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四、疲れたと訓練

前回までかいてたしいいよね!((氏


「ふうーーーー」


 夜の景色も最高だ。

 私は部屋のバルコニーで夜風に当たっていた。

 大きく息を吸い込み、はく。

 あの部屋で感じた拒絶されているような感じは無く、元いた世界よりずっと空気が美味しく感じられるくらいだ。

 夜空に瞬く星と、二つの大きさや色の違う月を眺めながら今日一日のことを思い返す。

 こんなに疲れた日は久しぶり。精神的に、もうボロボロ…。

 風呂から上がった後の(メイドさんたちに一人で入ると許してもらえるのに時間がかかった)ぬれた髪に、薄いネグリジェだけでは夜は肌寒い。

 ベットに置いてあったふかふかの枕を抱いて、手すりに寄りかかって夜景を眺めた。

 勇者…か。 

 とりあえず、社交界が私には不向きだと改めて思った。

 人に触れられるのが苦手なのに、手には何度もキスをされるしダンスでは腰に(腰!!ここはダメ!!くすぐったすぎる!!)手を置かれないといけないし、何よりあの視線!!品定めされているようだった。見下されているようなものや、虫唾が走るような、とにかく、もうあんなものごめんだ。

 でも、当分は続きそうで、この世界のことも何もかも、わからない事だらけなのに、話はどんどん大きくなって進んでいく。私達の意見なんか求められもしないようだし、もう、帰りたい、泣きそう…。

 枕に顔をうずめていると、隣で窓が開く音がした。光夜先輩だ。


「やあ、こんばんは」

「こん、ばんは」

「…疲れちゃったね」

「………」


 先輩は私の顔をちらりと見た後、二つの月に視線を移した。気を使ってくれたようだ。


「大丈夫だったかい?変なこと言われたりした?」

「いいえ、大丈夫、でした」

「ならよかった。ここの人たちは信用できないからね。王子とはどんな話を?」

「元いた世界のこと、とか、お世辞、とか。…部屋で、この世界のこと、教えてくれると言ってもらえたんですが、断っちゃいました」


 だって、ほら、流石に怖かったから。

 よくしらない男の人と二人っきりとか、なんか嫌でしょ?


「うん、いい選択だ。できるだけ僕達二人で行動したいけど、いろいろと難しいだろうしね…」


 あれ?先輩とも会ったばかりじゃないか。なんで二人っきりでも安心していられるんだろう。やっぱり、世界とか一緒だからかな。噂とかでこっちはこの人のことをいろいろ聞いていたし、色から違う異世界人とはやっぱり別物だろう。


「とにかく、しばらく様子を見よう。変な動きをして今より大変なことになったりするのは嫌だろ」

「はい」


 先輩、私達、帰れると思いますか?

 もうちょっとで声に出しそうになった。

 今聞いて何になる。きっと先輩だって不安に思ってるはずだ。


「おやすみ、なさい」

「うん、おやすみ」


 先輩が笑顔で手を振る。私はぺこりと頭を下げてベットに戻った。

 異世界なんかに来ちゃってはやく帰りたいとは思うけど、天蓋付きのふかふかベットは最高だ。多分詰め物は100パーセント羽毛。なんか贅沢感あふれてるよ。


◇◇◇◇


 ここは城の第三演習場。

 初日から筋肉痛がひどくなりそうだ。

 僕達は朝から剣と魔法の訓練を受けている。 

 王、というか大臣から教師(クマミミ近衛兵隊長とガイコツ魔導師長)を宛がわれ、僕は剣技、鈴乃ちゃんは魔術を習う。

 鈴乃ちゃんにも剣技が教えられるはずだったが、隊長が鈴乃ちゃんを適性が無いとばっさり切り捨てたので、どちらにも魔術・剣術を教えようとした初めの計画を変更し、どちらか一方を集中的に教えられることになったのだ。


「余計なことを考えるな」

「ぐっ」


 まったく!回想くらい良いじゃないか!!

 頭上から振り下ろされてきた剣を受け止め、跳ね返す。

 運動は得意だったが、いきなり本物の重い剣を持たされ戦えといわれて、すぐに慣れる奴は普通いないだろう。

 腕や肩、腿に傷を受けている。こんなに血を流し、激痛に耐えるなんて生まれて初めてだ。少しかすっただけでも血がにじんでくる。

 それでも攻撃は止まらない。僕も、隊長の動きを見ているうちに慣れてきた。


「はあっ!!」

「っ」


 何度か剣を交えるうちにコツを覚えた僕は、隊長の剣を思い切り弾いた。剣が飛んでいく。

 ここで動きを止めてはダメだ。僕はいっきに踏み込んで隊長の首に剣を突きつける。


「はあ、はあ、…これで、初めてあなたを殺せましたね」

「………フッ。よし。休憩だ」


 隊長…獣人族(灰色熊族らしい)のフォール・ビシェフラト隊長は、一瞬だけ笑って待機していたプリーストに見て頷くというだけの簡単な合図をした。

 プリーストの男性がやってきて傷口に手をかざす。淡い光が手を包み、その光が傷口に移った。ちりちりとする妙なかゆみと熱を覚える中観察していると、傷口が徐々に塞がっていく。

 治療が終わると、もう痛みはだいぶ減っていた。痛みが全てなくなるわけではないらしい。

 プリーストが離れていく。かわりにフォールが近づいてきた。


「どうだ」

「どうだって、何がですか?」

「戦いを、どう思う」

「そうですね…。恐ろしい、でしょうか」


 頭のお団子のようなかわいらしい灰色のクマミミとは対照的に、左頬に大きな傷跡のある厳つい顔は日に焼けていて無表情だ。見たところまだ若い。整った顔立ちに、大きな傷でワイルドさをかもし出しているが、無口で寡黙で、この世界の基準がわからないが、強いことは素人の僕でもわかる。

 この国で初めてミルクティー色の髪じゃない。外国人なのだろうか。


「なぜそう思う」

「そう思うからです。僕は、48回殺されたんでしょう?僕も、最後あのまま剣を止めなかったら、最悪貴方を本当に殺していた。僕だって、こんなに簡単に傷ついてしまう。人間は、脆い…」

「そうか。ならいい。次から基礎体力を作る訓練だ」

「待ってください」


 どこかに行ってしまいそうになったフォールを呼び止める。


「貴方に教えていただきたいのですが。この世界(ココ)のことや、勇者のことを。何も教えられずに勇者だなんだ、不公平でしょう」


 じっと見つめてくるフォールを見つめ返す。

 嘘を言われたら嫌だが、この人なら信用できそうな気がした。今は勘でもなんでもいいから信用できる人と情報が必要なのだ。


「悪いが、命令の範囲外だ」

「まあまあ、フォール、かったいこと言わずに教えてやれよ」

「!!」


 演習場を出て行こうとするフォールを止めたのは、プリーストの格好をしたフードの男だった。例によって白地に金のライン。この国では重要なものらしいね。 

 出入り口から出てくる男が少し顔をあげる。ちらりと見えたのはミルクティー色の髪と…金色の瞳。

 王族か?昨日はこんな人見なかったけど。

 フォールが跪こうとしてやめ、小声で聞いた。


「お戻りになられたのですか」

「兄貴達には内緒だぜ」


 唇に人差し指をあてて笑う男に、フォールが重い溜め息をつく。


「何故戻ってこられたのですか」

「ちょっとした仕込みついでに勇者様とやらを見に着ただけさ。すぐ出て行く」

「仕込み…?」


 男が僕に向かって悪戯っぽく笑った。


「あんた、薄々気付いてるかもしんねぇが、ここのクソヤロウどもはお前達のことを道具だと思ってるぜ。民をなだめるための、今までよりもさらに至福を肥やすためのな」


 民を、なだめる…


「でも、俺は道具だなんて思わねぇからな」

「どういう意味だい?」

「じゃ、また近いうちにな!」


 男は手をひらひらと振りながら出て行った。

 残された僕達は呆然と出入り口の暗がりを見詰める。


「フォールさん」


 フォールは僕を一瞥してもう一度出入り口に目をやると、重い重い溜め息をついた。


あんまり間を開けたくないですよね(汗)

誤字脱字等あればお伝え下さい!

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