クジラの船で、いい夢を
夜が、静かに深まっていくね……
今日の一日、いろんな気持ちが胸の中にあったよね。
楽しかったこと、ちょっと疲れたこと、嬉しかった小さな瞬間……
全部、ゆっくりと優しく抱きしめて、胸の奥にしまっていこう。
大丈夫だよ。
少しネガティブな思いが浮かんでも、それはただ心が「今日もよく頑張ったね」と、丁寧に記憶をセーブしてくれているだけ。
そのまま、そっと手放して……。
ふう……と、深く息を吐いてみて。
瞼が、だんだん重くなってきたね。
……ほら、想像してみて。
君は今、大きなクジラの形をした飛行船の甲板に、静かに立っている。
船体は淡い藍色と銀色に優しく輝き、夜空をまるで本物のクジラのように、ゆったりと泳いでいるよ。
ヒレがゆっくりと動き、尾びれが空気を優しくかき分けると、星の粉のような柔らかな光が、ふわっとこぼれ落ちる。
夜風が、君の頰をそっと撫でていく。
少しひんやりとして、でも心地よい温度。
船がわずかに揺れるたび、体が優しく包み込まれるような安心感があるよ。
最初に広がった景色は、黄金色の草原だった。
風に揺れる草の波が、月明かりを受けてきらきらと輝いている。
その真ん中に、白いワンピースの小さな少女が立っていた。
彼女は君の船を見て、目をキラキラさせて両手を大きく振ったよ。
「ねえ……私も、乗せてくれる?」
君が静かに手を差し伸べると、少女は軽やかに飛び乗ってきた。
彼女の笑い声が、風に乗って優しく響く。
「わあ……本当に飛んでる。気持ちいいね……」
飛行船はさらにのんびりと進み、紫色に淡く光る森の上へ。
木々の葉が、柔らかな光の粒をゆっくりと舞い上げている。
そこに、静かな目の青年が立っていた。
「……僕も、一緒にいいかな」
彼は穏やかな声でそう言って、船に乗ってきた。
君の近くに立ちながら、「この風、すごく優しいね」と呟いたよ。
その声は、聞いているだけで胸の奥がすうっと温かくなっていく。
船は雲の上の花畑を横切った。
白やピンク、水色の花が、ふわふわの雲の上で静かに咲いている。
手をつないだ老夫婦が、そこで穏やかに微笑んでいた。
「おやおや……素敵な船だねえ。
私たちも、連れてってくれるかい?」
二人が乗ると、少女が甘えるようにおばあさんに寄り添った。
おばあさんが小さな歌を口ずさみ始めると、みんなの声が重なって、子守唄のように優しく広がっていく……。
さらに、霧に包まれた静かな湖の上を滑るように進む。
湖面が鏡のように空を映し、遠くで小さな波の音がする。
そこで出会った女性は、静かに微笑んで船に乗ってきたよ。
「みんなと一緒にいると……なんだか、心が軽くなるわ」
今、君の周りは温かい人たちでいっぱい。
みんな、ただ静かに景色を眺めたり、時々優しい言葉を交わしたりしながら、
時間というものを忘れて、のんびりと空を旅している。
白い雪の山脈を優しく越え、
宝石のように輝く海の上を滑り、
夜桜が静かに咲き続ける谷も、ゆっくり通り過ぎた。
どの景色も美しくて、
どの出会いも、ただ温かかったね。
……ねえ、もう瞼がほとんど閉じてきたね。
クジラの飛行船は、君を優しく守るようにゆっくりと旋回している。
風の音、遠い歌声、船の柔らかな揺れ……全部が、君を深い安心感で包み込んでくれるよ。
怖い夢も、忙しい思いも、今夜は遠くへ。
ここは、ただ温かくて優しい世界。
ゆっくり、深く息を吸って……
そして、ゆっくり吐いて……
今日の頑張った自分を、そっと胸の中で抱きしめてあげて。
もう、目を閉じていいよ。
良い夢を。
……おやすみなさい。




