"大酒"と深海で確保したダイオウイカよ」
芽衣、ダイオウイカは大味でクソ不味いぞ。
「ふん! 小癪な小娘どもめ、我が暗黒帝国からは度数90の"ブラック・ホール"じゃ。これに飲まれたら現世には戻れんぞ!」
「ホルはカラオケセットを持っていきます!」
「なんとホル、お主できるな! よし儂が帝国でCD発売した"私の旦那さま"を思う存分聞かせてやるのじゃ!」
うふ~ん、あっふ~ん♡
「こらー! どさくさに紛れてマリア! 貴様、いつまでご主人様にくっついておる! そこは儂のプレミアム指定席、離れるのじゃ!」
「いいえ、今の私は瞬間接着剤ですから!ピトっ! もう離れません!」
「それじゃぁ、芽衣も接着剤に。ピトっ! あらほんと、離れられないわ!」
「じゃぁホルも! ピトっ! 超強力で永遠に離れませんね!」
「止めんかー!!」
俺の部屋まで着くのに30分かかった。
リサ、お前が生きていれば、こんな馬鹿騒ぎに参加できたのにな。
俺はこんな馬鹿馬鹿しくて、楽しい生活が大好きさ。
金はあってもお前は経験した事ないだろうな。
そのバカ騒ぎは翌朝まで続き、全員が全力でストレスを解放したのだった。
******
*あらあら、ちよっと疑心暗鬼にしてあげようと思ったら、意外に立ち直りが早いわね。ある時は簡単に人を裏切るくせに、人間って少し厄介だわ*
おはようございます。
いつもご来店くださる読者様に感謝しています。
朝、初めて板タブとファイアー・アルパカという無料のペイントソフトでイラストを描きました。
人生初のデジタル画、へたっびーですが、私にとって記念作です。
今後、地道にうまくなるように精進していきます。
台風、心配ですね。




