『速度一定』と『車間距離一定』──どちらが正しい?
大型トラックの運転手をやっております。
今日まで仕事でしたが──
年末で交通ぐちゃぐちゃでした。
主に高速道路を走ったのですが、交通量が多いのはもちろんのこと、ペースが急激に速くなったり遅くなったりで、いつ追突事故が起きてもおかしくないような状況でした。
とにかく速度が急に変わるんです。
80km/hぐらいで流れてたのが、いきなり20km/hぐらいに落ちて、皆さんブレーキを踏まれてました。
渋滞の一番の原因は『速度変化』です。
そりゃあ深刻な渋滞になるのが当然ですし、事故の危険性も増すような状態でした。
さて、SNS動画のコメント欄で、次のように意見が分かれているのを先日見ました。
「速度を一定にして走るべきだ!」
「違う! 一定にするべきなのは車間距離だ!」
これ、日頃道路を走っていて、『あぁ、このひとは車間距離一定派なんだな』などと思うことが確かにあります。
さて、これはどちらが正しいのでしょう?
じつはその答えは明確です。
その答えを言う前に、公道で一番多いのはこのどちらでもないということに触れておきます。
言うまでもなく、公道で一番多いのは『車間距離詰め詰め派』です。
前に割り込まれるのを嫌うのか、とにかく前の車との車間距離ギッチギチにして走る車がほとんどだといえます。
これをすると前の車の悪い影響をモロに受けます。
前が急ブレーキを踏んだらさらに強く急ブレーキを踏むことになり、追突しかけた後ろの車がさらに強い急ブレーキを踏みます。
なるべく前の車列の悪い影響を後ろに伝えないためには、渋滞の時こそ車間距離は広く取っておくべきです。
さて、先述の問題の答えですが──
これは明確に、『速度一定』のほうが正しいです。
なぜか?
車間距離というのは『空けるもの』ではなく、『使うもの』だからです。
車間距離を空ける目的とは何でしょう?
自分が前の車にぶつからないため?
それもありますが──
正しくは『速度変化を緩やかにするため』です。
前の車にぶつからないため、車間距離を空けたまま急ブレーキを踏めば、後ろの車にぶつかられます。
ぶつかられないにしても、確実に後ろの車列にしわ寄せがいきます。
車間距離とは『空けるもの』ではなく、『バネのように伸ばしたり縮めたりしてクッションとして使うもの』です。
日頃公道で見ていると、車間距離を空けてるのに、けっして縮めないひとをよく見かけます。
車間距離を詰めるということに強い拒否反応でもあるかのように、前の車の速度が落ちたら、それよりもさらに速度を落として車間距離を保とうとするのです。
確かに自分だけは前の車にぶつからないことでしょう。
しかし後続車列は後ろでぶつかりそうになっています。
こういう車の挙動は、じつは車間距離詰め詰めの車と同じです。むしろ車間距離を無駄に空けているぶん、さらに交通全体に及ぼす悪影響が何倍も大きいといえます。
自分の前の車間距離を保とうとすれば、前の車の悪い影響をモロに後続に伝えてしまいます。
この場合の車間距離は『クッション』ではなく、ただの『つっかえ棒』です。
車間距離を一定に保とうとするということは、自分だけ前にぶつかる危険を避け、後ろをグチャグチャに詰まらせてしまうということに他なりません。
今日、私が見た急激に速くなったり遅くなったりする交通の流れというのは、主に車間距離詰め詰め派が原因を作り、それを車間距離一定派がブーストしてしまうがゆえに起こるものだといえます。
速度一定派は渋滞を緩和します。
『速度一定』というフレーズに誤解を抱いているひとが多いように思います。
『速度一定』といっても、ずっと同じスピードで走るという意味ではありません。
単にそれは『速度変化を緩やかに走行する』という意味です。
車間距離を空けて走っておいて、前が急激に速度変化しても、その後尾に向かって緩やかに減速しながら車間距離を詰めていき、急激な速度変化を後ろへ伝えないというだけです。
車間距離を『自分が前にぶつからないために空ける』のではなく、『速度変化を緩やかにするため』、伸ばしたり縮めたりする走り方をするのが『速度一定派』なのです。
ただ、ここで前の車が車間距離一定派だと、困ったことが起きます。
車間距離一定派は、後ろの車にも車間距離一定を押しつけるものらしく、車間を詰められたら急ブレーキを踏んだりするのです。
交通全体のことなどまったく考えていません。
ただ『自分が車間を詰められた』ということに対して精髄反応をするのです。
運転に不慣れな女性などが後ろを詰められて怖がってスピードを落とすのとはわけが違います。
自分の正義を思い知らせるために踏むブレーキは『後ろ向きの煽り運転』と言われます。
車間距離は一定に保つものではなく、伸ばしたり縮めたりしてクッションとして使うのが正しいのです。
もちろん縮めすぎてぶつかってはいけませんが、前の車が正義を押しつける車間距離一定派だとどうしても詰まってしまいます。
できればすべての車が速度一定を意識して走行していただきたいと思うところです──
が!
じつは速度一定走行というのは視野が広くないとできません。
視野の広いひとというのは上空から見下ろす鳥のような視点で交通状況を見ています。一点だけを注視しているわけではないので、スピードが見えています。パチンコ台に顔を近づけすぎていてはパチンコ玉のスピードは速すぎて見えません。引いた視点から見るからこそ、ゆったりと全体を捉えることができるのです。
直前の車のお尻しか見えていないひとが同じことをしようとすると直前まで気づかずにそのままのスピードで突っ込んでしまったりします。
いろんな技能、いろんな経験、いろんな才能のひとがいますので、誰にでも同じ運転ができるわけではありません。
視野の狭いひとには車間距離一定走行のほうが確かに安全だといえるでしょう。
ただ、運転に慣れた、視野の広いひとでも車間距離一定や詰め詰めを『正しい』と思ってらっしゃる方が多いです。
車間距離一定派が産み出す交通全体に与える悪影響を、上手なひとまで一緒になって及ぼしてしまっているのが現状です。
これからさらに交通渋滞の時期に突入していくことでしょう。
事故や渋滞をなるべく起こさせないようにするためには、車間距離をしっかりと取ってください。
運転に自信のない方は取るだけで結構です。
ただ、運転に自信があるなら、ぜひ渋滞を吸収するような運転をお願いします。
速度変化を緩やかにするために車間距離を空けておき、前にぶつからないのはもちろんのこと、後ろを詰まらせないように、クッションとして車間距離を『使う』ことを心がけてください。
少なくとも『車間距離一定』という考え方は『自分だけが安全な走り方』であり、『周囲を極めて深刻な渋滞かつ危険な状態にするもの』だということをご理解ください。




