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三、不愉快と社交界

*で場面切り替えとかです。

「ようこそ、我らが勇者よ」


 ぶくぶくと太った王だという男は、笑顔を浮かべて手を差し出してきた。

 “天の間”という王座のある広い部屋で、たくさんの人が集まり僕達を見ている。メイドさんから聞いた話では、貴族やら商人、領主や町長やら、いろいろなところからいろいろな人が来ているらしい。

 えーと、聞いた説明によると、跪いて手の甲にキスをするんだったな。


「こちらこそ、お目にかかれて光栄です」


 全くもって光栄なんかじゃないな。

 こんな、物か何かを見るような目で見られて、全然おもしろくない。

 一応様子見のために作法には従い、片膝をついて言われた通りにする。


「こ、光栄、です」


 鈴乃ちゃんはかわいそうなくらい声が震えている。動作もぎこちないが、同じようにキスをした。

 王は満足したという風に頷く。


「我らが友、我らが救世主、我らが勇者よ、名乗るがよい」

「夕日丘光夜です」

「ほ、ほ、穂積、鈴乃、です」

「勇者アリヤ、勇者リノよ、祝福を授かるがよい」


 打ち合わせ通りのつまらないありがちな進行だ。

 王が誰かに合図をだす。

 奥のほうから老人が出てきた。

 長く白い髭をのばし、白地にやはり金のラインが入った服(たしかローブという服だ)を身に纏っている。優しそうな目は何故か悲しげだ。


「勇者よ。お主らにこの大役を押し付けるような形で実に申し訳なく思っておる」


 老人は僕達だけに聞こえるように小さく話した。

 たしかに押し付けがましいね。

 老人が手を空…というか天井に手をかざすと、その手が淡く温かな色の光を帯び始めた。


「お主たちに神の祝福を授ける。どうか、魔の者達に屈することがないように。そなた達の行く道が、光に導かれるように…」


 老人は僕達の頭に手を置いた。光が僕達に移ってくる。あたたかい…。

 しばらくして、老人は手を離すと王に頷いて下がっていった。


「我らが友、我らが救世主、我らが勇者、光の申し子達には、これから一週間ここで訓練をしてもらう。一週間後、ポルタオン広場にて出発式じゃ!!」


 観客が大きな拍手を送る。

 これから“大地の間”で食事会だそうだ。そこで、僕達は貴族とかに挨拶をして回らないといけないらしい。

 はあ。嫌だなあ。状況だっていまいちよく説明されてないのに。


****


「やあ」

「あ、先輩。わあ…かっこいい、ですね」

「君こそすごくきれいだよ」

 

 僕達は服を着替えて食事会…というか舞踏会に参加。

 僕も鈴乃ちゃんも、例によって白と金を基調とした豪華な服で、鈴乃ちゃんはなれないドレスが恥ずかしいのか、それとも緊張のせいか、顔が真っ赤だ。


「勇者様、参りましょう」


 王子と王女と一緒に入場だ。

 王子の方も王女の方も、それなりに綺麗な顔立ちだがなんとなく好きになれそうに無い。鈴乃ちゃんも同じなようで、エスコートするという王子に手を取られてから表情がさえない。王女の方も腕を勝手に組んでくる。あんまりこういうのはね…まあ、郷に入れば郷に従え。しばらくはココのルールに従わなくては。

 会場に入場して拍手をもらい、王の短めのスピーチと開始の言葉。楽隊の音楽に、貴族達のおしゃべり…。さっきより人は減ったらしいけど、こっちの方が疲れそうだ。


「勇者様、一曲踊っていただけませんか?」

「わたくしたちも踊りましょう」


 王子が鈴乃ちゃんに、王女が僕にいう。


「わ、私、ダンスなんて、できません…!」

「大丈夫。私がエスコートしますから、足を踏まないでくれればいいですよ」

「で、でも、ああ…」


 悪戯っぽい笑顔を浮かべて、王子は鈴乃ちゃんを連れて行ってしまった。


「さ、わたくしたちも」 


 この国の王族はミルクティー色の髪(この髪の色は国民全てに共通しているようだ)に金色の瞳をしている。外国人だって滅多に見ないからだろうか。金色の瞳を見ると不思議な気分になる。


「僕だって踊れないよ。それでもいいなら。足を踏まないように気を付けます」 


 先に踊っている人たちを見ながら開いている場所へ移動し、軽やかなワルツに合わせてそれっぽい動きをしてみる。 

 1,2,3,1,2,3…

 一歩でて、一歩下がり、円を描きながら動く。左手は相手の手を取って、もう片方は彼女の腰に置く。たまに彼女が自分から離れると、くるりと回る合図だ。

 余裕が出てくると周りを見回してみた。鈴乃ちゃんは必死で王子のダンスについていってる。


「ダンス、お上手じゃない」

「必死ですよ」

「ご冗談を。ずいぶん慣れたご様子ですわ」

「いえいえ。だいたい僕の世界の僕の住んでいた国には、舞踏会なんてものはありませんでした。いい経験になります」

「それはよかった。ところで、もう一方の勇者様とはどういったご関係で?」

「特に何も。ほとんど初対面でした。強いて言うなら、同じ学校の先輩と後輩でしょうか」

「あら、そうですの。普通、勇者は単体で、一人で召喚されると聞きますから、正直お父様方が戸惑っていましたの」

「ふーん。単体でですか」

「ええ。がんばってくださいね。異世界からの召喚勇者はとても強い力をお持ちしていると聞きます。期待しておりますわ」

「僕達はあまり説明もうけずにココにいるんです。期待されても、不安で不安でしかたありませんね」

「うふふっ。その不安を吹き飛ばしてあげてもよろしくてよ」


 上目遣いでそう囁く王女。

 どういった意味かは雰囲気で大体分かるが、なんだか気に入らないな。


「申し訳ありませんが、ご遠慮させていただきます」

「あら、そう」


 綺麗過ぎる笑顔をこんなにも嫌だと思うのは初めてだ。

 張り付いたような笑顔に同じように笑い返し、ダンスを続けた。

 鈴乃ちゃんと王子のペアも何か話しながら踊っている。

 二人も僕達と同じような会話をしているのだろうか。鈴乃ちゃん、大丈夫かな。どうもこの人たちは気に入らない。

 一曲分踊ると、大商人や貴族達に挨拶をして回った。

 いづれも僕達“勇者”を値踏みするように眺め回し、不快だったが笑顔で対応する。やたらと太った人が多いな。みんなずるがしこそうな目をしているし、根性が曲がりきってる人たちが多いと見た。

 明日からちゃんと情報を集めてみようか。場合によっては、城から逃げ出すことも考えておかなくては…。


投稿したと思ったらしてなかったwww

三話目です。アリヤ君サイドだけですねw

旅に出るのはまだまだ先…

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