3話目
翌日は普通に学校はあった。まぁ何人か休んでいる人はいるが仕方がないと思う。
放課後一人残り、ノートを前に昨日までのことを整理する。
『古崎 美夜 死んでも生き返る』
彼女についての情報をまとめるとこんな感じだろうか。
文字にするとたった十二文字、いささか少なすぎる気もするが仕方がない。なんたってあの日以来会えていないのだから。
はぁ〜、とため息をつき、机に突っ伏す。眠いからではなく、今からの徒労を考えて憂鬱なだけだ。まぁ決断したことを曲げるつもりは毛頭ないが。
「おい、シュウ。カナが迎えに来てるぜ。」
傑に言われ、ドアの方を見ると佳奈が立っていた。
今行く、と返事をし机に広がった文房具を鞄に入れる。
ちなみに彼女は御堂筋 佳奈。佳奈は傑とは違い小学からの付き合いだ。もう1人いる友人を含めて4人で集まることが多い。
「秀作早く。お墓参り一緒に行くんでしょ?」そうだった。今日行くと約束していたんだった。
「葵は生徒会があるから今日は行けねぇってよ。葵のやついっつも生徒会だ何だって言って一緒に来ねぇよなぁ。」ちなみに葵4人のうちの残り1人だ。
「仕方ないでしょ、忙しいんだから。じゃあ行くよ。」そう言って佳奈は先に行ってしまう。
「・・・あいつせっかちだよな。」「それは言わないお約束でしょ。」
なんですって!!、と向こうから声がするので急いで後を追う。
今日行く墓参りというのは小学校から中学校にかけて僕達4人に集まる場所を貸してくれて、優しく接してくれていたが、去年亡くなってしまった御堂筋 源三さんのお墓だ。ちなみに佳奈の祖父でもあり、僕達は親しみを込めて『源じい』と呼んでいた。
あの頃は楽しかったななどと思いをはせながら佳奈を追っていく。横断歩道を渡り、佳奈の家の近くに向かうバス停に付いた時、バスが来るまであと10分くらいあった。
多少急いだので、息を整えながら何の気なしに反対車線を見る。
目線の先にあった反対車線側のバス停に彼女、美夜はいた。
突然だったのですぐには理解できず、固まっていると美夜も気づいたようで、こちらに小さく手を振ってくる。その直後、向こうのバスが着き、バスが出た後には美夜の姿は欠片ほども無くなっていた。
会わないかと思えば、姿を見た直後に消え去る彼女。まるで幽霊を相手にでもしているようだ。まぁ幽霊は死んでいるが、彼女は死なない。そこでだいぶ違いはあるのだけれど。
こちらのバスも来たので乗り込む。まずはこっちの用事を片付けよう。その後あの場所に行ってみよう。
とりあえず姿は見たのだ。今日あの場所に向かえばもしかしたらいるかもしれない。
そんなことを思う僕を乗せてバスは進んでいく。
バス停を降りて徒歩五分。
佳奈の家である御堂筋家に着いた。御堂筋家はかなり由緒ある家系らしく、家も相当大きい。
そんな御堂筋家の門をくぐり、少し高台に行くと源じいのお墓が見えた。
三人揃って手を合わせ、掃除をしたりして墓参りをすませ、佳奈の家に入った。
「みんなお疲れ様。はいこれお菓子ね〜。」そう言って僕達にお茶とお菓子を出してくれたのは佳奈の祖母である初江さんだ。源じいと同じようにとても優しい人である。
初江さんが出してくれたお茶菓子を楽しんでいると、ドタバタと足音が聞こえてきた。
「秀にぃ来たの〜?」「傑っち来たの〜?」まったく同じ声でひょっこり二人の少女が現れる。
「ナツにフユ、ドタバタうるさいぞ。」と傑に注意を受けているのは、佳奈の妹の夏美に冬美。二人とも小学6年生の双子で、長い付き合いなのだが今でも見分けがつかない。
「傑っちのケチんぼ。」「ケチんぼ〜。」「やかましいわ。ケチで悪かったなケチで。」
傑と二人のやり取りを見ているのはなかなかに楽しい。精神年齢が近かったりするのだろうか。
そうしているうちに、美夜のことを思い出したので、「それじゃあ僕はちょっと先に帰らせてもらうよ。少し用事ができたんだ。」と、僕が席を立つと、
「用事ってなに〜?」「人と会うの〜?」「もしかして・・・」「「女〜??」」と夏美冬美が聞いてくる。
まぁ女子ではあるよ、と答えながら玄関に向かうと、今度はガッチリと腰を掴んできた。
「彼女でありますか!!」「秀にぃの心を奪った女狐はどいつでありますか!!」などと勝手に盛り上がっている二人を引き剥がし、さっさと靴を履く。
「一大事ですぞ冬美隊員!!」「佳奈隊長に報告するのです夏美隊員!!」いちいち変な言い方するのはなんでだろう。それに何を報告するのだろう。
ちいさな疑問は放っておき、外に出る。
あいさつをして、多少急いでバス停に向かう。先にバスが来てたら困るからだ。
バス停に着くとまだバスは来ていなかった。そして携帯がなっていることに気づく。
傑から『佳奈が拗ねてるから明日かまってやってくれ。PS、お前のせいでナツとフユがすげぇうるせぇ。どうしてくれんだ。』とメールがあった。PSのとこは僕は知ったこっちゃないと思う。
そういえば美夜のメルアドとか聞いておけばよかった。メールという手もあったんだな。次会った時聞こう。
そう思いながらバスに揺られていく。
ちなみにあの場所に美夜はいなかったのでメルアドとかを聞くのは次の機会になった。




