十二章 歌蓮・一
倫理観のない世界の姉弟です。
氷蓮の性癖が気持ち悪いと思いますのでご注意を。
歌蓮が十八歳の時に氷蓮は産まれました。
弱々しい赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
「次期皇帝陛下の御誕生です!」
侍女がそう告げながら部屋を出て来た。
私は産後でばたばたしている部屋へそっと忍び込んだ。
母上はぐったりとして、産婆達の処置を受けている。
赤ちゃんは……いた!
産婆の一人が赤ちゃんを大事に抱きながら、産湯に入れていた。
小走りで近づこうとしたけど、年嵩の侍女に腕を掴まれ止められた。
「歌蓮様、まだ御子様に近づいてはなりません。産まれたての赤子はとてもか弱いのです。面会はもう暫くお待ち下さい」
「そんな、ずるい!」
そんな理由でなんか納得できないし、ずるい。
私はあの子の姉なのよ。産まれて来るのをずっとずっとずっと楽しみにしていたのに。
「駄目なものは駄目なのです。さあ、お部屋にお戻り下さい」
「嫌っ! ずるい!」
私は侍女に引っぱられながら、部屋の外に追い出され、部屋の警護の者にも私を部屋に入れるなと告げ、侍女は部屋へ戻って行った。
「意地悪!」
私はそれだけを大声で言い捨てると自室へ戻った。自分の主張が通らないのがわかっているから。
それから一週間後、漸く氷蓮と面会できた、が。
話に聞いていた通り元気はなく、落ち着きなくむずがっていた。
乳母の乳も飲まず、母上の乳も飲まない。正確には多少飲むけど、生命維持、最低限の量しか飲まない様で、成長も良くない。
そんな状態ならそうでしょうね。でも何でかしら?
それでも私はこの小さな赤ちゃんが、本当に可愛くて仕方なかった。
氷蓮の小さな小さな手をそっと触ると、氷蓮はきゅっと握ってくれた。
そしてにこっと笑ってくれたのだ。
これには側で見守っていた乳母達も驚いていた。
びっくりすることに、氷蓮は今日までにこりとも笑わなかったそうで、皆、初めて氷蓮の笑顔を見たそう。
私はとっても誇らしくて嬉しい気持ちになって、絶対に氷蓮を幸せにしてみせると自分に誓った。
それからというもの、私は時間が空けば氷蓮の世話を積極的にした。
おしめも換えて沐浴もさせて、お乳もあげたわ。
だって乳母や母上からだとあまり飲まなくて、私が抱っこして哺乳瓶から飲ませた方が何故かよく飲むのだもの。本当に可愛いくて仕方がないわ。
ああそれに初めて喋った言葉も、「かぁ」って私の名前を呼ぼうとしてくれて。もう、本当に可愛いくて愛し過ぎてどうすればいいのかわからなくて、とにかく抱きしめてうんと褒めたら、氷蓮は嬉しくてご機嫌な笑顔を見せてくれて、更に愛しさが溢れてもうもう本当に幸せだったわ。
それからも、氷蓮はずっと私の後を追いかけて来て可愛かったわ。
転びそうになりながらも必死に追いかけて来て、私を捕まえると笑顔で「ねーさぁ」と呼んで更にしがみついてきたり。
お昼寝も私が添い寝しないといつまでもぐずって寝なかったりして。
でもそうすると、私の胸を弄って胸を吸い出すのよね。お乳なんて出ないのに、一生懸命吸って、次第に眠って。しかもその寝顔がまた安心しきってて……。もうお乳ではなく、離乳食にし始めたから流石にこれはまずいわねと思ってやめせようとしたけれど、そうすると不安がってすごくぐずり出すし。だから逆に好きなだけ吸わせれば気が済むかなと思って、好きな様にさせてたら徐々に吸うのをやめたから安心したけど。
でもあの頃は今より胸があったのよねぇ。
今の身体も入った頃よりは少し大きくなったけど、でも私の本当の身体の大きさには敵わないし、そこまで成長しない気がするわ。
氷蓮にはちょっと可哀想だけど、こればかりは仕方がないものね。
って、ん……? 胸、が、何か……やっ、これって……んんっ!!
私ははっと目覚め、すぐに胸元を見た。
想像通り、氷蓮が胸を吸いながら揉んでいる。しかも驚くことにまだ眠っているのだ。ここまでしておきながら。
「ほんっとうにこの子は……」
呆れて苦笑してしまう。
柔らかくてあったかくて。触って撫でていると落ち着くし気持ちいいから好きなんだと言ってたけど。
確かに私の身体の時は、胸は大きかったし、揉んでも触ってても気持ちよかったでしょうけど、今の大きさだとねぇ、ちょっと氷蓮が可哀想になっちゃうわ。
まだ私の胸を吸い、弄る氷蓮をじっと見ていたけど、疲れたのか安心したのかわからないけど、吸うのも弄るのも止まった。
寝顔はやっぱり安心しきって緩んでいる。
赤ちゃんの頃から変わらないわね、こういう所は。
そういえば、随分懐かしい夢をみたわね。
眠るつもりはなかったんだけど、氷蓮につられたのかしらね。
私は氷蓮の頭を優しく撫でると、そっと寝台を下りた。
はだけた胸元を直し、氷蓮の方を向く。
「私は外で洗濯しているから安心してね」
そう言って私は明るい陽射し溢れる外へと、元気良く我が家を出た。




