EP15 とてとてビタンで嵐を呼ぶ女神様
今や経済大国の中国。
SHADOにとって、中国の理解を得ることは大きな課題である。
そして、人類アセンション計画の事前工作に、中国を取り込むことは今後大きなメリットを齎す。
それとは別に日本では、超常現象研究家にそれらしい情報を流し、緩やかにXデーを拡散、浸透させていく作戦が進行していた。
有名なTVディレクターに情報を流し、特番を放送させたり、有名月刊紙NU、西スポなどで小出しに国民を洗脳していくのだ。
作戦名「コネで地球を救え」を指揮するのは、SHADO情報部 富永高夫だ。
富永は、ある時はネットに都市伝説、またある時はアマチュア天文家として、観測データーから解析した驚愕の未来など、半分嘘と真実を交えて流していた。
一番注目されたのは、UFOディレクターで有名なY氏がスペシャル番組を放映してくれたことだ。
これには、結構な反響があり、何冊かXデーを煽る書籍が発刊されることになった。
SHADOの狙いは、徐々にXデーを認識させ、パニックを最小に抑えることである。勿論、Xデーが到来すれば、大きなパニックになることは間違いない。それでもやらないよりは、事前情報があったほうが良いからだ。
日本国政府では、阿部川首相と熱想財務大臣、自衛隊宇宙作戦隊など、極一部にSHADOは情報を流していた。
無論、それが事実なら、政府として国民を守るために全力で対処すると、安倍川首相は答えてくれた。
だが、国民全員に情報を流すのは、時期をよく見定めてからと、慎重論を貫き、問題は先送りされている。
現在では、UFOが存在しても不思議ではないという認識は、既に出来上がっているので、お馴染みの終末論がまた飛び出しても、またかという認識程度である。
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富永高夫は、これだけでは効果は無いと判断し、救世主である関野 武に相談を持ち掛ける。
「関野さん、地球が滅亡するかもという噂話が浸透したとしても、Xデーが目の前に迫れば人間の取る行動は明らかです」
正直、SHADO本部でも、何もしなければ、Xデー当日各国で起きる一大パニックと暴動、略奪を抑えることは不可能と予測している。
それには関野 武も同意だ。
「富永さん、これは僕の考えですが、熱心な信仰を持つ信者さんは、そんなXデーでも静かに祈りを捧げると思います。僕は物理方面の救世主、ならば精神面の救世主を作り上げたらどうでしょう?」
敬虔なキリスト教徒に限らず、信心深い人達は、パニックや暴動に走りにくいはずだと富永も考える。
「関野さん、それは新しく宗教を作るということですか?」
「うん、新興宗教を作って魅力ある教祖を担ぎ上げるんだよ」
しかし富永は首を傾げる。
「これから創設する宗教の信者を、世界中に広める事など可能なのですか?」
歴史を見ても、キリスト教も仏教も、普及するには長年の地道な普及活動があったのだ。後3年ほどで世界に浸透させる宗教など、不可能であろう。
「奇跡を見せるんだよ」
はっとする富永の顔を見て、その方法を説明する。
「惑星連邦の住人であれば、治癒魔法を使える人がいる。今仮設SHADO本部
G-ツェッペリン3000の乗員の中に、探せば一人くらい該当者がいるのではないかと思うんだ」
なるほど、人間は奇跡を見せられると信用しやすい。昔超能力だと称してトリックを使っていた宗教家がいたが、あれをやるのかと呟く。
「出来れば女性の方がいいだろう。その女性を奇跡を呼ぶ女神として、世界中から尊敬と崇拝の対象にすればいけると思う」
現代はネット社会。地球の裏側で起きた奇跡がものの数分で、世界中に伝わる。この手を逃すことはないだろう。
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SHADO本部に二人で向かい、緊急会議の要請をする。
30分後に会議が開始される。このような事態の中、スピードは命なのだ。
富永が説明を始める。
「という訳で、SHADO本部乗員の女性で、治癒魔法の使い手を一人ノミネートして欲しいのです」
アセンション計画の補助になると、カロヤン大佐以下アセンション実行部は賛成の意志表示をする。
「つまり、世界中のあちらこちらに現れ、怪我人と病人を治癒し、後は忽然と姿を消す・・・出現と回収はUFOのアブダクション方式を使う。これを見た地球人は女神様の奇跡と信じる。そしてその情報は映像で世界を巡る。という事か」
大佐がすぐに計画の全貌を理解してくれた。
「さて、治癒魔法が使える乗組員となると・・・」
大佐が人選に思考を向けると、誰かがドアをノックする。
「ちょうど良い、コーヒータイムにしよう」
大佐が今日の当番乗組員を招き入れる。
するとワゴンを押して、度の強い眼鏡をかけた女性乗組員が入って来た。
牛乳瓶の底のような眼鏡なので、顔が良く分からないいが、スタイルは抜群だった。
とてとてとて 動きがぎこちない。会議室の全員にこの後の未来が見えた。
ドチチャーン、ガラガラ、コンコロリーン コロコロコロ
ぶちまけたコーヒーやらケーキを頭から被って、フロアに叩きつけられた彼女は、潰れたガマガエルのようだ。
グエーっ
叫び声もガマガエルだ。
皆が予想通りと安堵する中、その乗組員がヨロヨロと起き上がりながら、腕に治癒魔法をかけている。
牛乳瓶の底眼鏡は吹っ飛んでいた。
そして、全員の目が点になった。
「「「これだぁー!」」」
なんと、眼鏡がふっ飛んだ彼女の容姿容貌は、正に女神と呼ぶに相応しかった。彼女が眼鏡を外した顔を知っている者は、艦内では殆どいなく大佐も初見であった。
それと、彼女は超が付くほどのドジっ子なのは有名で、もはや特技と呼ばれていた。
その名をウィルマと言う。この先世界中から信仰の頂点となることを彼女は知らない。




