手紙を受け取った凡愚
妹達の手紙を読み終わると、私はベッドに寝ころんだ。私は、郊外の片田舎に土地を持つ下級貴族の出である。家族は私を含めて七人である。貴族ともなるとこれぐらいの人数は珍しくもないが、それは愛人の子どもなども含めての話なので血のつながった家族の人数としては多いぐらいだろう。父と母、そして文官の長男、武官の次男、執務室付きの私が三男で、私とは十歳以上離れた双子の長女が続いている。ビクトリアとテールヴィアという少々生意気盛りの可愛い妹達である。家へ帰るとやれ買い物に付き合えだの実験に付き合えだのと、十四にもなるお年頃だというのに引きずりまわしてくれるが、二人の兄から言わせると、彼女達に一番好かれているという。家中で中身は正反対と言え、外見はそっくりな双子をはっきりと見分けることができるのは、母と私ぐらいだから重宝がられているのは確かだろう。
とはいえ、彼女たちからの手紙は珍しい代物だった。私は兄たちとは違って定期的に里帰りするので、行方を確かめるような手紙を両親も妹達もあまりよこさないのである。それに、いくら暇に見える執務室付きでも、毎日の仕事は存外に多く、返事を書けないことが多いというのも一因にあった。それが、今は昼間から仕事もせず、ベッドに反っくり返って手紙を読んでいる。どういうことか。それは、ここが宿直室ではなく、議会城の地下にある独居房だからである。




