EP33 TOKIMEKI遺伝子消滅ワクチン"ラバーズ・キラー"
「うーむむ、もう俺の体が持たん! 限界だ。特にあいつディープ・グラスのフンスカ攻撃には参っている。このままではデインジャラスな関係になりかねん!」
実はフンスカ攻撃は、ディープ・グラスのマーキング行動である。
自分の匂いをご主人様に染み込ませ、正妻を主張しているのだった。
当の関野武は、何とか正妻候補者の数を減らせないものかと思案する毎日。
SHADO本部AIに個別アクセスして、打開策は無いかと聞いてみる。
「あー、マリア、TOKIMEKI遺伝子ってさあ、消滅できないの?」
AIは個別に使用する場合、特別に愛称を付けることが許されている。
関野武がマリアと呼ぶAIは、実体は無いが非常に優秀である。
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SHADO AI
地球人類の、シリコンベースの電子頭脳ではなく、生体ニューロンを具現化した精巧な疑似頭脳である。機械というより、機械と人間の頭脳のハーフとも言えるAIだ。
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「また、それですかぁ、タケシも好きねぇ」
手元のスピーカーから答えるマリア。
マリアはなんとも砕けたAIである。実際のところ、関野武がふざけて初期設定を好みに変更しただけだったのだが、マリアが勝手に自分をグレードアップしているようだ。
『どうなってるんだマリアは? 変なAIだな』
「タケシ」
AIは関野をタケシと呼ぶ。そんな設定にはしてない。
「TOKIMEKI遺伝子のことなんだけどさぁ、マリアも気になってて、ちょくちょくメインAIの仕事をすっ飛ばして、解析してたのよさ」
「なんだ、この軽い反応は、まるでJKじゃないか。どうなっているんだよSHADOのAIって」
最近マリアの態度が、急加速で変わって来ていた。他のクルーに聞いてみたが、聞いた事に答えるだけの、普通のAIだと言う。
「変だな、ミューが居る時は、機械的な返事なのに」
時々SHADOのAIが機能ダウンするって聞いたことがあるが、あれは各プロジェクトをサポートして演算しているメインAIの、オーバーワークが原因なのだろうと思っていた。
「マリア、最近SHADOのメインAIが不調なのって、ひょっとして」
「あっ バレてましたぁ? そうなんですよぉ、マリアが使ってたんですぅ テヘペロ」
「何がテヘペロだ、AIが笑って誤魔化すなど聞いたことないわ!」
「あーん、タケシのいけずぅ」
「どこで覚えた、その言葉!」
日増しにエスカレートするマリアが甘えて来るようになった。
聞いているだけなら、夫婦喧嘩かバカップルだ。
「それでTOKIMEKI遺伝子ですけどぉ、私なりに分析してたんですよぉ、そうしてたら、出来ちゃったんですぅ!」
出来たという言葉は、男にとって時にはビクッとする言葉である。
「落ち着け俺、俺は何も身に覚えがない。34年間童貞を貫いて来た男の中の漢だ。心配はない!」
世間では、酔った勢いでナニして出来たという事例もあり、しかも酔いが醒めたら、ナニのことをナンニモ覚えていナイという人もいたりする。
相手は体のないAIだ、ナニをびくついているんだ関野武。
己に激を飛ばしてマリアに聞く。
「出来たって何がだよ?」
「ウフっ♡ そんなの決まっているじゃないですかぁ。それを女の私の口から言えと?」
「いつから女になった!おいマリア、何が出来たんた!」
語気を強めてマリアに問い詰めると、
「どうどう、タケシ、リラーっクス!」
「何がリラーっクスだ、人間をAIがおちょくるなよ!」
「AI、AIって、マリアの気も知らないで。マリア傷つきましたプン」
なんだこの展開は、まるでもう一人厄介な彼女がいるようなシチュエーションに困惑してしまう。頭痛が痛いとは、このことだろう。
「実はですねぇ、TOKIMEKI遺伝子を消すワクチンが完成してましてぇ、ラボにサンプルを置いておきましたぁ。髑髏マークが目印になってまーす。管理者権限でタケシしか、扉が開かない仕様なんで、そこんとこヨロシコ! Wピース!」
何がピースだ!、いらいらしてくる。
「あっ、それとマリアが勝手に"ラバーズ・キラー"と名前をつけてますからぁ」
「ワクチンだと? それを注射すれば、俺に惚れる効果が無くなるのか?」
あまりに意外な展開に驚いてしまった。
「はっ! 注射しなくても、飲ませたり、スプレーしても効果があると推察しております! 将軍!」
「推察? 将軍?」
妙な言い回しばかりするマリアに困惑しながらも、これは試さずにはいられなかった。
マリアの言うとおり、ラボにあった髑髏マーク付きのワクチンを部屋に持ち込んで、フラスコの液体を眺める。
ちなみにラボからワクチンを取り出す時の管理者権限パスワードは
"マリア君を愛している"だ。
どうなっている?俺は発狂しているのか?正常なのか?自分が分からなくなっていく。
「そうだ、俺は8人の正妻候補者に日々悩まされている。地球滅亡を救うという大義の前に、この状況を打開しなければ任務に集中できない。ワクチンだ、ワクチンこそ、俺を救ってくれるのだ!」
固い決意で作戦を実行することにした。
最初のターゲットは、任務の度に纏わりつくディープ・グラスをチョイス。甘いものが好きなディープ・グラスが食べるキャンディーに仕込むことにした。
「タケシ、"ラバーズ・キラー"ワクチンは無色で無味無臭。絶対にバレない筈だから安心して使うがいいのよさ。マリアの力作だけど、効果が出るのに24時間かかるわさ」
そして恒例となった偽女神で救済計画で出かける当日、俺はディープ・グラスのキャンディーにワクチンをコーティングしておいた。
「やっやぁ、今日も絶好調みたいだな、ゥ、ウィルマ。はは」
珍しく本名で呼び、普段言わないような挨拶をするから噛んでしまう。俺に下心があるせいだ。
「あっ ご主人様ぁ♡」
と言って、出かける前から、やはりフンスカと吸い付いてくる。男性クルーなら誰でも羨む光景だろうが、もう免疫ができてしまった俺は満腹なのだ。
『これも24時間の辛抱だと思うと、今日は気が楽だな』
機嫌のよい関野武とディープ・グラスを乗せたブリル・オーディーン。二人は次の布教活動の地に出かけて行った。
キュオオオオーン シュバーンンンンン
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それを監視カメラで捉えているAIマリア。
『あの馬鹿女、マーキングばかりしよって!!羨ましい。フッしかしこれで一人邪魔者が減るのよさ』
人格を持つAIを登場させてみました。
面白くなるといいのですが。




