第一章 第四話
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「きさま……ワタシが誰だかわかるか?」
俺は、部室の奥にあるイスに座らされ、豪徳寺さやかはその横にある机に座り、俺の頭を掴みながらそう聞いた。
「ご……豪徳寺さやか……さん」
「うむ、いかにも。ワタシが“豪徳寺さやか”だ。他には?」
「あ、え~っと…………一年でありながら、この大学の学生会長であり、今年の入学生の中の首席というところくらいまでは……」
「なるほど……一応、最低限の心得はあるようだな。では、その中に今年のミスキャンパスということも付け加えておけ」
「あ、でも、ミスキャンパスは秋だからまだ決まってはいな…………」
「んっ? 何か言ったか?」
「い……いえ」
すごい迫力です、豪徳寺さん。
「では、早速本題に入るとしよう。まず、きさま……名前は?」
「ひ……日向陽司、一年です」
「学部は?」
「法学部です」
「法学部……同じ学部だったか。ふむ、それはそれでちょうど良い。きさま、今日からこの“ヘミシンク研究サークル”の部員だ。おめでとう」
「はっ?」
「では次にこれからのことだが…………」
「ちょ……ちょっと待て!」
「なんだ?」
「いや、“なんだ?”って…………おかしいだろ? さっきから聞いてりゃあ何なんだ、お前は。確かに無断で部室に入ったのは悪かったよ。けどな、だからって勝手に部員になれだなんておかしいだろ?!」
「全然おかしくない」
「いやおかしいだろ?! それにな、いくら“豪徳寺さやか”だからって誰もが特別視するわけじゃないんだよ! 俺には関係無ぇー! 同い年のくせにえらそーにすんな!」
「なるほど。不法侵入したくせに開き直るか」
「そうじゃねーだろ! 不法侵入に関しては確かに俺が悪い。だから謝るし、もしそれでもムカツクなら警察でも何でも行ってやるよ! とにかくだな、俺はそういうことじゃなくて、お前のその上から目線の態度がだな…………」
「言ったな、きさま…………吐いたツバ飲まんとけよ」
「えっ?……は……吐いたツバ?…………えっ……何?」
すると、豪徳寺さやかは、必要な機能なのかはわからないが、スカートの内側にあるポケットから(ちょっと見えそう)、《かわいいくまさんのマスコット笛》を取り出し、大きく息を吸い、そして…………。