EP22 人生すごろく 正妻のザ・ゲーム①
暗黒帝国星系王女、パンツ・〇ミエールは、直ちに母国の国王に結婚式の承諾を打診する。
ただの冗談だと思っていた国王、妃もどうやら王女は本気だと悟る。
「馬鹿者! 我が栄光ある暗黒帝国の王女が、こともあろうに惑星連邦が肩入れしている地球の猿と婚姻だと! 認められるはずがなかろう!」
これには妃も同意である。
いくら王女に甘々な馬鹿親でも、これだけは許せない。物事には道筋というものがある。
そして相手が暗黒帝国の年頃の王女となれば、裏で諸貴族連中が暗躍し、己の権力の拡大を図るために、婿入りを画策しているのだ。
王女が地球の猿と婚姻など、帝国諸貴族にも支配する星系にも、王のメンツが立たない。
「却下だ! そしてパンツ、お前は一人地球で少し頭を冷やしていろ! 旗艦ノジャロゥリは撤退させる!」
王の命令は絶対だ。旗艦ノジャロゥリは、兵士全員を乗せてさっさと帰還の途についた。
惑星連邦G-ツェッペリンに残されたパンツ一丁、いや王女がポツリ佇む。
「儂を一人残して、本当に帰りよってからに」
悲しみに暮れるかと思いきや、パンツ王女は逞しかった。
「ふっ、父上の本心は丸わかりじゃ、地球で夫と水入らずでまず暮らしてみよと。つまり同棲してから、正式な結婚式という流れか! 粋な計らいじゃ!」
全くの方向違いの勘違い。無知な思い込みとは恐ろしいものだ。
今や立場が180度回転し、惑星連邦の捕虜だとも思わず、大柄な態度は変わらない。
「皆の者、ここで儂と王子様の仮祝言を執り行う。準備するのじゃ!」
ミューの手が緑色の便所スリッパを取り出す。
「おおっと艦内が騒めいたぞ!」
いつの間にか、富永高夫がマイクを片手に実況中継を始めている。
クルーを含め全員が、この後の王女の結末を予見したからだ。果たして結果は・・・。
「さぁ、どう出る、ミュー選手」
選手扱いになった。
スパーン! スパパーン! 「なぬ? 」スパパパーン! スパパパパーン! 「なんと!」
「便所スリッパの連撃ラッシュだぁ! これは効いているぞ!」
緑色の便所スリッパだけではなく、エビ茶色、ウンコ色、嘔吐色など悍ましい色をした便所スリッパが王女をしばいた。
涙目のパンツ王女が絶叫する。
「無礼者ぉぉぉ! 儂を誰だと思おておる。泣く子は泣いたままだが、ある程度の者は黙る栄光の暗黒帝国星系王女、エリザベスであるぞ! 頭が高い、高すぎる! 平伏して儂を崇めよ!」
「なんと!あれだけのラッシユを食らっても、王女の目は死んでいない!」
誰も返事をしない。しかし、昔のよしみでミューが口火を切った。
「いつまで格好つけてんのよ。旗艦がいなけりゃ王女なんて、ちーとも怖くないんですよ! 王女、あんた自分の立場を分かっていませんね」
いつの間にか、色とりどりの便所スリッパを持ったステラ、メーベ、ソフィア、ホル・マリン、偽女神は金色のスリッパを持ち、王女を取り囲んでいる。
「おおっと5対1になったぁ、バトルロイヤル潰し合い! これは不利だぁ! どう出るパンツ選手!」
「王女、今度結婚などという至高の言葉を口にしたら、宇宙空間に生ゴミと一緒に廃棄します」
「私ステラは熱愛するご主人様の正妻となる身、ぽっと出のロリパンツの出る幕はないのよ! あんたは大人しく地球の温泉街にでも行って、余生をゆるーく最後まで一人で過ごせばいいのよ!」
ステラの物言いは強烈だが、ライバルである他の正妻候補者も反論はしない。
「ぐっ、このうら若き美貌の塊である儂が、王子と結ばれるのは、宇宙の法則、真理である。邪魔だてするな!」
「さすがに5対1は、圧倒的に不利。満身創痍でズタボロだが、パンツ選手気力で立っているぅぅ!」
次は偽女神が王女の前に立ちふさがった。
そして、もったいぶってディープグラスをはずす。
「出たぁ、ウィルマ選手の必殺技、悩殺信者ホイホイ!」
正しく女神の容貌に、パンツも絶句する。
「そこまで!」
富永高夫がタオルを投げ込んだ。
肩でゼーゼー息をするパンツ王女はダウン寸前だ。
これでは埒が明かないと踏んた富永が一枚のボードを取り出した。
「正妻候補者の皆さん、私富永はこんな事もあろうかと、このようなゲームを用意しました。名付けて"人生すごろく・正妻のザ・ゲーム"」
正妻という名に過敏に反応する候補者たち。
「なんじゃ、そのゲームは?」
「なんなの?」
興味津々である。
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説明しよう。
日本に古くから楽しまれている、すごろくを富永が改良した一品である。
振り出しから、サイコロの目が出た数だけ進み、上がりを目指すという単純だが、奥の深いゲームだ。
振り出しに居並ぶのは正妻候補者6名、上がりはコングラチュレーション! ご主人様と愛の三発四日、夢の逃避行と書かれたマスだ。
旅行付きらしい。
当然、行く手には落とし穴、一回休憩、3マス戻る、進むなど多彩な趣向が盛り込まれている。
だが、富永はこれに貢献度ポイントを追加している。つまりご主人様と過ごした年月や、地球人類救済のためにどれだけ貢献したかが加算されるのだ。
これにより、公平にご主人様の正妻の座を獲得できるという寸法だ。
候補者たちに異論はなかったと言いたいのだが。
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ミューが口を開く。
「面白いケームね。でも私はご主人様と16年も共に暮らしたのよ、つまり振り出しからではなく、16マス進んだ状態から始まるの。おわかり?勝つのは私、ホーッホッホッ」
猫が勝ち誇った。
「それならステラとメーベは2年間、ご主人様のクローン体のお世話をしたから、2マス頂くわ」
「私は、会社で3年間一緒に仕事をしました。ですから私は3マスね」
ソフィアも負けてはいない。
「おおっと、何も実績のないホル・マリン、パンツ選手が項垂れているぞ!」
ここで異論を唱える者が一人
「私はここ数回、偽女神としてご主人様と布教活動に専念し、効果を上げていますわ。確か地球人類に貢献していることもポイントが付くわね」
「はい、その通りです。ウィルマ選手はアセンション計画に貢献しております。よって2ポイントゲットです」
「よっしゃぁぁぁぁ!」
ウィルマ選手がガッッポーズをする。
対象的に、ぐっと唇を噛むパンツとホル・マリン
そこで黙って聞いていた大佐が口を出す。
「王女には、貢献どころか多大な迷惑を受けたがな」
「なるほど、これは盲点でした。振り出しで3回ほど休むのが妥当か」
富永の一言に王女が慌てる。
「そ、それはノーカンじゃ、ゲームは今始まったばかりなのじゃから、儂が地球を攻撃しようとしたのはノーカンなのじゃ!それにミサイルは逸れているのじゃ」
流石に振り出しから3回休むのは聞いたことがない。ここは王女の言うとおりノーカンにした富永実況兼審判であった。
ご主人様となる関野武の意志は全く無視して、"人生すごろく・正妻のザ・ゲーム"は開始されたのだった。




