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100%  作者: 長谷川 麗音
1/3

P*

「あれ?転入生の麻南じゃ〜ん」

すぐ近くで、声がした。

「今、目が合ったよね?」

「無視?」

随分春めいてきた長閑(のどか)な朝とは似つかわしくない、異様なオーラを出す女のコたち。

私と同じ一年生だろうか。

「えっ、あ…おはよう」

「おはよ」

軽蔑と怒りを含んだような眼差しでこっちを見ている。

誰だろう…。

「ウチ、笠井ってゆうの、ヨロシク。」

「ウチは栗野亜美」

「あたし保土田結実。」

「鈴木麗奈」

彼女たちは次々と自己紹介をした。

「私は…麻南優愛、です」

「知ってる」

と鈴木さん。

うーん…なんか、怒っているみたい。

「なあ、こっち来いよ」

グイ。

グループのリーダーらしい笠井さんが、私の腕をひっぱる。

「え…。」

嫌な予感がする。

これってもしかして…。

「早くしろよお」

断る理由も無いので、仕方なく彼女たちについて行った。

だけど連れてこられたのはやっぱり体育館の裏だった。

そして彼女たちは周りに誰もいないことを確認すると、顔を見合わせ彼女たち同士で目配せをした──。

「お前ウザいよ」

「きゃあ!」

鈍い音がして、背中に激痛が走る。

無抵抗の私は土臭い地面に倒れこんだ。

「何がきゃあ!だよ」

「こんな時までぶりっこぉ〜?」

違う!私、ぶりっこなんてしてない!

「自分は可愛いとか思ってんの?」

「金持ちのお嬢さまだからって調子乗んなよ」

彼女たちは私を取り囲んで、一斉に暴力を振い始めた。

「つーか何で東京のトップがこの中学に来るんですか〜」

「優等生ぶってるくせに茶髪ってどういうこと?」

「お前マジうぜぇんだよ」

「死んでくれない?」

どうしてこんなに怒ってるんだろう。

私、何かしたっけ!?

「そのまま入院してれば良かったのに」

「ホントホント」

「医療ミスで、死んじゃえ〜」

ハハハハハ・・・

甲高い笑い声と吊り上った目じりには、何とも言えない威力があった。

相手は集団だし、私には、抵抗する由が無い。

黙って耐えているだけ…。

怖い。

痛い。

誰か助けて…。

♪キンコンカンコーン

「あっチャイム鳴ったよ」

「そろそろ戻んなきゃじゃん?」

「いこいこ〜」

ドタバタと慌しく引き揚げていく彼女たちの後ろ姿を見る私は、情けないけど気絶寸前だった。

閉じかけていた目を無理矢理開けなくても感覚で分かるよ。

蹴られたり殴られたりで顔や足には血が滲んでいて、制服と通学鞄は砂だらけ。

一体、何でこうなったんだろう。

チャイムが鳴らなかったら私、どうなっていたんだろう…。

とりあえず立ち上がって制服の汚れを掃い、ハンカチで血を拭いた。

私も急いで教室に行かないと。

唇をそっと噛んで涙を堪え、鼻をすすってから足早に教室へ向かった。


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