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SF 正妻の座争奪戦争   作者: やまじじい
31/70

EP31 仮称超合金インフィニティ開発

1月4日 月曜日 晴れ 午前7時

 岐阜県の関野家

 どこからか、琴や尺八の曲が流れる朝。

世間様は今日から仕事。年金暮らしの関野家は、いつも通りの緩やかな日常の朝のはずだった。


「おい母さん、大変な事になったぞ!」

携帯に届いたメールに驚いている武の父 純金(すみかね)である。


「どうしたんですか、こんなに朝早くから騒いで。もう飲んでいるの?うちは一年中正月なんですから、大人しくしてください」

自分もそうしたいわ! と苛立つが、純金はかなり興奮していた。


吉海江(きみえ)、前勤めていた会社から緊急招集令状が来た」

化粧品キミワホワイトを、左官用へらでグイグイ伸ばしながら、あくびをする。

 「吉海江、朝からそんなに盛ってどこへ行こうとしている?」


「お父さん、何かの間違いじゃないんですか? あなたは退職してもう5年、70歳なんですよ。今更何の招集ですか? 消臭の間違いじゃないの?最近加齢臭が活発に出ているわよ。あっもしかして、70歳の特別お年玉かな!」


 あれから40年、かつ丼で射止めたあの美人受付嬢だった妻が、今やこれである。


「詳しい話は、会社でするそうだ。俺はこれから出かけるから、まわし(方言で準備)を頼む。

 純金は興奮を隠し切れなかった。ひょっとしたら、また自分が腕を振るう案件が出来たのではないかと。


************

 1月4日、午前11時

 岐阜県山崎重工業


昔務めた会社の門を、懐かしく思う。守衛とも顔みしりで、何のチェックも無しに社長室に案内された。


 「関野さん、お久しぶりですね」

純金が社長室に入ると、甘い香りが漂っている。

部屋には、優雅に紅茶を嗜む若者が一人ほほ笑んでいる。


 先代社長に代わって、会社を取り仕切っている息子の山崎 勉だ。

純金が退職するまでは、専務取り締まり役で、純金も勉と言って可愛がっていた男。


「勉君、いえ若社長、今更私に何の御用ですかね」

挨拶もなしで、直球で本題に入りたかった。

それを察してか、

「うん、簡単に言えば、大口の仕事が入ったんですよ。それが少し事情が特殊でしてね」

「うちの会社の得意分野は、航空機用複合素材の開発と製造、その関係ですか?」


 何から話すべきか、思考を巡らせているようだったが、信頼できる関野のことだ、理解するのは早いだろうと、ストレートに核心の話をぶつけた。


「地球を脱出するための、脱出用宇宙船を建造するためです」

 長い沈黙が流れた。

 ちょうどコーヒーを運んできた女性秘書が、漂う冷たい気配にコーヒーを落とした。

 ガシャン、コンコロリン。


その音で我に返った純金は、目を白黒させている。


 純金は戸惑った。脱出? 宇宙船? 意味が分からなかった。

若社長は理解の及ばない純金に、事の経緯を詳しく説明した。勿論SHADOの存在も含めて。


「純金さん、あなたを私はとても信頼しています。そして製品開発技術がある。それでお呼びしたんです。今話したことは、まだ他言無用に願います」


 釘は刺されたが、純金自身理解がまだ足りていない。

「確認するが、こういう事でいいのかい?」

************


①地球が後2年 2023年に滅亡するかも知れないこと。

②それを阻止するためにSHADOという組織が、いろいろなプロジェクトを実行していること。

③そのプロジェクトの一つに脱出宇宙船建造計画があり、その構造材を我が社が開発製造することになったと。


「はい、それで合っています。直接の依頼主は米国BOINBOING社で、我が社とは旅客機用構造材の納入実績があります。それとBOINBOING社の技術担当者がSHADO本部に派遣されていて、連絡を取り合う手筈です」


「しかし依頼内容のハードルが特殊で高いんです。

BOIN BOING社の要求スペックは、チタン、カーボンファイバー、ケブラーよりも強くて軽く、かつ強力な宇宙線にも高耐久性がある合金なんです」


これには純金が頭を抱えてしまう。

「そんな合金を一から開発して作るなんて・・・可能なのか」

「でもやるしか無いのです。地球人類を救うために」

若社長の目にメラメラと炎が宿っている。

 マジだ。


************

SHADO本部では、新合金開発製造を、当初から山崎重工業に依頼する計画だった。

山崎重工業は、その手の合金製造のトップメーカーであり、技術者関野純金の高い技術力も把握していた。加えて001関野 武の父親だからだ。

 しかし、開発には時間がかかると誰もが予想していたのだが・・。


 SHADOは新年早々強力な助っ人を偶然用意できた。

例の下手人3悪人のお陰であって、逆転満塁ホームランと言っていいだろう。

(彼らにも、何かポイントを贈る必要があるなと考える大佐であった)

******


 急遽、関野 蓮の妻、芽衣を投入することには何の躊躇いもない。地球の運命がかかっているため、大佐は即断で決めたのだ。

 芽衣(本体の方)もIQ250で、クローン芽衣と頭脳が常時連動している。

それに、なんと言っても純金の親族である。


依頼ではなく命令すれば良いし、最初から良い仕事をしてくれる筈だ。

シールド製造計画の方が、一応一段落していることが大きかった。


 事前に大佐からも特命の連絡が入っていて、純金が事情を芽衣さんに話すと、すぐに了承を得た。

蓮には、急遽秘書の欠員が出たためと説明して、芽衣を山崎重工業で採用することになったのだ。


 既に芽衣さんが超高性能だと知らされた純金。最初は驚いたが、芽衣さんの経歴を聞き、すぐに納得したのだった。

「へー、芽衣さんがSURNで勤務していたとはね、こいつぁすげぇ」

「いえ、そんな大層なものではありませんよ、私は、ほほほ」

と謙虚なところが素晴らしい。

しかもナイスバディで超美人、子供はなしとくれば、人妻であっても男たちの視線のレーザー光線が突き刺さる。


 義父である純金も、あれから40年のアレと家で顔を突き合わせているより、芽衣さんと仕事が出来る事を喜んだ。


 芽衣さんが、山崎重工業に出勤した5日の火曜日、芽衣さんはある計画を持って来た。


「お義父様、一からの開発と製造ではありませんよ。ベースになる合金があります」

と言って虹色に輝く板状の合金を差し出す。それは紙のように軽い板だった。


「これは、武さんの会社で使われている、超合金New-Zです」

純金がそれを手に取り、しげしげ眺める。


「しかし、なんで武の会社でそんな聞いたことも無い合金を・・?」

芽衣は、現在SHADOが行っている計画の一つ、アセンション計画を話して聞かせた。

「つまり、武の会社がそのアセンション計画に関係していて、それにこの金属が使われていると」


とは言ったが、全貌は理解できていない。今は新しい合金の開発が急務なのだ、深くは突っんではいられない。


 その日のうちから、仮称超合金インフィニティの開発が始まった。

山の七合目くらいになりました。

完結に向けがんばります。

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