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七章 商人・三

皓緋こうひ爛熯らんぜんは円卓に移動し、商談を始めた。

二人が向かい合わせで座り、彩音は皓緋の左側に座らせられた。

三兄弟は皓緋の後に、愛華は彩音の後に控えている。


「で。お前は何が欲しいんだ?」


両腕を組み、椅子に凭れかかり爛熯が問う。

「術が欲しい。もしくは術に精通した者でも構わない。用意出来るか?」

「ああ、出来るぜ。だが、術の用意の場合は程度による。高度な物なら術師の紹介だな」

「その判別は?」

「専属のアドバイザーがいるんでな。そいつらに判別させる」

「そうか。じゃあ用意してくれ」

皓緋は悩む事もなく爛熯に依頼する。

「OK。だがお前の場合、間違いなく高度な術だろうな。その場合、お前が術師に直接交渉する事になる。いいか?」

「ああ」

「商談が成立した場合、俺には仲介料、術の支払いは術師にしてくれ」

「わかった。だがもし紹介された術師が俺の要求を満たせない場合、別の術師を紹介してくれるんだろうな」

「ああ。客の要望には応えるぜ」

「ではいつそのアドバイザーを連れて来れるんだ?」

「せっかちだな。ちょっと待て」

爛熯は右耳に付けているピアスを軽く弾いた。

黒と燻んだ青と白、三つの石が連なったピアスで、揺れると鈍い光が煌いた。


「お前ら、仕事だ。道、繋げるからすぐに来い!」


皓緋はびっくりとした表情を見せた。

いや、皓緋だけではなく爛熯以外の全員が。

いきなり爛熯がこの場にいる者以外に向けて(?)会話し始めたのだ。

それはびっくりとするだろう。

「あ? 手が離せないだ? なら別にお前らに回さなくてもいいんだぜ? せっかくの上客だ。後で後悔しても知らねーぜ」

爛熯は周りの視線など気にもせずに会話を続ける。

一希かずき? ああ、構わねぇ、一緒に連れて来い。ああ、繋げるからさっさと来い!」

会話が終わったのか、爛熯は席を立つと円卓から少し離れた場所で空間に手を翳し、皓緋の方に顔だけ向ける。

「ご希望通り、術師を呼んでやったぜ。もう少しで来る」

「ああ。しかし、いきなり一人で話し出すから驚いたぞ」

「ハハッ! おかしくなったと思ったか?」

「いや、お前がおかしいのは気にしていないが」

爛熯は不敵な態度を取る皓緋に一瞬面喰らった様だが、すぐにニヤリと笑う。

「ハッ! 言うねぇ。ま、イイさ。当たってるからな。……やっぱ、お前とはイイ付き合いが出来そうだぜ」

皓緋が少し眉を顰め嫌そうな表情をした時、爛熯が手を翳した空間がぐにゃりと歪んだと同時に、男性二人と幼い女の子が出て来た。

「一希、久しぶりだな! 逢いたかったぜ!」

そう言うと爛熯は男性二人には目もくれず、女の子を抱き上げ頬にキスをする。

女の子も嬉しそうに爛熯に頬ずりし、甘える。


「おい」


皓緋が爛熯を呼ぶ。

「お楽しみ中のところ悪いが、さっさと紹介してくれないか」

爛熯がじろっと皓緋を睨む。

「お前、いい度胸してんな。俺とこいつの逢瀬の邪魔するなんてな」

爛熯が皓緋にずいっと近寄って威圧する、が。

「今回は仕事だからな。特別に見逃してやるぜ」

そう言ってニヤッとすると、二人の男達の側に行き紹介を始めた。

「こいつらが術師。で、俺の弟達だ。遊焔ゆうえん燥焔そうえん

紹介された二人は双子だった。

彩音達のように二卵性ではなく一卵性だ。容姿から体型までそっくりだ。特に目を惹くのが瞳の色だ。

二人ともオッドアイで、右が暗い紫で左が暗い紅。

身長は爛熯よりは低いが、それでも高い。180cmぐらいはありそうだ。髪の色は爛熯よりやや明るめの栗色だ。

年齢は十八、九ぐらいだろうか。彩音より少し上ぐらいな感じだ。

また、衣装は爛熯とは違い和服風な物だ。

和服よりは機能性が高く動きやすそうで、衣装の袖や帯の柄などはオリエンタルな感じの装飾が施されている。


「どーも。遊焔です」

「燥焔だ」


二人ともにっこりと笑み、愛想がよく人当たりの良さそうな感じだ。

だが、何となくだがどこか近寄り難い雰囲気を彩音は感じた。

「早速だが、俺の依頼は創った術の精査だ。ある術を創ったが、使うはずの者が使えなくなったので、別の者を使用者にしたい。だが、その者は術を使う素養がない。だから術を再構築しなければならないが、俺一人では厳しい」

「だから俺達の力を借りたい、と」

遊焔が皓緋の言を継ぐ。

「そういうことだ」

「受けるかどうかは術を見てから決めるから、その術、見せてくれない?」

遊焔が続けて話す。

「わかった」

皓緋が陽織に術の構築式をまとめた冊子を持って来させると、それを遊焔に渡す。

「じゃ、拝見」

そう言うとざっと目を通すと燥焔に渡す。

受けとると、燥焔も同じようにざっと目を通す。

今度はそれを二人で持ち、空いている手を冊子に翳す。

数分程そうしていただろうか。

二人が冊子から手を離し、冊子を皓緋に返す。

「いいぜ。依頼を受ける。久々にやり甲斐ありそうなヤツで燃えるぜ!」

遊焔が目を輝かせる。

「確かに。この内容だと俺達が一から創るより、アドバイザーとして協力した方がこちらも得る物が多そうだ。まあ、俺達が一から創ってもいいが、時間も対価もかかるな。どうする?」

燥焔が皓緋に問う。

「時間はあまりかけたくない」

「わかった。じゃあ、共同研究、俺達はアドバイザーって事でいい?」

「ああ、そうしてくれ」

「わかった。じゃあ対価だけど」

「ああ、何を払えばいい?」

「多分ラン兄に払った物と同じ物になると思う。今の所は。正確な対価は仕事が終わらないとわからない。どれ程の労力がかかるか、やらないと俺達もわからない。だから、物凄く高くつく可能性もある。あ、一括が無理なら分割でもOKだから。どうする?」

「構わない、依頼する」

皓緋は即答した。

「商談成立。じゃ、手、どっちか出して」

皓緋が言われた通り左手を出すと、その手に重ねるように遊焔と燥焔が手を重ねた。

一瞬、手の甲が熱くなる。

遊焔と燥焔が手を戻し、手の甲が露わになると、そこにはおそらく炎に絡む植物を描いた紋章があった。

爛熯のときと同じだ。

「それが契約書。報酬を受け取るまでそれは消えない。害はないよ。ちゃんと払えば、ね」

燥焔がニヤリと含みのある笑みを浮かべる。

気になったのか、陽織が燥焔に尋ねる。

「もし、だけど。払わなかったりしたらどうなるの?」

「知りたいか?」

燥焔がよくぞ訊いてくれたと言わんばかりの笑みを浮かべる。

「そうだな。人によって違うが、まずは本人に相応に苦しんでもらう。当然だよね、何の対価もなく人をタダ働きさせたんだから。それでも効果がない場合は、そいつの恋人や身内に苦しんでもらう。いわゆるとっばちりってやつ」

燥焔は嬉喜として話す。

一方、陽織は逆に顔色が悪くなっていく。

これ以上聞いたら絶対、精神衛生上よくないことになると思い「あ、もう十分わかりましたので、これ以上は結構です」と言って話を強引に打ち切った。

「え? 遠慮なんてしなくていいのに。これからがいいところなのにさ」

燥焔はとてもがっかりした表情で不満そうだ。

そんな二人は放置し、爛熯は皓緋と話をする。

「あいつらとの契約は済んだみたいだな」

「ああ」

「じゃ、仲介料を貰うぜと、普段なら言うとこなんだが、お前とは長い付き合いになりそうな気がするんでな。今回はチャラにしとくぜ」

「それはどーも」

話が終わると爛熯は双子に声をかける。

「おい、お前ら! 俺達はもう帰るぜ。後はもういいな」

双子が同時に爛熯の方を向く。

「え。帰るってどこに?」

探る様に遊焔が聞き返す。

「決まってんだろ。お前らの家だよ」

「はっ!? 何、何で俺達の家なのさ!」

「お前らがいないんだ。誰がこいつの面倒みるんだよ」

なぁ? と言いながら腕に抱えている一希に頬ずりしながら答える。

「や、そりゃそうだけどさ。だからって俺達の家じゃなくて自分の家に帰ればいいじゃんよ!」

「あー、俺の家ねー。やー、しばらく帰ってねぇからさ。一希も今の家がいいよなぁ?」

爛熯は一希の目を見て、なぁ? と同意を得る様に笑いかける。

一希はにこにこと愛らしく笑みながら、こてんと爛熯の肩に頭を乗せる。

「ほら、一希もお前らの家がいいってさ。ま、細けぇことはいーじゃねぇか。てことで、じゃな!」

そういうが早いか、爛熯は女の子と一緒に目の前で消えた。

「ラン兄!」

「あのやろっ、逃げやがった! ソウ、早く帰ってヤバそうなの隠して!」

「わかった、後は頼む!」

「オッケー」

そう言うと燥焔は爛熯の後を追って消えた。

後に残った遊焔が振り向く。

「やー、慌ただしくてゴメンね☆ で、早速だけど、仕事場を用意して欲しいんだよね。出来ればちょっと人気がないところに」

商人兄弟のやりとりに一同気をとられていたが、皓緋は瞬時に頭を切り替え答える。

「ああ、それなら俺の研究室を使えばいい。城の地下だから広さもあるし、ここにいるやつらしか研究室には入れない」

「ホント? じゃ、早速案内してよ!」

「構わないが、もう一人はいいのか?」

「ソウ? 大丈夫。ソウは俺の居場所はわかるから、その内来るよ」

遊焔はそう答えると、さあさあ早く行こうと皓緋を急かす。出かける事が楽しみで待ちきれない子供の様だ。

「わかった。彩音、来い」

少し離れた場所にいる彩音を呼ぶと、皓緋は遊焔を研究室に案内するために部屋を後にした。

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