EP50 SHADOゴールデン・ウイークの乱 *
コーヒー豆からドリップした、早朝のモーニングコーヒーは格別だ。
キューバ産葉巻の紫煙を美味そうに吐きながら、コーヒーを飲むカロヤン大佐の表情が和んでいた。
それというのも、3大地球防衛システムの建造が始まり、SHADO本部の仕事が一段落したからだ。
久々の平和な時間だ。
これは何か良い事がありそうだ。
2021年4月28日
パンツ王女の骨折りで、暗黒帝国星系から大量のアンチUV鉱石"アテント"が届いた。
SHADO本部内工場で、超合金New-Zにすぐ融合できるよう抽出し、大型トラックで連日、山崎重工業に輸送している。
これは産業ロボットを駆使して、AIマリアが作業していて、クルーがする事はない。
そして山崎重工業で、超合金スーパーアテントが完成次第、アンドロメダ300造船所と防御シールドBENZA工場に毎日のように輸送が開始された。
輸送先は日本と米国だが、中国は独自開発した金属スーパーパンダを使用する。
チタンと竹を融合した、画期的なハオブリッド合金である。竹の豊富な中国ならではの発想だ。
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ペテルギウス大災禍まで後2年と6か月。
超合金スーパーアテントの供給により、ギリギリのタイミングでアンドロメダ300など、地球防衛システム建造が可能となり、SHADOクルー達の表情は明るい。
ここは早朝のSHADO指令室。
「アンドロメダ300は、なんとか米国と日本、合わせて50隻が予定どおり建造できる目途がついた。皆、本当に今までご苦労だった。
カロヤン大佐から、ねぎらいの言葉が出るのは珍しい。
「日本はこれからゴールデン・ウイークが始まる。3種の地球防衛システムは建造中であり、暫くは進捗状況を管理すれば良い。そこでだ、我がSHADOクルー達にも5月9日まで休暇をやろう。今回は特別に惑星連邦までの恒星間シャトルバスを出すから、希望の者は家族や恋人に会いに行って来るがいい!」
艦内放送でカロヤン大佐のメッセージが流れると、突然の大佐の粋な計らいに艦内クルーは大喝采した。
「うひょー、うちの大佐やるじゃん!」
「顔はごついが、いいとこあるぜ。さすがは大将!」
艦内クルーの話題は、帰省後の話で持ち切りになった。
「俺、ムーニーちゃんに会いに帰る!」
(まだ、おむつが取れていないお子さまですね)
「俺は子供たちに会いに行く。エマールとアリエールは大きくなっただろうなぁ」
(さぞ、真っ白なお子さんでしょう)
「俺は墓参りとペットのイボガエルの恭子に」
(メスの恭子さん。彼女が出来ると人生が変わります)
「私は彼氏AとBとCに会いに行く」
(三股ですか、不幸な未来しか見えません)
「私は、故郷のSM堂のチンブランケーキを食べに行くわ。形がとっても卑猥で、イカ臭い独特の匂いなの」
(モンブランの新作ですか?)
人種は違っても家族や友人、恋人、愛人、ペットに会いたいのは地球人と何も変わらない。
翌日には、少数のクルーを残して、ほぼ全員のクルーが故郷に戻っていった。
残っているのは、大佐と俺、パンツ王女にシュミーズ、マリアとミュー、ホル・マリン、天乃芽衣、リサの9人。
SHADOの中枢はAIマリアが全てをコントロールしているので、無人であろうとアテント製造加工から全ての維持管理を任せる事ができる。
ステラ、メーベ、ウィルマ・ラミネートといった正妻候補者たちも、家族のもとへと帰省していった。
SHADO本部 巨大なG-ツェッペリン3000が、ゴーストタウンのように静まりかえって不気味だ。
電子機器の出すピコピコ音が、いつもより大きく反射して聞こえ、耳障りになる。
「さぁ、お前たちも好きにするがいい。SHADO本部は開店休業だ。後は俺とAIマリアが引き受ける。存分に羽を伸ばして来るがいい。外泊もOKだぞ」
ここでは新人のリサがシナシナと体をくねらせ
「私は、まだ地球に来たばかりですから、タケシさんに日本の観光案内をお願いしたいわ」
即座に反撃態勢に移る彼女たち
「ふん、何を寝ぼけた事を言っておるのじゃ! お前ごとき新参者が頭が高い!、観光ガイドでも読んでいるがいいのじゃ!」
「そうよ、ガバリサはもう用済みなの。あなたはとっとと連邦銀行本店に帰って、金儲けすればいいのよ!」
SHADO本部内では、リサの顔がいくら広くても無意味だ。魔法の使えない魔法使いのように、ここではコネは役にたたない。
「儂とシュミーズは、ついこの前帝国に帰省したばかりじゃ、ご主人様がおる所が、儂の居場所じゃからな! 儂ら、ふっ、夫婦じゃし」
また王女の妄想だ。ここは皆切れずにスルーする。
「ホルも連邦で行商をして帰ったばかりですから、ここでゆっくりします」
「マリアもミューも人化して、特に帰る所が無いから、ご主人様の介抱をしますわ。それはもうねっとりと舐めるように!」
「寝取るの間違いじゃないの? そんな事したら、全面戦争を起こすわよ!」
(天乃芽衣は本気だ。本気になればIQ250の頭脳で、証拠を残さず始末されるだろう。こういう時、落ち着いたソフィアがいると心が休まるんだけど、母親の北川かほりさんに会いに帰っちゃったしなぁ)
ソフィアとは会社で一番付き合いが長い。俺の性格や癖を良く知っているから、とても楽なんだよな。俺好みの朝のコーヒーの出し方なんて、わざと手に触れて出すあの仕草! もう可愛すぎるからな。
「キィィィ! ご主人様、ソフィアよりもマリアの方が、計算し尽くして最高のブレンドコーヒーを抽出しているのです! あんなしょんべん臭いハーフの小娘に、この味とかほりは出せません!」
「あっ、ミュー、今度あの小娘がご主人様に触れたら、強力除菌スプレーで消毒するわよ!」
という事は、マリアはソフィアより年増?? ミス銀河のクローンボディって何歳だったんだ?
「ミューの愛の籠った手作りケーキとお菓子だって、負けてはいませんから!」
そうそう、ミューはお菓子とケーキ作りがうまい。いつも練習してたな。
今日はテレパシー使用は無礼講らしい。大佐、それならそうと、早く教えてよ。
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パンツ王女は、ご主人様がこちらの考えている事を受信できる事を最近知った。
そこで脳内にあるイメージを浮かべる。
『くくくっ、約束したのじゃからな。これで本格中華してもらえる!!』
脳内でご主人様と、抱き合い熱くて濃厚な接吻をしている自分を想像した。
その瞬間、俺は背中にゾクゾクと悪寒が走ったが、はぁ~、そんな約束したな~と思い出し、パンツにサムズアップしてから、ヨロヨロと自室に戻った。
(帝国国王にアテント鉱石を大量に貰う約束を取り付けたのだ、パンツの功績があって初めてアンドロメダ300も、コメートもBENZAも建造できるからな。ここは約束通りに本格中華だなぁ)
パンツ王女にして見れば、これはOKのお誘いのサムズアップだ。パンツは自分の想いが通じていると確信し、喜び勇んで俺の後を追った。
ピン! ピン! ピン! PIN !
「おかしい! 皆見た? 今の王女」
「しっぽ振ってた」
「足が内股になってスキップしてたわ」
「脈拍上昇200」
AIマリアはクルーの健康状態もチェックしている。
「皆、後を追うわよ!」
ここにいる全員の女の感レーダーが最大警報を鳴らした。
真相を知っているのは、敗北宣言をしたシュミーズ主任のみ。
一人の残されたカロヤン大佐が、意味ありげに悠然と葉巻を吹かし、エログラスの下の眼帯に隠された目が光る。
(大佐って碧眼だったの? それに何故光る!)
「ふん、そろそろアレが始まるか? まあいいか、それがあいつ等の最大の楽しみだからな。ふっ、テレパシーか。せめて流血沙汰にはならんよう、うまくやってくれる事を祈るよ」
結局、正妻候補者たちの乱入により、パンツとの本格中華は阻止された。
「むぐぅ ぅぅぅ、こ れ は儂の 貢献 に対する正当な 愛の 印な のじゃ! 邪 魔 だて するな!」
棒読み? みたいに騒ぐ王女は俺の前で簀巻きにされて、どこかに連れていかれた。
「すまん、皆、これは俺も同意した事だから、俺が悪い。パンツ王女を解放してやってくれないか」
「「「いいえ!!、AIマリアの記録映像を見ると、パンツ王女が勝手に本物のチューを要求していましたから、ご主人様から言った事ではありません。よってご主人様は無罪、パンツ王女はギルティー有罪です!」」」
言い出したら収まらない正妻候補者たちだ。
俺は簀巻きにされ、生ゴミの紙きれを貼られたパンツが不憫でならない。
リヤカーに乗せられて、ゴミ捨て場に捨てられたのだろう。
(この借りは違う方法でちゃんと返すから、今は辛抱してくれよな)
俺は心の中でパンツ王女に手を合わせるのだった。合掌
南無阿弥陀仏
それにしても、パンツ王女は歌がうまいと聞いたけど、さっきの棒読みは?
作者も早朝に飲むコーヒーが大好きです。
こう目がシャキッとして、今日も一日頑張んべー! と力が沸いてきます。
読者さまの一日は、どのようにして始まるのでしょうか。
ブック・マークを頂きました。本当に本当に感謝です。ラストに向かって何だかヤレそうな気がしてきました!
では、今日も良い一日を。




