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昨日の彼、今日の彼(後)



"いいよ、俺がどれだけアンタのことを好きか分からせてあげるから”




あの日からというもの、四季ちゃんは‥‥‥‥、











「‥‥ほら、口開けなさいって」


「っ、や、ヤダ!」


「もう‥‥」


「(あ、諦めた)‥‥んぐっ」



四季ちゃんが作ったというマカロンを口に押し付けられた。もぐもぐもぐもぐ‥‥うまい。美味だ。何個でも食べられそう。




「四季ちゃんはダイエットの敵だね」


「そんなこと言いながらも2個目を食べようとしているのはどこの誰かしら」


「うっ‥‥」



だって美味しんだもの。けれど「だーめ」と四季ちゃんに2個目のマカロンを取り上げられる。さっきまで食べろって言ってたのはどこの誰だ。






「四季ちゃ、」


「だめ、"俺”が食べさせたいから」



ほら、あーん‥‥して?


まるで恋人に言うように、甘い声で彼は誘惑してくる。











「っ、くしゅん‥‥」


「ユミ、寒いの?」


「んーちょっと、‥‥ん?」


「ごめんね、気づかなくて‥‥それ着てなさい」



四季ちゃんが自分のブレザーを脱ぐと、そのまま私の肩にかけてくれた。え、ちょっと四季ちゃんが風邪引いちゃうじゃん。




「い、いいよ!四季ちゃんが風邪引く‥‥」


「アンタに風邪引かれるより全然いい」



それに、と彼は言葉を続ける。




「俺の、っていうシルシだから」



大人しく着てて、と頭を優しく撫でられた。


ほら、また、そうやって甘やかそうとする。













----何だかもどかしい距離に、慣れない彼の甘い態度に、はっきりしない自分の気持ちに‥‥どうしていいのか分からず、私は少しずつ彼と距離を置くようになった。




**********







「お前ら‥‥本当に付き合ってないのか?」


「世の中不思議だね」




私と四季ちゃんのことをほんの少し掻い摘んで彼らに話した。


向かい側に座っている関会長は信じられないとばかりに目をパチパチさせてるし、その隣に座る春宮君は優雅に紅茶を飲んでいるし、





「ほーんと、地獄に落としたくなっちゃうなぁ」


「‥‥氷雨?」




後ろから不穏な言葉が聞こえ、振り向けばそこには笑みを浮かべた氷雨。天使の顔から「地獄に落とす」なんて聞きたくないよ。






「何だか楽しそうな話をしていたから、来ちゃった」




え、地獄からですか。なんて言えない。言いそうになった言葉を何とか留めることに私は成功する。


そんな葛藤など知らず、氷雨は空いている私の隣に座ると「でも、」とこちらに目線を向けてきた。





「もしさぁ優美が地獄に落ちるなら僕も一緒に落ちるよ?」


そしたらずっーと一緒だね、と無邪気に笑う氷雨。ほら、氷雨。関会長の目が明らかに引いているからね。関会長、女関係にはだらしない最低男だけど他は意外と常識人なんだから。多分。そんな会長に対して「冬城君って面白い子だね」って微笑んでいる春宮君は強い。氷雨を"面白い”の一言で片付けたよ。






「‥‥それで、今井さんはいつになったら彼に告白の返事をするの?」


「っ、は‥‥春宮君、?」



持ち上げた紅茶の入ったカップを落としそうになり、ゆっくりとテーブルの上へと戻した。顔を上げて向き合った彼の表情からは意図が読めない。相変わらず掴みづらい人だと思う。






「その様子からだと返事はしてないんでしょ?‥‥後悔する前に、早く自分の気持ち素直に伝えておいで」


「!‥‥自分の、気持ち‥‥‥」


「うん。自分の気持ちだよ。誰でもない、今井さんの気持ち。‥‥それにほら、彼ってば今まで我慢していた分、爆発した時にすごいと思うんだよね」


「爆発‥‥?」



何のこと、と春宮君に聞き返した。でも私に返ってきたのは苦笑と「まぁ、その時はその時だよね」という言葉だった。「教えてやろうか」と口角を上げて笑う関会長に、「もちろん冗談ですよねぇ、会長」と氷雨も笑っていた。氷雨の目は据わっていたけど。









「さぁ、今度はキミが頑張る番だよ」


「フられたら、慰めるくらいしてやる」


「他の男なんて許さない、‥‥けど結局は優美が幸せになるなら許してあげる」





「っ、ありがと、う‥‥」




3人の言葉に背中を押され、私は立ち上がった。


---最初は私の平和な学校生活をよくも壊して、なんて思っていたけど。あぁ、もう、最後の最後で逆転されるとは思っていなかった。








「いってきます‥‥!」



---‥‥私の想いは、最初から一つだけだ。





次回、最終話!‥‥た、多分。


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