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七章 商人・一

ようやく全員席に着き、話を始められるかと思ったが、王様のご機嫌が悪いため雰囲気が刺々しい。

先程、春詠に注意されたのが気に入らないからだ。

しかも自分の右隣りにいるので、余計気に入らないし、左隣りには朱艶がいる。

これで冷静になれというのだから、さらに苛立ちをつのらせ機嫌が悪くなる。

せめて彩音か陽織が隣にいれば、落ち着けるか、八つ当たりをして苛立ちを発散させられ機嫌もそこそこ良くはなるだろうが、現状では無理だろう。

彩音の方は、表面上は落ち着いた様に見える。

彩音はわりと切替が早いタイプだ。

そのため、先程の出来事で皓緋に怒っていても、その事は考えず、今やらなければいけないことに集中しようとしている。

とはいえ、自分の気分を害した人物が目の前、正面の席に座しているので、多少仏頂面になるのは仕方がない。

円卓なので、皓緋から離れた席にとなると正面になってしまう。

皓緋の左側から、朱艶、愛華、彩音、陽織、春詠の並びで座している。

彩音は、視線は卓の方に落として真正面は見ないようにしている。

そうでないと、冷静でいられなくなりそうだからだ。

それもまた皓緋の苛立ちを助長させ、場はさらに険悪さを増す。

朱艶は溜息を一つつくと、皓緋の機嫌がなおるのを待つよりは自分が仕切った方が早いと見極め、話しを切り出した。

「では、皆集まったので話を始める。まず、今後のことだ。私達の目的は、二つの静欒さいらんを再び一つにすること。それには彼女達、彩音さんと緋月様の協力が必要になる」

朱艶は言葉を切り、全員の顔を見回す。

全員、相違ないという表情だ。

それを確認した後、また話を続ける。

「そのためには術を準備しなければならない。それは陛下にお任せします。私達はそのサポートと、国事のほぼ一切を担当すること。これで進めますが異論のある者はいませんね?」

朱艶の問い掛けに皆同意する。

「では次。陛下、お願いします」

皓緋はむすっとしながらも、口を開いて話を引き継いだ。

「朱艶の言った通りで事を進める。だが、彩音が協力する対価として、こちらは向こうに囚われている彩音の弟の奪還を約束した。その事も忘れるな」

皓緋の言葉に一同は頷き、彩音は顔を上げると皓緋と目が合った。

そこには拗ねて機嫌の悪い皓緋ではなく、皆を守り統率する王様がいた。

「皆さん、ありがとうございます」

そんな皓緋の顔を見たら、彩音も自然とお礼の言葉を口にしていた。

「どういたしまして。一緒に頑張ろうね、彩音ちゃん」

陽織がにこりと笑って声をかけた。

他の皆も優しく頷いていた。

「では次。春詠達にも話したが、今回異界の商人と取引きを行った。その商人は使えると俺は判断したが、お前達も実際に商人がどういう奴か見てもらいたいと思ってこの場を設けた。まあ、なかなかクセのある奴だな」

皓緋はククっと楽しそうに笑い、陽織は少しげんなりとした表情になった。

彩音はその時、緋月の中に閉じ込められていたので会話はなんとなく聞こえたが顔は見ていない。皓緋の言う通り、相当クセのありそうな人だったなという印象は受けていた。

「さて。実際に見た方が早いからな。呼び出してみるか」

皓緋はエンブレムを付けられた左手の上に右手を重ね、黙り込む。

しばらく沈黙した時が流れたが、皓緋が右手を左手から離した。

「つながった。もう少しすれば奴が来る」

皓緋はそう言って、脱力して椅子にもたれかかった。

皆も緊張が解け、皓緋と同じ様に脱力した。

「商人さんかぁ。どんな人なのかな。ね、愛華は見たんでしょう、商人さん」

彩音が愛華に話しかける。

「はい。見ましたが、そうですね……、皓緋様の仰る通り個性の強い方という印象は受けましたね」

愛華がその時の事を思い出しながら返事をする。

「ま、もうすぐ本人が見られるんだし、いいじゃない。それにあんまり商人を気にしてると、どこかの誰かさんの機嫌が悪くなるから……」

と、話に入って来た陽織がちらりと左側に視線を向ける。

ああ、と彩音と愛華は納得した様で話を打ち切った。

確かに、彩音の正面にいる人の機嫌がまた悪くなり始めている様だった。

(まったくあの王様は……)

はあ……と、呆れの溜息を彩音がついた時。


「来るぞ」


皓緋が立ち上がり、背後の何もない空間を見つめた。

すると、空間がぐにゃりと歪み、そこから一人の男性が出て来た。


「お、何だ? 出迎えご苦労ってか?」


商人――爛熯らんぜんが、目の前に居並ぶ皓緋達を見ながら、揶揄うような笑みを浮かべた。

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