二、お城と異世界
◇でサイド切り替え、*で場面とかの切り替えです。
目が覚めると、見慣れない天井があった。
おそらく強く打ち付けたのだろう頭と背中には全く痛みはなく、ただふかふかであたたかい。僕はベットに寝ているようだ。
身体を起こして周りを見回すと、やはり、僕はベットにいて(しかも天蓋付きだ)、おとぎばなしにでも出てきそうな綺麗で豪華な部屋があった。
服もかわっている。現代日本ではあまり見ないような、白地に金のラインが入ったゆったりとした上下の服。下着は変わっていないようだ。よかった。見慣れた制服を少し探してみると、サイドテーブルに鞄といっしょに綺麗にたたんで置いてある。靴も床に並べておいてあった。
それで、結局ここはどこだ?たしか、一緒に女の子も来てたはずだけど。
ベットから出て(僕のしっているベットよりかなり大きかったよ)広い部屋をはだしで歩き回ってみる。ふかふかのカーペットが足に気持ちいい。クローゼットにこれまたおとぎばなしに出てきそうな感じの服やマントが掛けてあるけど、まさかこれを着て王様にでも会うなかな。皮のブーツまで置いてある。
綺麗な花が生けてある高そうな花瓶、豪華で繊細な装飾を施されたドレッサーなどの家具、装飾品の剣や盾、豪華な絵画…。お城説も間違ってなさそうだ。
一目で高価だとわかる物たちを通り過ぎ、大きな窓に向かう。バルコニーだ。
外に出ると、気持ちのいい風が吹いていた。古風で西洋風な大きな町並みと青い空、適度に浮かんだ白い雲、下には豪華で広い、広場のような庭があり、町とは壁で隔たれている。もうお城説は確実だろう。
「あ…」
となりで声が聞こえた。
「やあ」
「よかった…生きてたんですね」
「そのようだね。死んだ感じじゃないし。あの時はありがとう。結果的に落ちちゃったけど」
「ごめん、なさい…」
「なんで謝るんだい?しかたがないことだったじゃないか」
「あ、え、と」
「ははは!」
なんかこの子和むな。
となりのバルコニーにいたのはあの時助けてくれた女の子だ。だいたい僕と同じようなかっこうをして、今は髪をほどいている。少し遠いけど話すのにはあまり不自由しない。そういう設計にでもなってるのだろうか。
「景色、きれいだね」
「は、はい。本の中にでも、飛び込んだみたい、です」
「僕もそう思ったよ。君、名前は?僕は夕日丘光夜。夕日丘でヒノオカ、光る夜でアリヤって読むんだ。面白い名前だろ?」
「は、はい。めずらしい名前、ですね。…あ!3-Dの、アリヤ先輩、ですか?」
「そうだよ」
「わ、私、は、1-Bの、穂積鈴乃、です。穂を積み上げる、でホヅミ、鈴乃、で、リノ、です。先輩の噂は、いろいろ聞いてました」
「へえ、流石だね。イケメンで成績優秀でスポーツ万能、あとナルシ、でしょ」
「あ、は、す、すいません…」
「だからなんで謝るのさ!」
「ご、あ、…ううう」
「あはははは!」
本当に和むなあ~。
ナルシ以外はホントのことなんだからしかたがない。
顔つきは誰が見ても悪いとは言わないし、成績も運動も誰にも負けたことが無い。社交的な性格だし女子にももてるけど、僕は謙虚じゃないからナルシストと思われがちなのだ。まあ、ナルシキャラでうってるからとくにどうも思ってないんだけど。
「鈴乃ちゃんでいい?」
「あ、はい」
「わかった。よろしくね、鈴乃ちゃん。これから大変そうだから」
「よ、よろしく、お願いします。えっと…夕日丘先輩」
「光夜でいいよ」
「あ、光夜、先輩」
「うん!」
◇◇◇◇
ニコニコと笑いかけてくれる先輩。
よかった、いい人みたい…。
本当に、噂どおりのかっこよさだ。こんな人いたんだってくらい。まるで本の中の登場人物…。
このお城みたいなところといい、古風な町並みといい、明らかに日本じゃないことはわかるけど…。
「不安?」
「…はい」
びっくりした。心の中を見られたみたいだ。
「僕もだよ」
真顔で町を眺める先輩。
でも、ちょっとだけ楽しそうに笑ってる。
「でも、先輩、楽しそうです」
「まあね。誰かが退屈な日常に刺激をくれたんだ。楽しむっきゃないでしょ」
挑戦的な笑みを浮かべている。
…私は、退屈でも平凡な日常がよかったな…。これから嫌な予感しかしないよ…。
二人で綺麗な景色を眺めていると、ドアがノックされた。
「失礼いたします。お目覚めですね、勇者様」
「え!?」
ゆ?なんて?
なんか、ミルクティー色の髪に灰色の瞳をした美人のメイドさんらしき人が変なこと言ってるー!?
先輩を見ると、向こうにも誰か来たようで苦笑いしていた。
「せ、先輩ぃ…」
「うん、わかるよ、その気持ち。ハハハ!これから僕らは勇者をしなきゃならないらしいね!」
勇者!!先輩はともかく(いやむしろぴったりだろう)、そんなの私のガラじゃない!!ムリだよ!!ムリムリムリムリ!!!
「只今より、謁見式が行われます。御洋服をお着替えくださいませ。お手伝いいたします」
張り付いたような笑顔が恐ろしい。
謁見式…?やはり王様にでもあうのか…?
「じゃあ鈴乃ちゃん、また後でね」
「は、はい…」
私達に選択肢はないらしい。
先輩と別れて室内に戻ると、メイドさんに手伝ってもらいながら服を着替えた。
天蓋のベットに、豪華な部屋。お城みたいだからと期待したけれど、クローゼットに用意してあったのは白を基調とし、今着ている服と同じような金のラインが入ったボーイッシュな服だった。
胴着やら鎖帷子、皮のブーツに真っ白にやはり金のラインが入れられたマント。上の長袖の白い服は短いワンピースみたいで、下にズボンをはいて、ズボンはブーツに入れる。なぜかどれもサイズがぴったりだ。
本当に、勇者なんかをしないといけないの…?
第二話です(汗)
誤字脱字はご報告ください(汗)
というか、名前がめんどくさい…。
主人公はアリヤ君で、夕日丘でヒノオカで…ムリがあるかな(汗)
自分でつけた主人公の名前を光夜でコウヤと読んでしまう大馬鹿作者ですw