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十二章 氷蓮・一

痛い?

熱い?

痒い?


肌が変だ。

肌だけではない、身体が暑い。

今まで感じたことの無い暑さが身体を蝕む。

全身が汗に塗れているようで、じっとりとした湿り気が気持ち悪い。

ああ気持ち悪い、気持ち悪い……!!

全身を襲う不快感に耐えきれず、氷蓮が目を覚ます。


「ぅあっ!!」


覚めると肌から汗が流れ落ち、同時に痛む肌に目を向ける。

乱れた衣装からのぞく白い肌には、見たこともない爛れ方をした醜い右腕があった。

直視できず思わず袖を伸ばして肌を隠すが、逆に袖が傷に触れて余計に痛みが増した。だがそんな痛みよりも大事なことがあった。


「歌蓮!」


氷蓮はすぐに辺りを見回すと、少し離れた暗い場所に歌蓮は倒れていた。


「歌蓮!」


氷蓮は立ち上がろうとしたが、猛烈な倦怠感に襲われ立ち上がれなかった。

「くっ……!」

それならばと座りながら移動して歌蓮の元へと移動した。

静欒の皇帝ともあろう自分がまさかこんな無様な移動をするとは思いもしなかったが、今はどうでもいい。

「歌蓮……」

仰向けに倒れている歌蓮をざっと見る。

口元に手を翳すと規則正しく息が触れる。目立った外傷もなく、ただ気を失っているだけの様だ。

ほっ、と一息吐くとまた腕にできた傷の痛みに気を取られた。ズキズキと疼く。

他に痛む所はないので傷はどうやら両腕にだけ出できている様だ。

両腕の傷と関係があるのかはわからないが、先程から何となくではあるが気分も悪い。

それにここは一体——。

氷蓮は記憶を辿る。

そう、あの男が聖なる大木に剣を放ち、避けようのない危険を感じた私は歌蓮の元に戻り、歌蓮を引き寄せ力の限り抱き締めた——。

それと同時に大木と大気が弾け飛び、世界が壊れ消え始めた。

そこで意識は途絶え、目を覚ましたら見知らぬこの場にいた。

改めて氷蓮は辺りを見回した。

地面は柔らかな土と瑞々しい草が生えていて、むせかえるほどの緑の匂いで溢れている。

そして大きな木が所狭しという風に乱立しているせいで、夜闇程ではないが辺りは暗い。森の中だろうか。

だが、その暗闇の中で所々が明るい場所がある。木々の間から漏れ出す光。先程まで氷蓮がいたところにも明るい光がさしている。

その光は氷蓮の見たことがないものだった。

蝋燭の灯でもない、術で作る光の明かりとも違う。

もしかしてこれは——。


「陽光だよ」


はっと顔を上げるとそこにはあの男——、突然現れ静欒を壊した男、春詠が微笑を浮かべ静かに氷蓮を見下ろしていた。

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