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静寂のキノトロープス

 キノコ……それは、目に見える姿そのものが一個の生物なのではない。

 厳密に言えばそれは菌のカラダの一部なのだ。

 朽ちはてた樹木や生き物の死骸を根城に広がる、大いなる母菌の上に立ち上がり、自らの分身である胞子を飛ばしテリトリーを広げようとする。

 それが、キノコなのである。


 『彼ら』……いいや、いわば子供である胞子を飛ばすのだから、ここでは『彼女たち』と言おう。

 彼女たちは、この惑星の生命の起源と共にこの地上に在ったわけではない。

 おおよそ三億年前、巨大な植物が地上を覆い尽くした時代にどこからから現れたのだ。

 それが『生存のため』の進化であったのか、ドコか別世界からやってきたのか、それは定かではない。しかし、彼女たちはこの惑星の生態系の一翼を担い、その地位を確かなものとしていった。そうして数億年をかけ、この地上にくまなく増殖し、繁栄していった。

 それが近年、ほんの数百年という短い間に、彼女たちのテリトリーである森が急速に減少している。


 この物語は、そんな私達の傍らに今、どこにでもにあるような風景を舞台にしてはじまる。他者を蹴落としてでも生き残り、種の繁栄を求めてやまない『生命』のせめぎ合いはどんな未来を導くのであろうか。


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