第一章 第八話
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「はっ? ど……どういうことだよ? 俺を勧誘した理由が《このサークルをみつけることができたから》て…………意味わかんねーよ」
「うるさい。最後まで話を聞け、この《奴隷ヨージ》」
「な……このやろうぉ……………………うっ!」
豪徳寺は《黙れ》というオーラをこれでもかというくらいに出していた。とりあえず、ここは《言うとおりに従おう》と俺の防衛本能が即座に働いた。
「このサークル……《ヘミシンク研究サークル》は普通の奴では絶対にみつけることができない。理由は、そのような《結界》を張っているからだ」
「?……?……《結界》?」
「そうだ」
「《結界》って…………マンガとか小説で魔法使いとかがやるようなヤツ?」
「そうだ」
「そ……そうだって…………お前…………本気で言ってんのか?」
「ああ、そうだ」
俺はおそる、おそる聞いてみた。
「ま……まさか、俺を《魔法使い》にするということなのか?!」
「いや、違う」
「違うのかよ!?」
俺はおもいっきりツッコんだ。
「《魔法使い》ではない。《ライトワーカー》だ」
「!?…………ら……《ライトワーカー》?」
「ああ。《ライトワーカー》…………日本語だと《光の従事者》という意味だ」
「うむ、まったくわからん」
「うむ、きさまバカか? バカでできてるのか?」
「いや、それだけで理解できるわけねーだろ!!」
「ともかく、ワタシは《ライトワーカー》で、この部室を《リーボール》を使って、《結界》を張ったのだ。それにより普通の学生であれば、この部室をみつけることができないようになる……というわけだ」
「……というわけだ、じゃねーよ。まるで理解できねーよ」
「まあ、もう少し聞け。今度は《ヘミシンク》の話をしよう。そうすればお前の疑問も解決するだろう」
「そうか…………じゃあ、頼む」
「《ヘミシンク》……それは、特定の音の《周波数》を組み合わせることにより、人の意識状態のコントロールを可能にする音響技術のことだ。そして、この技術により、ワタシたち人間は《幽体離脱》をして《リトリーバル》という作業を行う。そして、そのような作業をしている者のことを《ライトワーカー》と呼んでいる。しかし、ワタシたち《ライトワーカー》は《リトリーバル》の必要のある数に比べて、まだまだ数が足りないのが現状だ。そこで、その《ライトワーカーの卵》をみつけ、一人前の《ライトワーカー》に育てることが、ワタシがこの大学に入りサークルを立ち上げ活動をしている理由だ…………ここまではいいな?」
「よくねーよ! てゆうか、話の内容も全くわからんし、聞いたことない言葉も多いし、そもそも展開が早いんだよ! もう少し、説明を入れろよ!!」
「早くないだろ。これぐらいついてこれんのか?」
「ついてこれるか!」
「そうか、きさまは……………………バカか?」
くっ……でも、ここでこいつに下手に逆らっても得にはならないか。
「そ……そうなんだ。俺ってほらバカだから…………。ちょっとそのスピードにはついていけねーんだよ、わ、わりーな……ハハ」
俺はなんとか自分の怒りを抑え、豪徳寺の気分を損なわないように努めた。
「うむ、そうか。お前はバカなのか。バカならしょうがないな。すまん、失礼をした。いやー、そうかーバカなんだな、ヨージは。本当にバカなんだからそれはしかたのないことだな。まあ、バカだからってあまり気にするな、《バカヨージ》」
くっ! バカバカバカバカ……バカ使い過ぎだ、このやろう!