EP16 吹き荒れるジェラシー 偽神は救世主と共に
ウィルマを女神とする「偽神で地球を救え」作戦は、波乱と嵐を呼ぶことになった。
というのも、牛乳瓶の底眼鏡を掛けなおしたウィルマが、突然絶叫したのだ。
「あわわわわ! マイ・デストニー! マイ・ダーリン! 」
関野 武の前で片膝をつき、胸に手を当てると宣誓を始めた。
「私、ウィルマ・ラミネートは、この時この場よりあなた様に永遠の愛を誓います!」
「「「にゃんだとー!」」」
雌猫のマゴロクまで、毛を逆立てフーっと威嚇している。
会議に出席しているステラ、メーベ、ソフィア、ホル・マリンまでが般若と化した。
ステラとメーベは既にお馴染みの反応だが、俺にはソフィアの反応が嬉しかった。
『ソフィア、怒るとあんな顔になるんだね』
しかしホル・マリンまでとは・・・・これは悪寒なのか、背中に滝のように流れるのは冷や汗だろうか。
冷ややかに見守っていた大佐が口を開く。
「ウィルマ、君にはある重要な任務を申し付ける。よいな」
有無を言わさない大佐の言葉に、少しだけ反意を込めて確認するウィルマ。
「大佐、私、マイ・ダーリンと一緒なら、例え南国の楽園であろうと天国へでも行きます。任務はマイ・ダーリンと共に遂行する覚悟です!」
そこは、地獄の果てとか言うのが適切だと思うが、と内心心配になる。
「「「却下、却下します! フー! 」」」
ステラ、メーベ、ソフィア、ホル・マリンと猫一匹が叫ぶ。
「その役目、是非私、ステラに メーベに、ソフィアに、ホル・マリンに、ニャーニ、」と同時に叫んだ。
「否、皆それぞれに重大なプロジェクトの最中だ、それに皆治癒魔法が使えないだろう?ここはウィルマに任せる。それと、001関野君には、ウィルマのサポートを頼む。見ての通りディープグラスが必要な程の視力だ、適切にサポートしてやってくれ」
大佐がそう言うのだから、これは決定事項だ。
「サポートっつ! 」
ウィルマの中では、極大解釈が進行していた。
テレパシーで女性陣が脳裏に浮かんだのは、共通願望のアレである。
「「「ま、ま、今はいいでしょう。最後に笑うのはこの私なのだから」」」
声が震えている。流石にあの女神のような容貌を見て、少し腰が引けている。
女性陣それぞれの思惑を切り捨て、「偽神で地球を救え」作戦の主要キャストは決定した。無論チームリーダーは富永高夫である。
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作戦はテストケースとして、現在エボラ出血熱が流行しているアフリカを選んだ。
使用するUFOはブリル・オーディーンである。
チームリーダー富永と関野 武、少数のクルーを乗せてコンゴ民主共和国へ向かう。
一時は終息したかに見えたエボラ出血熱だが、衛生状態のよくない農村部から第二波が発生したのだ。
病院の無い農村の掘っ建て小屋に、患者が集められている。人数にして30人ほどで、特に老人と子供が多数を占めていた。
そこに、神々しい光を纏って、緩やかに偽女神様が降臨した。
頭上には光る光輪、ギリシャ神話に出てくるようなゆったりした白い衣装、微笑みを常に絶やさない御尊顔には、慈愛に満ちている。
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事前ミーティング
「いいかウィルマ、ディープグラスは使えないから、常に微笑んでいろ、すべて光輪受信機から無線で指示する。見えていなくても、お前の手足はリモートで俺が動かすから心配するな」
と手にしたリモートコントローラーを操作すると、ウィルマの手足が動く。まるでワンダーバードの人形劇を見ているようだ。
「はい、旦那様の言う通りにします。これが旦那様と私の初めての共同作業ですわね。 ポッ」
たわけた独り言は聞こえなかったことにして、任務開始だ。
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部落の住民が騒然となった。次々と住民が飛び出して来る。
光輝く存在が目の前にゆるりと降り立つ。しかし足は地面に接していない。
神秘さを表現するため、反重力を利用した演出だ。
村長が叫ぶ
「め、女神様じゃぁ! 女神様が降臨なされたぞ、皆の衆! 」
その言葉に地べたに平伏する村人たち。
「「「「はっはぁー」」」」
一度神と認定されれば、このような対応を受ける。人間とはなんと非合理的な生き物なのだろう。
初陣偽女神作戦の効果は満点であった。




