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「四季ちゃん、大好き」





「‥‥四季ちゃん、出ないなぁ‥‥」



生徒会室を出て、まずは教室まで向かった。向かう途中で四季ちゃんに何回か電話したけど、気付いていないのか、それとも私とはもう話しもしたくないのか‥‥理由はどうであれ彼の声を聞くことはなかった。




「もう‥‥四季ちゃんどこ‥‥?」



放課後ということもあって、他の生徒とすれ違うことは少なくなってきた。もしかしてもう帰っちゃったとか?だとしたら下駄箱を見に行った方が‥‥






「よし、そっちに行こ、ぐっ‥‥」



曲がり角の先には誰かがいたらしく、ちょうどぶつかってしまった。痛い‥‥とぶつけた鼻を擦りながら、相手側に謝ろうと顔を上げる。







「ごめんなさい、‥‥って国見くん?」


「今井‥‥か?」



ぶつかった相手--国見夏芽(くにみなつめ)から驚いたように名前を呼ばれる。「久しぶりだね」と返すと「あぁ、久しいな」と言って少し彼の頬が緩んだ。もしかして四季ちゃんがどこにいるか知ってるかな?





「あの、」


「そろそろ帰る時間じゃないのか?迷子なら教室まで送るぞ?」


「いや、迷子ではなく」


「それなら何でこんな時間に?‥‥またアイツから呼び出されたのか?」


「ち、違うよ。呼び出しなんて受けてないよ」



一度彼らとのいざこざのせいで女子の集団に呼び出されたことがあった。その時も助けてくれたのは四季ちゃんで‥‥。そのあと彼らに対して、暫く私と関わらないように厳重注意をしていた。「約束破ったらアンタら‥‥捻り潰すわよ」と。





「違うなら良いが‥‥」


「うん、大丈夫だよ。あれから呼び出しはないし」



クールな一匹狼なんて噂の国見くん。でもクールにはクールだけど、別に喋らないわけでもないし、よく笑う人だ。最近はなんだろ‥‥過保護ってほどではないが、よく心配をされるのだ。




「あ、そうだ。国見くん、四季ちゃん知らない?」


「松山?松山なら‥‥やっぱり何でもない」



彼は一瞬訝しげな表情をするがそれもほんの一瞬。

それに彼女は気付かなかった。




「え、逆に気になるんだけど」


「‥‥知りたいか?」


「うん」



じゃあ、と彼は彼女に近寄り‥‥静かに耳打ちする。





「教える代わりに---‥‥‥‥、」




彼の願いを聞き終わり、「そんなことでいいの?」と思わず聞き返してしまった。私は別にいいんだけど、ね。でも彼は「あぁ、そんなことでいい」と満足そうに笑っていた。




「じゃあ、四季ちゃんについて、」


「その必要はない」


「え、」



どういうこと、と見上げた先で笑っている国見くんの口が動く。




「ほらな‥‥?それって、っ」



---グイ、と腕を引かれそのまま後ろに倒れそうになる。しかし倒れることはなく、温かい"なにか”にすっぽりと包まれた。


誰、と私は顔をあげる。









「--‥‥ユミに何してんだよ」


「四季ちゃん‥‥?」



会いたかった彼が、そこにいた。





*********







「私、ずっーと探してたんだよ?」



場所は変わり、いつもの屋上。けれどいつもと違うのは隅っこじゃないのと‥‥





「悪かったわ、って言ってるじゃない」


四季ちゃんがコンクリートの上に正座をしていること。





「まさか四季ちゃんが私のストーカーしてるなんて‥‥」


「なっ‥‥あれは探していたユミをたまたま見つけて、」


「ストーカーした、のね?」


「違うってば!あとを追ったのは認めるわ。でも声をかけようにも、かけたらかけたでアンタに逃げられるとおもって声もかけられなかったの‥‥」



そうしたらアンタはあのタチ悪い男に捕まるし、と眉間にシワを寄せている。もしかしてタチ悪い男って‥‥国見くんのこと?




「あの男‥‥目が合ったのにも関わらず知らない顔してユミに近付いたのよ」


「え、じゃあ、国見くんは四季ちゃんに気 付いてたんだ」


「最初から気付いていたと思うわ」



ほんと解せない、と彼はぷんぷんしている。そっか、最初から国見くんは気付いてたんだ‥‥だからあんな気になる言い方を‥‥。






「‥‥というか、何でアンタまで正座してんの?」


「え?あ‥‥これは、‥‥ね」



そう私も彼と向かいあって正座をしている。まさか四季ちゃんからそんな話を振られるとは思わず少し口ごもってしまった。





「私も、反省」


「反省?」


「うん‥‥最近、四季ちゃんのこと避けちゃったから‥‥」


「!アンタ‥‥それは強引に迫った私がわる、」


「違う!!‥‥ちが、うの‥‥」



握った手にもう一度力をこめた。言いたいことはたくさんあるはずなのに出てこなくて、時間だけがただ過ぎていく。





「‥‥握りすぎ、ほら‥‥血が出ちゃうでしょう」


「あっ‥‥」



握っていた手を優しく解かれる。理由も言わず避けていた私の方が悪いのに、四季ちゃんはそれでも「痛くない?」と優しく声を掛けてくれる。



あぁ、もう‥‥









「す、き‥‥」


「っ、」



私の手を優しく握っていた彼の手がピクリと動いた。






「四季ちゃんのことは、好き‥‥大好き‥‥だけどそれが友達としてなのか、恋愛感情としてなのか私にはまだ分からなくて‥‥」




でもね、と彼を真っ直ぐ見て言葉を続けた。





「四季ちゃんがいなかった毎日は寂しかった。それにね四季ちゃんのことを考えるとドキドキするというか‥‥」



凛子に「恋したんでしょ」と言われ、正直戸惑う気持ちの方が大きかった。でもその相手の顔を何度浮かべようとしても、





「四季ちゃんのことしか、頭に浮かんでこなかった。いつも隣にいてくれた四季ちゃん。泣いた時も笑った時も‥‥隣にいてくれたのは四季ちゃんだった」





ねぇ、四季ちゃん。私ね、四季ちゃんが思っている以上に四季ちゃんのこと大好きなんだよ。


素直に言うって意外と難しいけど、これが私の最上級。









「四季ちゃん、大好き。‥‥私を四季ちゃんの彼女にしてください」




言葉が言い終わるのと同時に彼に抱きしめられる。


彼からの無言の抱擁は暫く続き、「四季ちゃん?」とおそるおそる見上げた。












「--‥‥もちろん、喜んで」





夕陽が私達を照らすなか、彼からの甘い口付けに私は身を任せた--‥‥





(終)





一旦ここで終わりになります。

皆様ありがとうございました!


後日番外編を更新予定ですので、良かったらどうぞ‥‥!

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