EP36 ミューとマリアの極秘共同作業 *
2021年2月5日(金) 午後1時
ディープ・グラスと、今回はチリ領太平洋にあるイースター島へ布教活動に出かけた。
島民の熱狂と興奮は言葉に表せない程で、すぐに女神ウィルマ教が、島民公認の宗教に成り代わる。
島民の総意で、貴重な文化遺産であるモアイ像横に、花崗岩を切り出して、新たに女神ウィルマ様のご神体が制作されるという快挙だ。
意気揚々と岐路につく途中、
「うん? 今日は仕事帰り恒例の、いつものフンスカ攻撃がない!」
これは、アレの効果が出ているのかと、じっくりとウィルマ・ラミネートを観察することにした。
UFOブリル・オーディーンの中で、俺をチラチラ不思議そうに見てはいるが、首をコテン傾げながら、コーディング済のお気に入りの甘いキャンディーを食べている。
AIマリアの"ラバーズ・キラー"が効果を発揮しているようだ。
あのワクチンは、強制的にTOKIMEKI遺伝子を書き換えてしまう優れものだ。
今のディープ・グラスを見れば分かる。彼女は俺を魅力ある男として見れなくなっているのだ。
「よし、ワクチンの効果は大成功だ」
そのままUFO内では何も起こらず、俺は無事SHADO本部に帰還することが出来た。
関野武が自分の部屋に帰ると、ミューの姿はない。
これ幸いとAIマリアが話し掛けてきた。
「モニターしてたけどさぁ、"ラバーズ・キラー"ちゃんと効果が出てるみたいね、ウフ♡」
これで正妻候補者一人を蹴落として、ホクホクのマリアだった。
「ああ、俺のことを不思議そうに見てはいたが、あれはワクチンの効果だろうな。ありがとよ、マリアちゃん」
っつ!
なんと今日は、ちゃん付けだ。機嫌が良かった俺が、ふざけてそう呼んでしまった。
AIマリアにとって、ご主人様にこんなにも喜ばれ、かつ自分にも嬉しい結果を出す"ラバーズ・キラー"は、一粒で二度おいしいキャラメルのようだと思った。それ以上だ。
その後、ディープ・グラスと布教活動に出かけても、特に何かが起きることはなかった。
関野武は、「もうこれで大丈夫」
と胸を撫でおろすのだった。そして残るは6人と一匹。
しかしミューは、どう転んでも猫だ。正妻候補にはなり得ない。実質6人だなと、思っている。
********
AIマリアは次なるターゲットを、暗黒帝国パンツ王女に合わせた。
だが、マリアには、クローン・ボディを手に入れるという最重要命題がある。
そこで、同じクローン・ボディに転移する目的を持つ、ミューを誑し込む作戦に出た。
突然SHADOのAIが、ミューに話かけて来たので、最初は驚いていたがすぐに状況を理解したミュー。
そして作戦とは、こうだ。
まず、ミューが闇サイトでクローン・ボディ、ミス惑星連邦 リンサン・ヘドロコデインをポチったように、ミューにもう一体最高のクローン・ボディをポチらせる。
最高のクローン・ボディは、マリアが宇宙Netを隅々まで検索してチョイスする。
その為の交換条件が、ミューの莫大な借金を帳消しにすることであった。
AIマリアにとって、惑星連邦太陽系支店の通帳改竄など、朝飯前なのだから。
この条件にミューは喜んで賛同した。
「いい、ミュー。あなたのクローン・ボディへ転移作業は、私がやるから心配はいらないわ。あんなβ版アインシュタイン博士に任せるより正確、迅速、丁寧で、1年間のアフターサービス付きなんだから」
*教訓から、どういうアフターサービスなのかは、良く聞いたり読んだりしておいた方が良い*
AIマリアは、001関野を復活させる魂の置き換え作業の一部始終を見ていた。
そして、あんな効率の悪い復活方法なんて、時代遅れだと思い、改良版の転移方法を開発していた。
「問題はあなたが死なないと、魂の置き換えはできないし、魂のコピーでは、猫のミューと、クローン・ボディの二体になってしまうのよ。
いい例が、お白洲のクローン関野芽衣。本体芽衣とクローン芽衣の二体になったでしょ。
それでね、あなたを殺す訳にはいかないから、猫のミューには、仮死状態になってもらって、ラップを掛けて保存するの。
その間に魂をコピーして転移させるわ。それでどうかしら?」
ミューにとっても、魂のコピー方式では、本体である自分は猫のままだ。それよりもコピーであろうと、意識は自分と同じであるクローン・ミューを選択した。複雑な心境ではあったが、AIマリアに承諾したのだった。
契約は成された。
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ミューの問題は解決したが、マリアはAIである。
もともとAIには魂が存在しない。そこでマリアは必死で演算シュミレーションを重ね、ついに転移可能な方法を編み出した。
コアだ。パチンコ玉より小さい極小コアを作り、それに自分の全てをコピペして、ポチった宇宙最高のクローン・ボティに埋め込むというものだ。
ボディを内部からリモートコントロールするような方法だが、考えてみれば魂だって、同じ理屈なのだ。
コアは、SHADOのAIと同じ性能を持たせなくてはならない。これを作ることは、本来なら不可能。
だがマリアの女の執念が実を結んだのだ。
ミューを取り込む計画は、ミューがクローン・ボティをポチった時からだ。そして、名付けた極小ハイパーコア"孔明"に光明を見出した。
ここまで来れば作業は早い。
翌日、マリアのラボでミューの転移作業が密かに行われた。
「ミュー、あなたはこれから生まれ変わるの。心の準備はいい?」
いよいよ、人化してご主人様に思う存分甘えられると思うと、歓喜のあまり涙ぐんで「YES」と返事をした。
既にリンサン・ヘドロコデインはミューの隣に横たわってスタンバイOK。
「了解! では行くわよー、転移システム始動! 」
複雑な六芒星が幾つも出現し、ミューの意識を刈り取った。
更にアインシュタイン博士の暗黒魔法術式より高度な詠唱が始まった。
マリアのオリジナル・スペルだ。
「天よ!!! ! 地よ!!!! 糞界の混沌より禁断のソウルを呼び覚ませ !!!パーラン・ノーラン・フォービドゥー・ブルマール・ネイサン・ヴァイタル・アーヤシイ・イダーイー・キレージ・スクナオール・アイドール48・カーモンン・ン・ケヤキザーカ・イヤンバカン・ソコハ ダメダメオージ サーン!
クリエイト・ソウル!!!!!転移!!
眩い光がミューを包んだかと思うと、その光が隣のクローン・ボティ、リンサン・ヘドロコデインに吸い込まれる。
「ミッションCompleate!」
マリアの転移術式が完了した。
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暫くして、クローンミューの目が開く。
「私・・・」
「気が付いたか、ミュー」
まだ意識が定かではないミューが、隣を見ると一匹の猫が仮死状態で眠っている。
「マリア、?」
「大丈夫、術式は完璧に終わって、魂がクローン・ボティに転移しているわ」
「成功したのよ」
「そう・・」
ゆっくりと起き上がり、準備された鏡を恐る恐る見る。
「っっつ!!」
余りの衝撃と嬉しさで、琥珀色の美しい瞳から大粒の雫が流れた。
「嘘、これが私、私なのね。私の新しい体・・」
*猫に変身させられ、魂の抜けたミューの本体は、暗黒帝国に冷凍保存されている*
「ありがとう、マリア。次は私がマリアの転移を手伝うから」
体調が軽くなったのは、午後7時過ぎ。まだ歩き方がぎこちないが、ご主人様の部屋へと向かう。
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「ただいまぁ♡ご主人様ぁ」
ドアを開けて、いつも通り元気よく。
「えーと、どなた様で?」
見覚えがない女性がフラフラしながら入って来た。
ディープ・グラスは女神様と言われる程美人だが、この女性も凄い。
ボッッキュンボンは当たり前、美しさはディープ・グラスより上かと、生唾を飲み込みながら観察した。
「いやーん、そんなに見つめないでぇご主人様ぁ、私ですよ、ワ・タ・シ♡」
話し方はミューに似ている。
「もしかして、もしかしてミューなのか?」
「まぁちゃんと分かるなんて、やっぱりご主人様と私の愛の16年の絆ね」
顔面蒼白となる俺。
やっと一人、正妻候補者が減ったと思ったら、なんと猫のミューが人化して復活。
8人から7人になって、一人減っているはずなのだが、実質は増量だ。
うううと頭を抱える俺だった。
ミューから、ニューボディの由来を聞くと
「リンサン・ヘドロコデイン・・ヒドロコデイン・・・頭痛薬じゃねえか!」
痛烈なカウンター・ブロー! 今の俺に必要なのは正しく頭痛薬であった。
その日の内からクローンミューは、いつも通りご主人様の部屋で同居する。
流石にこれはAIマリアが面白くない。
「今は喜んでいなさい。私がニュー・ボティに転移した暁には、ふふふ、あなたはどうなっているか・・今のうちに甘えておきなさい。それが私の武士の情けよ」
気持ちを切り替え、次なるターゲット、パンツ王女の追い出しに取りかかるマリアだった。
だが・・・ご主人様の部屋を出入りする謎の女。あんな美女が艦内を俳諧すれば、クルーの噂にならない訳がない。
電光石火でステラ、メーベ、ホル、パンツ、関野芽衣、ソフィアの耳に入った。
「まずい、計画の前倒しをしなければ!」
マリアの計画が加速する。
ますます正妻争いが激化?




