第一章 第七話
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「ほ……本当にいいのかよ。それって毎月俺にお金を上げるってことだぞ?」
「ああ、構わん。そのかわり、きさまはこれでワタシの手となり、足となるということだ。それを忘れるなよ。ちなみにこれはもう決定事項だ。もう契約破棄は無いからな」
豪徳寺はまた深遠な目と笑みを浮かべて俺につぶやいた。
「わ……わかったよ。勝手にしろ!」
俺はもう完全に開き直り、豪徳寺に身を委ねた。
「よし、では本題に入るぞ」
「ちょ……ちょっと待て」
「なんだ? まだ何かあるのか? いい加減にしないと爪剥ぐぞ、奴隷」
「や……やめろよ! そんな冗談……。マジで怖ぇーって」
「冗談ではないぞ、そのくらい、もうわかるであろう? 奴隷」
ああ、コイツは冗談を言えるような《マトモな奴》じゃねーからな。
「ああ、わかってるよ。いや、ちょっと聞きたいことがあるんだよ」
「何だ? 言ってみろ」
「いや、なんで俺をそこまでサークルに入れさせようとするんだ?…………部員が欲しいなら、豪徳寺のファンクラブにでも入ってもらえればいいだろ?」
豪徳寺さやかは、まだ入学したばかりのはずなのだが、すでに校内には2つの『豪徳寺さやかファンクラブ』ができており、その2つのファンクラブはどちらが本物のファンクラブかということに毎日しのぎを削っていた………………なんのこっちゃ。
「…………」
豪徳寺が黙った。
俺は一瞬、「ま……まさか、豪徳寺は俺のことが好きで《い……言わせないでよね、バカ!》的なことなのか!?」と心の中で、頭の弱い展開を期待した。
もちろん、そんな都合の良い展開になることはなかった。
「ふむ、そうだな。では、そこから話を始めるとするか」
と言うと、豪徳寺は座っていた机から下りて、ホワイトボードのところに足を運んでいき、何やら書き始めた。そして、バン!とホワイトボードをおもいっきり叩き、なにやら文字を書いていき、そして、いきおいよく叫んだ。
「刮目せよ!?」
見ると、ホワイトボードには『ヘミシンク と ヒナタ・奴隷・ヨージ の今後』というタイトルが殴り書きしてあった。
「おい………………なんか《奴隷》が俺の《ミドルネーム》になってるぞ」
「では、まずお前の質問に答えてあげるとしよう」
いや、その前に俺の質問にちょっとくらい耳貸せよ。
「なぜ、ワタシが《お前ごとき》をここまで勧誘してるのか」
全~然、俺の話は聞く気ねーんだな…………コイツ。
「それは………………お前が《このサークルをみつけることができたからだ》」
「まったくなんて自分勝手な………………………………はっ?」
俺は、一瞬、コイツが何を言っているのかわからなかった。