夏のひと言
「ひと夏の思い出と言うのは、言うは容易く行うのは難しい」
昔の偉人だったかそこら辺の若者だったかは知らないがその通りだと私は思った。
「夏休みに彼氏とひと夏の思い出作りなよ」
私の友人は会うたびに決まってこう言った。
確かに私には付き合って五か月になる彼がいる。そう付き合って半年である。
「半年たっているのならある程度慣れているから大丈夫だよ」
友達に言われたがそんな訳がない。
今でも彼を何かしら誘う時には勇気がいるし
恥ずかしさのあまり誘う事を諦めた事も何度もあった。
そのせいか、この半年間で彼と遊んだ事なんて両手で数える程度しかない。
こんな状態でも何も言わない私の彼はきっと
出来た人間なのだろうなぁと思わない日はなかった。
終業式を終え、私は家路に着こうとした時
「一緒に帰ろう」
彼が私に声をかけた。私はそれに二つ返事をした。
太陽が辺りを暑く照らしている頃、私の心は高鳴っていた。
暑さのせいなのか、それとも緊張しているのかとにかく高鳴っていた。
彼と一緒に帰る
当たり前の事なのに私はなんでこんな気持ちになっているのか不思議だった。
そんな事を知る由もない彼は他愛のない話を私にしていた。
そんな彼がふと立ち止まった。私も少し遅れて立ち止まった。
見ると壁に張られた一枚の紙を見ていた。私も横から見てみると
それは夏祭りをお知らせするチラシだった。
日付は今週の土曜日だった。
私は彼と行きたいなぁと思い、誘おうとしたが
「あ…… あの…… その……」
なかなか言葉に出来なかった。そんな私を見かねたのか
「一緒に行くか?」
一言彼が呟いた。私はその一言がとても嬉しかった。
返事を言葉にする前に、私は首を大きく縦に振った。
「じゃあ、今週の土曜日の18時にお前の家で待ち合わせな」
私は再び大きく首を縦に振った。
そして、私は彼の顔が少し笑っているのを見逃さなかった。
それに気づいたのか
「じゃあ、お前の家まで競争な」
そう言うと彼は私を置いて走り出した。
私は笑顔で
「ま、待ってよ~」
彼を追いかけるように走り出した。
彼の背中を追いかけながら私は、
これからたくさんの思い出が作れそう……
そんな気がした夏だった。




