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七、魔具とプロポーズ(?)

 次の日から、私達は今日よりもハードな訓練を受けた。

 基礎練基礎練基礎練基礎練基礎練…ひたすら基礎練の繰り返し。

 なぜここまで基礎練を繰り返すかというと、出発の日に、いわゆるチートアイテムを貰うかららしい。

 先輩は『聖剣ユースティティア』といういかにもな感じで、王族に代々引き継がれてきた剣。私は…あれ、とくになにも言われなかったぞ。どうしよう、私何も貰う予定ないんじゃん…。

 ま、まあ、私にはキノさんに貰った筆があるし、いいかな。詠唱魔法もうまくなってきたし。

 筆、筆といえば、私が貰った筆はとんでもない物のようなのだ。

 六日間、私はミューエ先生からの精神攻撃に耐える訓練…じゃない、語句の暗記や書き取り、できるだけ魔法を具現化するための魔力鍛錬を受けている。そのうちに、魔力の大きさの度合いとその量り方がわかってきたのだ。それで、筆が持っている魔力を量ってみたら、…とにかく、すごいの一言。

 私達魔術師は(私なんかが含まれていいのかどうかは別として…)魔法を行いやすいようにさまざまな道具を使う。その道具が《魔具》だ。

 魔具には、それをつくった職人の技量や込めた魔力によって、道具の中に秘められている魔力が変化する。中に秘められた魔力が強いほど、魔法の使用者の魔力は底上げされ、また魔法が行いやすくなるのだ。使用者の力量や相性によって変わるが…。

 で、一般的に流通している魔具のレベルを1とすると、この筆は10以上余裕で行く。…どうしよう、あんまり強そうに思われなさそうorz

 普通の、どこにでもいそうな魔術師千人分の魔力が込められているみたいなかんじ。

 ともかく、私なんかが手にしていい物じゃない。私じゃこの筆の力を十分に引き出せるとは思えない。

でも、あるものは使わなきゃ。

 ちなみに、先生にはキノさんのことをはじめ描写魔法や筆のことは言っていない。なんとなく、言わない方が良いような気がしたから。筆を隠すのが大変だけど(汗)

 って、すごい脱線しちゃったな(汗)

 とにかく、訓練ばっかりで先輩はかなりきつそうだ。ちらっと見てみたとき、フォールさん(怖そうだけど耳かわいい)、だっけ、フォールさんがかなりスパルタなのがわかった。

 ここ何日か、毎晩私は疲れきった先輩に魔法をかけて朝に備えてもらっている。

 今日も、今先輩に魔法を使ったところだ。


「悪いね、毎日毎日」

「いえ!私の、魔法の練習にもなるし。その、役に立てられる、なら、嬉しい、し…」


 ちょっと言っているうちに恥ずかしくなった。

 最後の方、かなり小さい声で言ったから、多分聞こえなかっただろう。


「ごめん、最後の方聞こえなかった」

「なんでもないです!!そ、それより、なんか、練習台、やってもらってるみたいで、ごめんなさい…」

「そんなことないよ。毎朝びっくりするくらい疲れや筋肉痛がなくなってるんだから。ありがとう」

「いえ…!」


 うああああああああ、なんか、うあああああああはずかしい!!なんで!?!?

 あ、先輩が尋常じゃないイケメンな上にあまりにもきれいな笑顔だから…って、ええっ、私そんな…

 …もういいや。水に流せ。


「そうだ、今日はなれてきたし体力が付いてきたみたいで、まだ元気があるんだ。…あ、でも、明日が出発だったよね」

「はい…」


 明日、私達は王が指定した仲間と魔王を探して旅に出るのだ。

 先輩、すごくキラキラしてる。


「楽しみだよね~」

「はい…」


 不安でいっぱいだあー… 


「それで、ここ数日なにもなかった?」

「え?はい。訓練ばっかり、でしたけど」

「よかった、ならいいんだ」


 なんでそんなこと聞くんだろう?

 あ、そういえば、あったじゃん!


「なかったわけじゃ、ないです」

「え?」

「私の、この魔法、ミューエ先生から習ったわけじゃないんです」

「へえ?」


 私はキノさんのことを先輩に話す。


「へえ、僕もその日にいろいろあったんだよ」


 コンコンコン


 先輩も、私に何か話そうとしたが、私の部屋に誰か来たようだ。


「ごめんなさい、誰かきたみたいです」

「…男の人だったら気をつけて。終わったらまたここ来てよ」

「え?は、はい」


 なんでそんなことを…?

 とにかく、私は窓を開け放したままドアに向かった。


「はーい…」

「こんばんは、勇者リノ」

「あ…アルトゥス、王子。こんばんは」

「名前を覚えて貰えたのですね。嬉しいです」


 私とダンスを踊った人だ。あれから、顔を会わせるたびに優しくしてくれる。

 男の人…でも、何をどう気を付ければいいんだろう?


「こ、こちらこそ、ありがとう、ございます。…ええと、何か、御用でしょうか」

「明日、出発ですね」

「はい…」

「あなたと会えなくなるのがさびしいです。入ってもいいですか?」

「あ、あの、え、ええと…」


 王子は返事も聞かずに入ってきた。

 ううう。


「あ、あの、アルトゥス様…」

「アル、と呼んでくれ、リノ」

「王子…」

「だめか?」

「あ…。…アル、様」


 ええと、アル様、急に雰囲気が変わったようです。

 でも、さわやかな笑顔は変わらない。

 王子は苦笑しながら言った。 


「安心しろ。今日は何もしない」


 きょ、今日は…ですか。


「ただ、言いたいことがあっただけだ」

「な、なんですか…?」


 王子はしばらく窓の外に見える月を眺めてから、くるっと振り向いた。

 そのまま、跪く。


「リノ、帰ってきたら、私と結婚しろ」

「…………へ?」


 つ、つつつまり、ここここれはプロ、ぷ、ぷろ、プロポーズ…?

 え。

 えええええええええええええええええええ!?

 いきなり!?いきなりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?

 あんまりお話したわけでもないのに!?ちょっと踊って会ったらたまにちょこっと話したくらいで!?

 アル王子はいつの間にか私の手を取っている。

 …おお。

 さすが王子、様になってる。


「それだけだ。私は第一王位継承者という立場上共に旅立つことができない。無事に帰ってきてくれるのを願おう」


 小さなリップ音。

 王子が私の手にキスをしたのだ。

 …………どうしよう、声出ない。


「フフッ。もう寝るといい。おやすみ」

「は、はい。おやすみなさい…」


 しばらく王子に見つめられたが、私は気まずくなって目を逸らしてしまった。

 王子は眉をぴくりとさせると、そのまま立ち上がって扉へ向かう。


「それでは」


 王子がにこりと変わらない笑顔を浮かべながら優雅に一礼して出て行く。

 …………ふう…。

 なんか、いろいろと、疲れた。


裏行く勇気は私にはなかった。

というか、ストックもう危ないかもしれない。

アドバイスやご注意、ご遠慮なくお申し付け下さい…お手柔らかにお伝え下さい。

話数…orz

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