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七章 砂の都・四

長い通路を抜けてようやく城の大広間に着くと、そこにはすでに到着していた愛華と陽織がいた。

「彩音様!」

愛華は彩音の姿を見ると走り寄って来た。

「愛華」

「到着が遅いから、何かあったのかと心配しましたわ」

愛華は彩音を頭から爪先まで見、何もないことを確認するとほっと胸を撫で下ろす。

「心配かけてごめんね。でも愛華の方こそ大丈夫なの?」

彩音は心配をかけた事を愛華に詫びるが、自分より具合の悪い愛華の方が心配だった。

「私の方は大丈夫です。薬を頂いて、それを塗ったら赤みは落ち着きましたので」

愛華は右袖を捲り、彩音に腕を見せた。

「そうだね、さっきよりは落ち着いたかも。痛くない?」

先程は本当に真っ赤だったが、今は赤みは薄れている。

「大丈夫です。私の方がご心配をおかけしてしまい申し訳ございません」

愛華は心底申し訳無さそうに、また謝った。

「気にしないで、愛華」

彩音は愛華に笑顔で答える。

「愛華さんの体調は、こちらで責任持って見るから安心していいよ、彩音ちゃん」

今度は陽織が彩音を安心させるために声をかけた。

「よろしくお願いします」

彩音はぺこりと陽織に頭を下げた。

「どういたしまして。それにしても彩音ちゃん、大変だったでしょ。どうせ皓緋にあちこち連れ回されて遅くなったんでしょ?」

陽織がそうに決まっているという表情をしながら彩音達に近づいて来た。

「ほう。この俺に向かってよく言った。偉いぞ〜、陽織」

皓緋はにっこりとしつつ、陽織の頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。弟をいじって可愛がる兄の図だ。

「止めろよ! 髪の毛が絡まる!」

陽織が皓緋の手を払いながら後に逃げる。

逃げた先には見知らぬ二人の男性がいた。

「まったく、お前はいつまでたっても学習しないな」

はぁ、と溜息をつきながら、逃げて来た陽織を呆れた目で見る男性。

「なっ! 失礼だぞ、朱艶兄さん。俺はそんなに馬鹿じゃない!」

「そうだよ、朱艶。学習能力がないところも可愛いじゃないか。それも陽織のいいところだよ」

にこにこと人の良さそうな笑みを浮かべながら、戻って来た陽織をかばう男性。

「いや、兄さん。それはいいところとは言いません」

「春兄、それ、フォローになってないから……」

どうやら三人は兄弟らしい。

彩音はそんな三人のやりとりをぽかんとして見ていると、皓緋が彩音を連れて三人の所へ行く。愛華もその後に続く。

「お前ら、俺の可愛い娘が呆れてるぞ。ほら、紹介するからそこに並べ」

仲睦まじく? 言い合っていた三人は、皓緋が来るとぴたりと会話を止め、横一列に並んだ。

「こっちから春詠はるよみ朱艶しゅえん陽織ひおりだ」

皓緋は順に三人を紹介する。

「よろしくね、彩音ちゃん、愛華さん」

長男の春詠。おっとりとして、優しい雰囲気を持つ人。

「朱艶だ。よろしく」

次男の朱艶。春詠や陽織と比べると雰囲気がきつい感じがするが、抜け目のないしっかり者という感じだ。その分、苦労も多そうな気がする。

「あらためてよろしくね。彩音ちゃんに愛華さん」

三男の陽織。人懐っこくて可愛い。そこにいるだけで明るくなるような雰囲気を持つ人。

この三人と皓緋がこの世界を治めているという。

本当ならもう一人、この場にいるべき人がいるらしいが、その人は体調が思わしくないので後日会いに行くことになった。陽織達の父親だ。

「まったく。一体どこをほっつき歩いていたんだ、皓緋」

呆れ顔で朱艶が皓緋に問う。

「そうだよ。こっちの方が遠回りなのに早く着いて、なおかつ、お茶を二杯飲んでても来ないってどういことさ!」

朱艶に便乗して陽織が待たされた文句を皓緋に言う。

「全く。心にゆとりのない奴らめ。ようやく可愛い娘と会えたんだ、話すことだって色々ある。それぐらいの時間ぐらい待てないのか? なぁ彩音?」

皓緋は愛華の側にいた彩音を引き寄せ、有無を言わせない表情で同意を求めてくる。

「そうですねー」

彩音は遠くを見ながら、棒読みで答えた。

ここで否定やら何やらをすれば、また大人気ないことを言い出したり行動したりするに違いないという確信があったからだ。

周りの皆も、彩音の態度で道中何があったのかは大体察したらしい。

「やっぱり苦労したんだね、彩音ちゃん」

可哀想にという表情で、同情の言葉を陽織が言う。

「はぁ……」

朱艶は言葉はかけないが、その表情は面倒をかけてすまないと語っている。

春詠はくくっと笑いながら「こんなお父さんだけどよろしくね、彩音ちゃん」と言った。

「え……?」

視線を春詠に移し、よろしくされた皓緋の方を見る。

皓緋は笑顔でもちろんはいと言うよな、それ以外の答えは受け付けないぞと大人気なくオーラで威圧して来る。

彩音は皓緋とは対照的に諦めと疲れの混じった表情で「……はい」と答えるしかなかった。

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