EP48 一連の違和感 *
俺が感じている違和感には、何か理由がある。
それはきっと、地球人類滅亡に関係したもの・・・。
確証がない俺は、正妻候補者たちに何か感じた事はないかと尋ねる事にした。
2021年4月3日
ホル・マリンとリサがSHADO本部に帰還していた。
二人ともカロヤン大佐の所へは行かず、俺の部屋に直行してきた。
特にリサは通信で結婚宣言をしてやらかしている。
正妻候補者たちが、リサをどう料理してやろうかと、今か今かと待ち構えているのは明白だからだ。
「ホル、ご苦労様。それとリサさん、いろいろな話は後で聞くから、まず大佐に経緯を報告して来て。挨拶は午後からという事で」
俺はAIマリアに
「あー、マリア、悪いんだけどさ これからリサが指令室に行くけど、皆に手荒なマネはしないように話しといてくれない? 頼むよ。もし何かしたらポイントを引くぞって脅しといて」
「♪ はぁいな~ ♡」
リサは組織としてあまりの正論なため、はやる気持ちを抑えようとしたが、その目は虚ろで既に腰が砕けてしまっていた。
「やっぱり、こうなるのね」
覚悟していたとは言え、体から力が抜けていくホルだった。
「あ、ホル、ちょっと待って」
とホルを呼び止め、「よく頑張ってくれたね、お疲れさん」
と言って、頭をワシャワシャしてやった。
ピーと蒸気機関車の汽笛が鳴ったかと思うと、ホルの腰が砕けそうになるのを、俺が受け止めてやった。
大分効果があったようで、まだ絶賛腰が砕けて役に立たないリサを、車椅子に乗せると、スキップしながら指令室に向かっていった。
それを無言で見ていた俺だが、以前から気になっている事がある。
二人には用があるから、午後からにして欲しいと念を押しておき、二人の女性を呼ぶ。
「お待たせぇぇ♡ ご主人様からご指名だなんて、うふっ失神しそう」
呼んだのは人化したマリアとミューだ。二人は最近、殆ど出番がないため、ご主人様と関わりもなく悶々としていたのだ。
俺は自室のベッドの端に腰かけると、二人を前に座らせた。椅子にだ。
『ベッドを前にして、二人の美女は・・この状況、好機!!』
すばーんと、俺は二人の頭を便所スリッパではたく。
「「♡」いったぁぁぁいん♡」」
「邪な考えでお前たちを呼んだんじゃないんだ」
「いえいえ、邪大歓迎ですわ。あれ、ご主人様いつからテレパシーを?使えるんですか?」
大事な話をしようとしている矢先に、エロい事を考えているマリアとミューに憤慨してしまった。
「ハモっている場合ではないんだ。お前たちにしか話せない重要な話だから!」
『はっ!二人だけに話す重大な事とは・・・!』
「「やはり、結婚ですね!! しかもマリアとミューのミス・コンビ!」」
『ああ、そうだったな。お前ら二人揃って、惑星連邦と銀河連邦のミス・クローンボディに転移していたんだっけ』
「違うんだ、二人に相談したいのは俺が感じている違和感についてだ」
二人は違和感と言われて、何の事なのか分からない。
???
「お前たち、一連の出来事に何か不審に思う事は無かったか?」
「「いったい何の事でしょうか?」」
違和感のいい例が、さっき俺にテレパシーがあるのでは?と思っただろう?」
「連邦の人間なら使える人は多いですが、地球人は使えないんですよね」
俺は、ゆっくりと二人に、俺が感じている違和感について話す事にした。
① まずペテルギウスの超新星爆発についてだ。
「ご主人様、それはもう500年前に爆発していて、超宇宙線が地球に飛来するのは、マリアの計算で確定しています。
「ふむ、それに呼応するように、何故我々の太陽までが異常なSUVを放射するようになるんだ?」
「それは宇宙の自然現象で、超新星爆発はどこの宇宙でも起きていますよ」
ミューは暗黒帝国星系でも、どこでもそれが起きている事実を話す。
うん、では次に俺の話をするよ。
② 俺は高校生の時にUFOにアブダクションされて、そこで救世主プログラムをインストールされた。この時、大佐たちは地球人類救済のために既に活動していたんだよね。
「そうですよ。ご主人様は地球に選ばれた唯一の資質を持っていたからこそ、救世主に選ばれたんですから」
マリアもミューも何が問題かが理解できない。
そうだね、俺もそんなふうに思っていたよ。でもね。
③ マリア、惑星連邦の女性も暗黒帝国星系の女性も、TOKIMEKI遺伝子を持っているよね。
「はい、マリアがTOKIMEKI遺伝子を分析して、ラバーズ・キラーワクチンを開発しました」
それでマリア、TOKIMEKI遺伝子を分析して何か気づいた事はない?
地球人になくて、何故連邦や帝国の女性にあるのか。
地球人のDNAと君たちとは、DNA配列は同じ筈だよね。
「DNAを分析すると、遺伝子操作されたような痕跡はあったけれど、私は突然変異だと分析しました」
答えが出ているじゃないか。俺が言いたいのはそれ、人為的にDNAが操作されていたんじゃないかってね。
「突然変異はどんなDNAにも起こりうる事です。ご主人様は何か考え過ぎているのでしょう」
それならいいんだが・・。じゃあ次。
④マリアが開発したラバーズ・キラーワクチンを、パンツ王女とディープ・グラスに一服盛った事は、ここにいる3人だけの秘密だよね。
二人を呼んだのは、それと関係がある。
「なぁ~んだ、期待しちゃったのに・・・ぶつぶつ」
話を逸らすんじゃない、二人とも。
もう一つあってね。お前たち、正確に言えば、俺に好意を持っている女性の思考が、俺に伝わるようになった。俺からは送信はできないが、遠くにいる正妻候補者たちの考えている事が分かるようになったんだよ。
それは例の輸血事件があって、俺が昏睡状態中から起きていたよ。
「じゃあ、マリアやミューが、ご主人様とナニしたいと考えたら、わかっちゃうの?」
もちろん丸っと全てまるわかりだ。
「♡きゃぁぁぁぁ、どうしよう。これからは悶々さへできないじゃない~♡」
便所スリッパ、もう一発いっとくか?
「シャキッ! それで、その心はいかに?」
つまりだ、俺の血がラバーズ・キラーワクチンを無効化したという事実だ。なぜ俺の血にそんな力があると思う?
「それは・・愛の力?」マリアでも答えが出ない。ミューなら尚更だ。
理解できずに汗をだらだら出している。
俺はこう思うんだ。ラバーズ・キラーワクチンでTOKIMEKI遺伝子を無効化されると困るのではないかと。
「困るって、相手が人間みたいな言い方ね」
分からない。分からないが、ペテルギウスの超新星爆発から、地球人類の滅亡、それに俺の能力やお前たちのTOKIMEKI遺伝子・・俺はこれら全てに繋がりがあるのではと思っている。
「「ふ~ん」」
「分かったわ、ご主人様がそうまで違和感を感じているのなら、きっと何かがあるのよ。これからミューと二人で、その辺を探ってみるから」
頼む。
俺はそう言って二人を返そうとして、お礼にほっぺにチューをしてやったら、二人とも失神してしまった。
「気をつけないといかんな、またやらかした」
30分後には、アヘアヘアヘと間寛平になった二人が、揃って夢遊病者のように帰っていった。
だが、二人にも言えないもう一つの違和感、それが頭から離れない。
「まさかな、そんな事はあり得ないだろう。何しろアレは」
そこまでは流石に考え過ぎだと、その思考を切り捨てた。
午後からリサの話を聞くまでもなく、リサの想いは分かっている。それと悲しみに暮れるホル・マリンも。
ホルは連邦でとても良くやってくれた。俺はとても感動して、心の閻魔帳に50ポイント記録している。しかしだポイントが何になるって言うんだ。
地球全人類全てを救えないように、俺だって増え続ける正妻候補者たちから一人選ぶなんて、到底できない。
全員が健気で、一途に一生懸命に俺を好いてくれている。
それがTOKIMEKI遺伝子のせいだとしても、俺は全員が可愛くて、愛おしい存在になってしまった。
本当は俺は苦しかった。
これは何者かの策略としか思えない。そんなに俺を苦しめるのが楽しいのか! と、虚空に向かって叫ぶ。
*********
「ふふ、その通りだよ。タ ケ シくん」
昨日は暑かったです。
作者の裏の田んぼは、稲刈りが済んで、ああこれから秋になるんだなと、少し涼しい気分にしてくれます。
さてさて、作者の初ラノベも終わりが近づいてきました。
読んでくださる読者様に感謝しつつ、頑張りたいと思います。




