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プロローグ「勝利を齎す者」

皆様お久しぶりです。

連続27話で投稿させていただきます。

よろしければ感想をお聞かせください。

よろしくお願いいたします。

 プロローグ「勝利を齎す者」



 突然で申し訳ないが、オレは女性の脚が大好きだ。

 女性の脚には男には無い、魔性とも言うべき魅力を感じるのはオレだけであろうか?

 いや、そんなハズはない。

 みんながみんな、そう思っているに違いない。

 絶対にそうだ。


 女性の脚の魅力を測るポイントとしては三つ。

 一つは、脚の長さ。

 二つ目に、脚の細さ。

 三つ目に、肌の艶。


 どれか一つでも良ければ良いと言うわけではない。

 上記三つが渾然一体となることで、一つの芸術品がこの世に生まれる。


 セレナの脚を見てほしい。

 オレ達の製作したCB-HF1300ブリッツフォアのバイクに跨る時、セレナの長くて細くて艶やかな脚がシートの上で翻り、その仕草も含めて永久に保存したくなる。

 セレナは、オレがあんまりにもジロジロ見るものだから、下着を一生懸命見ようとしていたと思っていたようだ。

 思えば失礼ヤツだ。

 大体、セレナがスカートをはいたのは入学式だけで、あとはショートパンツ式の制服だろうが。

 まあ、セレナがどう思おうが、この際は関係ない。

 話題の中心は、長くて細くて艶やかな女性の脚だ。


「もう、そのくらいにしておけ、変態」

 ヒラムネは長細い目でオレをジロリと見ると、再び手元の電磁式空力計算に戻った。

「ヒラムネはセレナの脚が美しいと思わないのか? あ、三行目の式、間違ってるから」

「なんで学園の朝の教室で女の脚について熱く語り合わなければならないんだ! せめて部室とか他に人がいないところで、少なくても俺がいないところでやれよ、このバカ!」


 ヒラムネは話題についてか、計算式の誤りを指摘されたせいかどうか不明だが、顔を真っ赤にしてオレに怒鳴りつけ、また一緒に聞いていた女性陣からも不評が相次いだ。


「アルスがセレナの脚をずっっっっと見ているのは知っているけど、私とかヨウコの脚については何もないのかしら?」

「そんなことないさ。アーリアもヨウコも綺麗な脚だ。オレが毎日マッサージしてケアすれば、二ヶ月くらいで美脚間違いなしだ」

「うん、ありがとう。私の脚に触ったら、即通報するからヨロシクね」

「変態、私の脚を見たらグーでパンチよ」

 アーリアは爽やかなほどニッコリ笑い、隣のヨウコは性犯罪者予備軍を見るかのような目をオレに向けてくる。


「誤解しないでほしいのは、別に性的な意味でとらえているんじゃないぞ」

「嘘だな」

「嘘ね」

「嘘つくな、変態」

「いや、ホントだって。オレは女性の二本の脚には芸術品のような様式美と、未来に向かって力強く歩むための機能美の二つが備わっているように思えるんだ」

「「「…………………………」」」

「男はどんなに頑張っても、女性が生来持つ脚の美しさには敵わないのは、女性より流れに逆らって前に進む力が弱いからというのが、オレの出した結論だ……って、聞いてよ!」


 すでに三人はそれぞれの作業か会話に戻っており、オレの美脚論はスルーされていた。


「おっはよー、みんな!」

 その時、いつもの元気さで教室に入ってきたのは、話題の美脚主であるセレナだ。

「おはよ、セレナ」

「おはよう、アルス。今日も私の脚を早速チェックしたね」

 セレナはアルスの視線が、自慢の胸よりも先に脚に向かうのを知っている。

 アルスが見やすいように、右足を上げてみせた。


 セレナの身長は平均よりも高い一七〇センチ。

 脚の長さは股下から八十二センチだから、モデル並に長い。

 脚はスラッとしていて足首もくびれていて、バランスも良い。

 肌は年中ナマ脚を出しているにもかかわらず白く透き通るようであり、水を弾くほどに艶やかだ。

 恐らく、これだけの脚を持つ女性は一万人に一人もいないであろう。

 セレナの容貌は、平均以上のものがあると思う。

 長い栗色の髪に、クリっとした蒼い瞳。

 顔全体に愛嬌が溢れていて、たまに吐く毒も思わず許したくなる。

 同じ女子達からも、さして批判的な意見はない。

 まあ、オレがそばにくっついているおかげだ。


「今日もセレナの足は綺麗だな。毎日見たって飽きないぞ」

「そお? ありがと!」


「何? この会話。なんかキモイんだけど。さっきからセレナの脚を絶賛していて、本気でウザキモイんですけど!」

 ヨウコの毒舌はいつもの事だ。

「アルス、キミの脚フェチは私以外には言わない方がいいわよ」

「どうもそうみたいだ。オレが判り易く実例も交えて説明したのになぁ。女の子にこの話をすると、セクハラ扱いされて、ヘタしたら殺されそうだ」

 黙って聞いていたアーリアは何か言いたげであったが、それよりも早くセレナが口を開いた。

「違うでしょ、私に殺されるから」

 この時のセレナのクリッとした蒼い瞳は、笑いの粒子を一ミクロンも含まない。



 セレナと恋人関係になって三ヶ月。

 高校生活も二年目を迎えた四月のひとコマ。

 窓の外には桜が満開であった。

 季節が巡り、四月の桜が新しい時を告げていた。


 そう、桜だ。

 オレは桜を見ると、無心ではいられない。


 夢。

 オレがほぼ毎日と言っていいほど見ている夢。

 桜の花びらが舞い散る。

 そこが何処かもわからない、どこまでも続く桜並木道。

 風と共に舞う何百万もの桜の花びら。

 そして、その先にいる黒髪の女性。

 それはいつもの夢。

 夢の終わりはいつも同じ。

 声を掛けられず、見つめる先にいる女性が僅かに振り返る。

 その瞳の色は桜色。


 夢に現れる頻度が増えれば、夢の内容も覚えられる。

 しかし、桜色の瞳をした女性の顔は、長い黒髪で隠れて一度も見えなかった。

 何度も思い返すが、どうしても記憶にない。

 夢であれば、過去の記憶の一部が切り貼りされているはずなのに。

 桜並木道にしても同様だ。

 自分の住む「大陸都市ラーノス」に、延々と続く桜並木道は存在しないのに。

 ただ、夢は美しかった。

 舞い散る桜の中に、恐らく美人であろう桜色の瞳をした女性。

 その女性ひとの顔を見ようとすると、何処からともなく聴こえてくる潮騒。


 オレの名前はアルス・ミカミ・フォーリナー、十六歳の高校二年男子。

 今朝の目覚めも、桜色の瞳に見送られて現実世界に帰ってきた。



 そして、三十八時間後。

 オレは夢の中にいた。

 それは『現実』という名の、終わらない悪夢に踏み込んでいた。


「粉砕しろ! シグルーン《スケッギョルト》! 発射ァ!」

「忍法・土遁《昇流障壁》!」

「無垢なる牙よ、あらゆる脅威を噛み砕け! 召喚術《マルムーク》!」

「我が魔剣『心炎』よ、闘気を開放しろ!」


 オレが済む都市の名は『ラーノス』。


 観光案内のキャッチフレーズは“雄大なる大陸都市ラーノス”。

 無数の浮遊島と空飛ぶ海『天空海』を従えて空を周遊する、世界四大都市の一つにして世界最強の都市国家。


 二ヶ月前に再開発区に指定された「旧晴海」エリア。

 天空海を望み、高層ビルや大規模イベント施設がある経済特区であった。

 ジャンルを問わず多くのイベントが開催され、夏と冬には全世界からオタクが集まるほどの祭典も開催される。

 かく言うオレも売り子の手伝いで参加していた。

 どこよりも身近に感じていた旧晴海が、いまや別世界。

 殺意と暴威が当たり前のように席巻し、当たり前のように力無き者を刈り取る現実は、オレにとっては狂気の沙汰。


「どうした! ここでの沈黙は一カルマンの価値もないぞ!」


 価値か。

 そうだろうとも。

 オレには価値がない。

 いや、自分の『価値』が分からない。


「ここは何をしても許されるって事は、どんな価値観をひけらかしても許されるって事だ。だから見せてくれ。お前だけの『勝利の福音(シグルーン)』を!」


「言われるまでもない! すぐに見せてやる。ただし一度だけだ。オレのシグルーンは、お前の命を奪う程の価値がある!」

「お前に出来るか!?」


「出来るさ! オレもお前達と同じ“勝利を齎す者(シグリヴァ)”だ! だから――」



 以上がオレの、人生初めての戦闘体験。


 オレにとっての“勝利を齎す者”。

 それは、颯爽とバイクに跨るセレナであり、

 気の無い顔をしつつも親身になってくれるカディであり、

 本質を衝く一言で奮い立たせてくれるカノンだった。


 三人ともオレが愛した女性ひと達であり、もうどれだけ時間が過ぎたか覚えていないが、ずっと忘れない。


 これは物語。

 過去から未来に託された遺産を相続した者達の物語。


「誰が相手でも、受けて立つ!」


 それは過去むかし現在いまも、きっと未来あしたも変わらない。

 オレが、オレ達がどれだけ世界を変えてしまっても。



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