EP28 ミューの逆襲と地球防御シールドBENZA
SHADO本部宛てに、惑星連邦から宅配便が届くことは、別に珍しいことではない。クルー達がSpaceNetで購入した物や、この時期になると、家族から故郷の海の幸、山の幸などが送られて来る。
正月を故郷の味で過ごすクルー達のささやかな楽しみだ。
ミュー宛てに大きな荷物が届いても、誰もそれを気にすることはない。
箱には、"生ものにつき、消費期限に注意"とプリントされたラベルが貼ってあるため尚更だ。
猫だけに、故郷の干物などの海産物だろうと思われていた。
「はは、また大量に買い込んだものだ。あれだけあれば来年の正月まで持つな」
と、荷物整理担当クルーは笑う。
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今は敬愛するご主人様と同じ部屋で同居しているミュー、考えようによっては一番羨まれる筈だが、姿が猫であり、しかも人間に戻れないと知られているため、正妻候補者たちはミューに寛大なのだ。
ステラ曰く
「ふん、そのくらいの情けは、持ち合わせているつもりよ」
とミューを正妻のザ・ゲームの敗者と決めつけていた。
現在16ポイントのリードがあろうが、例えゴール出来ても、人間と猫が婚姻できる訳がなく、ご主人様が猫など選ぶ筈がない。それ故の余裕なのだ。
早速大きな荷物がミューの愛の巣、ご主人様の部屋に運びこまれた。
「ねえ、マゴロク、ミューと呼んだ方がいいのかな、何をそんなに買い込んだんだい?」
「ご主人様、私は本名のミューと呼ばれた方が嬉しいです。これからはミューとお呼びくださいませ。よろしかったら、お、お前でも・・・」ポッ
「あ、箱の中身は秘密ですニャ」
関野 武も中身は干物かキャット・フードだろうと怪しむことはなかった。
ミューは、それを下手人3悪党の一人の元へ運んだ。
「お白洲では、大変でしたね」
一人の元小悪党が、ミューの皮肉に苛立った。
ミューは一応、アセンション計画実行部のメンバーだ。自由に部室に出入りすることが可能で、誰も怪しむことはない。
「ミューか、その大きな箱はなんだ?」
二コラ・テスラ博士が尋ねる。
「いえ大した物ではありません。それは後日博士とじっくりと」
含みのある笑顔で、今はその話題から避けた。
明日から新年だ、干物を肴に酒でもと、勘違いされていた。
正妻のザ・ゲームのポイントは、この部では、ミューがトップの16ポイント、続いてソフィアの3ポイント、ステラ&メーベが2ポイント、ホル・マリン、関野芽衣が振り出し組である。
ホルがいつまでも浮かばれないのは哀愁を誘う。しかし、ひょっとしたら一番の良識派ではないだろうか。
例えるなら有名ブランド品ではないが、良質なノーブランド。
案外ダーク・ホースなのかも知れない。
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大きな箱を持ち込んでも、正妻候補者たちは、何の疑いも持ってはいない。
「ふふ、油断大敵ですね、これからミューは華麗なる変身を遂げるのです。蛹から脱皮する蝶のように ホーッホホホ、 ホー、ホケキョ」
雰囲気がどこぞの悪役令嬢である。
『今は地球救済プロジェクトを及ばすながらアシストし、裏であの下手人3悪党を手なずける。そして、このクローン・ボディ"リンサン・ヘドロコデイン"に生まれ変わるのです』
明日から正月、全ては正月三が日が終わってからが勝負、不敵な笑顔を浮かべ気合を入れるミューであった。
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一方、殆どのクルーやプロジェクトメンバーが、正月を前に宇宙紅白ド突き合い合戦や、あんたが大賞を見て楽しんでいる時、関野芽衣の頭脳が本来の性能以上の演算能力を発揮し出した。
本体とクローンのIQ180が連携して並列処理出来るようになったのに加え、愛のパワーが点火剤となり、実にIQ200の壁を突破、怒涛のIQ250にパワーアップしたのだ。
凄まじい演算能力は、二人分の頭脳とは言え、日本が誇るスーパーコンピューター富岳を上回った。
惑星連邦と暗黒帝国、SETIから提供された、シールド建造設計案を素早く解析、演算、そして改良点を導き出す。それをシュミレーションし、更に改良を加える。この作業を、正月三が日を利用して設計に没頭した。
全ては正妻候補者を出し抜き、貢献度ポイントを獲得するために。
愛のパワーは時として奇跡と狂気を生む。
芽衣は、脳内コンピューターと、正月で殆ど使用されないSHADOコンピューターをフル稼働させ、地球環境にベストマッチングしたシールドの基本設計を完成させたのである。
その名を"地球防御シールドBENZA"と名付けた。
由来は、芽衣がまだシングル・コアの時、ストレスから極度の便秘と設計で悩み、トイレで糞詰まりになっていた事が多かった。
地球防御UVシールド・・切れ痔になりながらも耐えて来た。そしてやっと完成したのである。走馬燈のように思い浮かぶのは、あの便座に座って苦しんだ日々の事。
それが今、やっと解放されたのである。
ホラギノール、マンソレータムにラッパのマーク、何でも塗って耐えた。この日のために。
芽衣はいつも便座に話かけていた。今では良き友人となったU字型の便座に感謝した。
UVとUの字型が見事にマッチングした為のネーミングであった。正にIQ250ならではのネーミングセンスは、他の追随を許さない。
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正月三が日が明けて、SHADOは通常運転に戻る。
芽衣が苦労して完成させた、防御シールド設計図を大佐に見せる。
「「「おお、これは素晴らしい!!」」」
新年の挨拶もそこそこに、シールド開発室は歓喜と称賛の声が響く。
β版アルベルト・アインシュタイン博士、β版二コラ・テスラ博士、ヘーデル・オレーダ博士が唸る。
「これは、我々惑星連邦の設計を遥かに上回る性能だ。この基本設計図には欠点が見当たらない! 素晴らしい! さすがはIQ180の頭脳、連邦の科学技術部門の最高顧問である私でも、この設計は出来なかった!」
ヘーデル博士が絶賛する。
「いえ、これはSETIの北川かほりさんや、娘のソフィアさん、博士たちから頂いた技術資料があっての事です。私一人の力ではありません」
謙虚なところがまた良い。
UCA組は何も貢献していない。
「正月早々、とても縁起が良いスタートになったな。よし、早急に設計図からプロトタイプを作り、性能試験に移る。よくやったな、主任!」
大佐からかけられた主任の言葉に、思わず大粒の涙が流れた。
関野 武がそっとハンカチを出し、涙を拭ってやる。
「ご、ご主人様ぁぁ」
更に涙が溢れ出てくる芽衣を優しく抱きしめる関野。
「これは、貢献度ポイント決定ですな。審判員権限で6ポイント進呈です。おめでとう!」
ご主人様に抱きしめられ、正気に戻るのが遅れた芽衣が驚く。ポイント!そうだった。私はポイントゲットの為にこれまで頑張って来たのだ。
だが、今はご主人様の腕の中が最高のご褒美、こんにゃくのように蕩ける芽衣だった。
「きーっ悔しい! 」
過激になったステラがハンカチを噛む。その側で、「これは仕方がありません、素晴らしい快挙を成し遂げたんですから」
と理解を示すメーベとは対照的である。
ソフィアも好意的に受け止めているのが嬉しい。
関野の心象から見れば、メーベとソフィアの態度に好感が持てていた。
やはりステラは、脱落候補者に入っているのではないだろうか。
こうして、一つのプロジェクトが新年早々加速したため、他の二つのプロジェクトが焦る。
大佐が窓際でシガーに火をつけ、満足気に長い紫煙を吐き出す。
「地球の危機が迫っている時だ、これは良い影響を与えたな」
とほくそ笑んでいた。
下ネタがが多くなってきました。
生活が不規則になって、正真正銘、切れ痔になりました。
軟膏を塗る時のあの痛み、飛び上がって低い天井で頭をうつW悲劇
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