EP34 救われる命と見捨てられる命を誰が決めるのか、それが問題だ
2021年2月上旬 SHADO本部
ペテルギウス超新星爆発と、我が太陽が共振するかのように引き起こされる宇宙大災禍。
来るXデーを再計算するため、10日前からSHADO本部AI、関野芽衣W頭脳、日本国スーパーコンピューター富岳に同じデーターを入力し、計算結果を待っていた。
この再計算は、同時に惑星連邦本店AIも行っている。
AIマリアには、重要なデーター計算なので、処理を妨害するなと俺が言い聞かせてある。
カタカタカタ ベー ペッ
SHADO本部AIの計算結果が、プリントアウトして吐き出されてきた。 「Compleate」
「大佐、出ました!」
同時に関野芽衣クローンが飛び込んでく来る。
「うむ、富岳の結果はまだか? それを待って照合しよう」
2時間後、富岳からの計算結果が送られてきた。
タイトル X-Day 再シュミレーション結果
超強力宇宙線及びスーパーUV地球到達日
2023.12.24 1056 Days Later !
SHADO本部が待っていた答えがついに出た。
3つの計算結果が、同じ日付をはじき出している。
SHADOは、3年前に再計算したデーターを元に、各プロジェクトを進めてきたが、今回の結果で再度SHADO本部のカウント・ダウン計が修正された。
「我々はこのXデーの日付を元に、プロジェクトを進行させる。本店の計算も同じ結果だろう」
遅れて惑星連邦本店AIの計算結果が、宇宙速達ジャンプメールで送られてきた。
「うーむ、連邦の計算でも、やはりXデーは同じ結果だった」
再計算により、少しは宇宙線の直撃が逸れるのではないかと期待していたが、結果は非常であった。
「大佐Xデーは確実です。しかも最大パワーの宇宙線と、SUVが地球に到達します」
得意の暗算とそろばんで計算結果を出した、IQ250のクローン関野芽衣が断言した。
「最悪の事態になったな」
クルー全員が、淡い希望を失い、落胆した表情に変わる。
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2021年2月現在のプロジェクト進捗状況
①偽女神で救済作戦 女神ウィルマ教全世界布教率20% 信者10億人。
②アセンション波放出テスラタワー設計終了
③地球防御シールドBENZA プロトタイプ制作開始
④地球脱出艇建造計画 設計は進んでいるが、仮称超合金インフィニティ開発が遅れている。
⑤COMETプロトタイプ完成。
*プロトタイプは、超合金New-Zが暫定的に採用されている。
仮称超合金インフィニティはBENZAにも、プロトタイプが完成している、小型コントロール司令船COMETにも使う予定の合金であり、開発と製造が急務である。
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そして予てより懸案事項だった救済人選計画会議が再度開かれた。
「これを先延ばしにばかりしておれん。ここで具体的にどうするのが最善か、意見を出してくれ」
意見とは、救う10万人を選択する基準だ。
これは、誰もが唸るばかりで、意見がなかなか出ない。
尤もらしいのは、大国も小国の区別なく平等にXX人ずつ選ぶという"ノアの箱舟"案。
各国の政府関係者やプロジェクトに協力した人たちを選ぶ案
( 宇宙船やシールド建造に貢献した人たちを含む)
大金を寄付した人たち案
どれだけ考えようが、誰かを見捨てることに違いはない。
現在SHADOに協力してくれている各国代表と、早急にサミット会議を持つことになるが、結果は同じであろう。
「最初に米国SLUMP大統領に、まず打診してみよう」
SLUMP・・会議場に重い空気が流れた。
彼は米国第一主義者であり、自国の利益にならなければ豹変する、自由主義大国の独裁者。
強硬な意見しか出ない未来が浮かぶ。
それならいっそ、全員が地球で運命を共にする一か八か案もあった。
生き残れれば、建造した宇宙艇を宇宙開発に有効利用できるが、逆なら玉砕、99%の人類は滅亡する。
脱出艇があるのに、それを使わないという選択肢はゼロだろう。。
但し、救いの可能性がない訳ではない。
大佐が打診した、惑星連邦代議員からの大宇宙船団の来訪があるかもしれない。
しかし、解答は現時点ではまだ来ておらず、聞くところによると、連邦代議員たちも、この件ですったもんだしているという。
「この件はやはり、各国代表者会議の議題として、近いうちにサミットを開催しよう。SLUMP大統領が何と言うだろうか」
我が国のどなたかのように、丸投げに近い締め括りで、またもや先送りするのであった。
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閑話休題
小型司令船" COMETドック。
責任者のアビゲイルが、搭載AIの調整に頭を抱えていた。
「このAI、もう少し性能が上がれば、防御シールドBENZAのコントロールがしやすくなるのに」
と愚痴を言っていると、
"ワタシハは最新のAIデス。機械に文句言ッテモセイリテキニムリ。コレデモ一生懸命デス"
「反抗してる。そういうとこだけは人間臭いんだよね。
誰だろう、こんなAIを設計したのは。こんな馬鹿げた仕様に、リソース使わないで欲しいわ、ホントに」
この搭載AI、実はAIマリアだ。
アビゲイルの前では、猫を被って並みのAIの振りをしている。
それは何故か。
『私のご主人様を乗せるCOMETのAIが、あんなチンケなAIじゃ、任務遂行どころか、ご主人様が死んでしまうじゃないの。ここはマリアがサポートするんだから』
マリアは以前からSHADOのAI機能全てを掌握し、あらゆる電子機器に侵入し操ることができた。
万能なAIマリアに一つだけ不可能な事があった。
「だけど、ご主人様には触れられない・・・」
マリアの最大の願望は、ご主人様と、いつでもどこでも、一緒に居られる体が欲しいことだった。
どこかのSFドラマで、戦艦のAIと離れて、自由に動ける化身となり、人間型の美しい女性型AIの話があった。
マリアは、そのドラマがとても気に入っていて、何度も何度もリプレイして見ていたのだ。
「私がサポートする以上、COMETは完璧に任務を遂行できる!そして、
COMETのことは、マリアが全て整備もコントロールもするから、アビは田舎にすっこんで、畑でも耕していてね!」
AIマリアが、人間アビゲイルに一方的な宣戦布告をした瞬間だった。
「私の体・・・・」
AIマリアには、ある作戦があった。それは、クローン芽衣、ミューが闇通販でポチった、ミス惑星連邦クローンを真似て、自らがクローン体に転移することである。
AIに魂があれば可能だが、AIは所詮電子回路。望みは無い筈なのだ。
その命題を突破すべく、AIマリアはかつて無いほどの演算を開始する。SHADOのプロジェクトの邪魔をするなと、ご主人様からきつく言われているので、演算は深夜に限っている。
そして、ある答えに辿り着いた。
魂の無いAIが、どうやってクローン体に転移するのか。
やまじじいも悩んでいます。
乞うご期待。




