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第0話 深海恋慕

新しいの始めました。

読んでいただけると嬉しく思います。


 君はどこに居るのだろうか。


 僕はどこに居たのだろうか。


 君と過ごした日々は儚い幻で、僕はやはり一人の獣に過ぎなかった。



 君と会えた奇跡はもう遠い記憶の片隅に眠る。

 それはまるで大海に沈んだ宝箱の様なものだ。


 もう…その宝箱がどこにあるのかも分からなくなってしまった。


 僕はもう、疲れてしまったのかもしれない。

 もう居ない幻の霞を集める作業に、疲れてしまったのかもしれない。


 君と僕の思い出を、僕が忘れてしまったら、全て無かった事になってしまうというのに。



 …いやだ、忘れたく無い。

 君の優しい瞳も、小さな背中も、撫でてくれた手のひらの温もりも。

 強がるくせに泣き虫なところも、安心出来る甘い匂いも。

 そして…あの笑顔も…。



 年々深くなっていく記憶の大海に潜り続ける。

 けれども宝箱は見つからない。

 …分かっている、本当は分かっている。


 その宝箱は…例え見つけても、君が居ないと開かないのだ。


 それでも僕は…その宝箱を探し続ける事しか出来なかった。




 更にどれだけの年月が経ったのだろうか。

 僕はまだ生きている。君が居ないのに、僕はまだ生きている。


 やっと見つけた宝箱は、やはり開かない。

 僕は、その宝箱を落とすまいと、ただ必死にしがみつく。


 でも、本当は分かっている。

 それすらも、その…やっとの想いで拾った宝箱も、拾ったつもりでいるだけだ。


 もう、存在しないのだ。忘れてしまっているのだ。

 それだけの年月が流れてしまっているのだ。



 僕はただ、ただただ毎日泣いていた。




 僕の涙を止めたのは、忘れていたはずの君の匂いだった。

 甘く、心から安心出来る、あの匂い。


 どこから?それは僕の腕の中。

 拾ったつもりでいただけの偽りの宝箱。

 毎日落ちる僕の涙が宝箱に小さな穴を空けていた。


 宝箱の中からは確かに君の匂いがした。

 匂いとともに記憶が少しずつ戻る気がした。



 君は…どこかに居るの?


 僕は…ここに居るよ。



 君を…探しに行かなくちゃ。



感謝感謝にございます。

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