第一章 第九話
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「と……とりあえず、まず俺がいろいろと質問をするからそれに答えてもらうカタチでいいか?」
「うむ、いいだろう。この豪徳寺さやか、バカヨージのテンポにあわせてやろう…………フフ、ワタシはヨージには甘いな、少し」
ど・こ・が・だ・よ、どこが。 このやろう~……。
「ハハ……わ、わるいな。じゃあさっそくなんだがまずその《ライトワーカー》てのは何者なんだ?」
「だから言ったろ?《光の従事者》…………つまり、《リトリーバルをする者》のことで…………」
「はい、ソコ! もうそこから意味わかんねーよ。まず、この《リトリーバル》っつーのは、一体何なんだ?」
「《リトリーバル》は《救出活動》を意味する。厳密には《魂の救出活動》だ」
「!? た……魂………?」
「ああ……。簡単に説明すると、《ヘミシンク》という特殊な音響技術を使って《幽体》となり、肉体から《離脱》し、《エネルギー体》となって《リトリーバル》……つまり、《魂の救出活動》という…………要するに、《現世にさまよっている霊を成仏させる作業》を行うんだ」
「あ……あのう~、ものすごく簡単に言っているみたいだけど…………それってつまり、その《ヘミシンク》というのを使って、自分が《霊魂》になって体から抜けて、その辺のさまよっている《霊》を成仏させるってこと?」
「おお、そうだ。なんだ、思ったより飲み込みが早いじゃないか…………バカのくせに」
こ、このやろう…………で、でも、今はそんなことで腹を立ててる場合じゃないぞ…………なんだ? 何なんだ、コイツ? 一体、何を言っているんだ?
「ということで、早速、お前を《ライトワーカー》にするための訓練を開始するのだが…………」
「ちょ……ちょっと待て!」
「何だ? いい加減にしろ、バカヨージ。しまいには爪を剥いで、そこに荒塩を塗りつぶすぞ」
お願いだから、それはやめて。
「い、いや…………お前、俺にその《ライトワーカー》になれって言っているのか?」
「そうだ。さっきそう説明しただろう?」
「で・き・る・わ・け・ないだろ!」
「なぜだ?」
「な……なぜだ? ってお前…………俺なんかがそんな能力持ってるわけねーだろ。俺は、昔からそういったものには鈍感なんだから!」
「そんなことは関係ない。程度はあるが、この能力はどんな人間にも備わっているものだ。そして、この部室をみつけられるほどの能力であれば、ワタシたちが必要としているレベルの《ライトワーカー》になる《素質》を持っているという証明にもなっている。つまり、お前にはその《素質》があるんだ! 自信を持っていいんだ、ヨージ!」
「!?」
そう言うと、豪徳寺は俺の両肩を掴み、さっきまでとは違い、まるで別人のような、きれいでまっすぐな瞳で俺を見つめた。
「マ……マジかよ」
「マジだ、このバカヨージ。いい加減、覚悟しろ………………………………というより命令だ」
「め…………命令!?」
「ということで今日からお前はワタシの奴隷となって《ライトワーカー》の訓練を受け、一人前の《ライトワーカー》となり、少しでも世の中の……というよりワタシの役に立て! よいな?」
「………………どうせ《イヤ》だと言っても無理矢理やらせんだろ?」
「当たり前だ。お前の拒否権など最初から無い」
「んだよ…………ブツブツ…………いちいちムカツク言い方しやがって」
「何か言ったか?」
「いえ、何も言ってないでありますよ。豪徳寺様」
「ふむ《うす気味悪い》な…………いや《うす気味キモい》な…………いや、ただただ《モーレツにキモい》な。今までどおり《豪徳寺》で良いぞ、モーレツキモバカヨージ」
「うぐぐ……………………」
こうして、俺の《奴隷生活》と《ライトワーカーの訓練》が始まった。