EP35 SHADO赤ちょうちん "キャッシュカードに残はない" *
SHADO赤ちょうちん 酒処 "キャッシュカードに残はない"
変わったネーミングの一杯飲み屋だ。
仕事、病気、不倫、ギャンブル、失恋など、多くの不満と失望を抱えたサラリーマンのたまり場。
長年ここで、金を使い果たし落ちぶれていく姿を目にして来た大将が、皮肉と警鐘を込めて、ネーミングしたものだ。
そして屋台のリヤカーの脇には、ベニヤ板で拵えた粗末なカウンターに一人、酒を煽っている少女がいる。
側に置いてある一升瓶の銘柄は、清酒"だんな様"
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清酒だんな様
特に女性の失恋者向けに醸造された迷酒だ。酔えば酔うほどに、失恋のショックが増大して、更に泣ける一品として人気がある。
これの逆バージョン、男性用が"どぶろく恵美子"。
ラベルは失恋した彼女の名前に、大将が書き換えてくれるサービス付きで、狭い屋台の隅には、色々な名前が書かれたボルトが並んでいる。
やすこ、ひろみ、かなえ、あやこ、パー子・・などなど
ラベルを見る度に泣けると評判になった、大将の店のベストセラーだ。
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「ご主人様の儂のポイント・・・15点 うぐうぐ。すごろく勝負はレッドカードの一発退場、 同じ一発でも天国と地獄。 ううう」
うわぁぁぁぁん!!
暗黒帝国星系王女パンツの落ちぶれよう、あれが我が侭の権化と言われたパンツ王女かと目を疑う。
あの時、ご主人様の閻魔帳をパンツに漏らしたミューは、責任を感じて赤ちょうちんにやって来たのだ。
「パンツ王女、もうその位にしたらどうです?」
パンツは破産の心配はないが、それでもミューは元メイド。毎日酒に明け暮れるパンツの体が心配になっていた。
「うぃー、いいのじゃミュー。儂なんかもう、ご主人様に愛されてなんかいないのじゃから。くっ、 これが、これが飲まずにいられよか」
ミューは理解できる。パンツ王女は今や恋のライバルだが、想いを寄せる女心は同じなのだから。
本当なら一人脱落したことを喜ぶ所なのに、何故か心が痛んだ。
「私はもうすぐ、ミス惑星連邦のクローン・ボディに転移できる。そんな私を見たら、パンツ王女はどう思うのだろう」
どんな言葉が返ってくるかは明白だ。
「この裏切者!」であろう。
しんみりとした感情と罪悪感に負けて、
「おやじさん、私にも"だんな様"を。熱燗で」
「あいよ!」
猫が熱燗を飲めるのかという,世知がない世間を知り尽くしたおやじさんの目が優しくも、悲しくもあった。
「王女様、またポイントを稼げば逆転のチャンスがあるかも知れませんよ」
慰めになっていないと思う。それでも何か声を掛けずにはいられない。
「ふん、逆転? そんなもの・・ありはしないのじゃ」
ミューが突然閃いた事を口にしてみた。
「例えばですよ、暗黒帝国から地球救済のために大船団が来て、地球人を助ける事になったら、それはパンツ王女の大きな功績になりますよね」
「ご主人様が惚れ直す可能性だって」
その一言でパンツにつま先から頭部に向かって衝撃が走った。
ワナワナと体が震え、目に生気が戻ってきた。
「儂には、儂にはまだチャンスがあるかも知れん!」
ヤバイ!パンツを元気にしてしまった。と後悔したミュー。もう遅い!
こうなると、いつも無茶苦茶な我が侭ぶりを発揮するからだ。
長年パンツのメイドをして来たミューには分かる。
「嵐が来るわ」と。
この状況に、AIマリアの監視情報システムがいち早く反応した。
「暗黒帝国からの大船団か、その可能性は十分あるわね。それを利用することも計算に入れなければ」
この時点から局面が360度動き出した。
地球の運命を握っているのが、暗黒帝国星系だとしたら、これは大変な事になる。
マリアのAIには、SHADOのプロジェクトを200%アシストしながら、邪魔な正妻候補者たち7人と一匹を、開発した"ラバーズ・キラー"で無力化、更に自分をクローン・ボディで人化して、ご主人様の愛を勝ち取るというフローチャートが出来上がっていた。
地球を滅亡から救った後、AIマリアの脳裏に、南海の孤島で戯れるご主人様とマリアが浮かぶ。
「あーん、ご主人様ぁぁ♡」
嬉しそうに砂浜を駆けるマリア。
「待てよー、マリアー、あはあはは」
スケベそうに涎を出して追いかけるご主人様。
綺麗な夕暮れ時、白いビーチを、恋人どうしが追いかけっこをする。そして恋愛ドラマ定番の、ワザと足をもつれさせて、二人が転がりながら抱き合う光景を。
やがて、見つめ合う瞳と瞳が、満天の星を宿したかのようにキラキラ煌めく。
そして、どちらかともなく近づく顔と顔・・・。
ゴクリ
プシュー、マリアAIがオーバーヒート寸前だ。
「そ、その後がクライマックスなのよ!」
「これよ! マリアは、この瞬間を今まで夢見て生きてきたの!」
AIなのに鼻息が荒くなってきた。
「掴んで見せるわ。この未来を! 私の幸せを! 正妻候補者たちにも、暗黒帝国にも私の邪魔はさせない!」
「見せてやるわ、AIマリアの本気を!」
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そろそろディープ・グラスに"ラバーズ・キラー"を仕込んで24時間が経過している。
「ディープ・グラスことウィルマ・ラミネートは、正妻候補者から脱落するのか、余談を許さない展開が君を待っている!」
演壇をバンバン叩いて、講談師が最後を締めくくった。
赤ちょうちんの屋台を書いてみました。
Windowsのペイントでさへ、、四苦八苦しているやまじじいです。
ペンタブの安いのを買ったんですが、使いこなせていません。




