第2話
「どういうことなの?」
話しを続けるようとするリネットにメイドが割って入る。
「ライラ様、申し訳ございません。まずはリネット様を寝室に」
「それもそうね。まずは安静に」
私の言葉にリネットはコクリと頷く。
1時間ほどしてリネットに仕えるメイドが私のところにやってきて
『話しを聞いてほしい』と、私をリネットの部屋まで案内する。
ドアをコンコンとノック。
「ライラです。入るわよ」
ドアを開けるとベットに横たわっていたリネットが上半身を起こすのもやっとの様子で起き上がろうとしている。
「ちょっと!無理しちゃだめよ」
思わず駆け寄って彼女の身体を支えた。
「ライラ様。先ほどは失礼しました」
「お腹の子供だけど⋯⋯旦那様との白い結婚と関係あったりする?」
コクリと頷くリネット。
「継母への抵抗といったところでしょうか⋯⋯」
「継母?」
「私には結婚を約束していた殿方がおりました。ですが父が勝手にデュプレクス家との結婚を決めてしまい⋯⋯」
シーツを握るリネットの拳に涙がポタポタと落ちる。
「どうしてその方とお付き合いしていることをお父上に話さなかったの」
「今の貴族に父の決定に逆らえる者などおりません!」
王宮の人事権を意のままにして王国を支配しているレオン・ラガルド内務卿。
たしかにお付き合いしていた男性がそのタイミングで名乗り出れば官職を干されるだけじゃなく、
領地も爵位も召し上げなんてことは容易に想像できる。
だから貴族たちはラガルド公爵家に恐れをなし、一方で公爵家の威を借りようとお義母様のように取り入ろうとするのだ。
「ロイク様にはすでにライラ様という奥様いるのに私がきたことでデュプレクス家をめちゃくちゃにしてしまいました。
私のせいでお義母様をあのような仕打ちに駆り立ててライラ様をつらい目に」
気づいていたのね⋯⋯
「お腹の父親のことはわかったわ。だけど白い結婚がお継母様への反抗というのは?」
「私には下に3人の腹違いの兄妹がいます。兄妹ができてから私を邪魔に思った継母から
つらい仕打ちを受けてきました。食べ物や着るものには差をつけられ、人前ではできの悪い子と罵られてきました」
そうか。彼女は今の私だ。
「『本当の母親の育て方がよくないのかしら』と、実の母を罵倒されたときは怒りと悲しみが入り混じって感情がぐちゃぐちゃになりました」
お義母様とリネットの継母の姿が重なる。
「急な結婚も私を追い出したい継母の意向です。デュプレクス家を選んだのも第2夫人の立場にして私を貶めたい継母のたくらみです」
つまり彼女の白い結婚は継母の意のままにならないという意思の現れか。
「だけど妊娠はあなた自身、想定外だった」
「はい。妊娠したことを旦那様が知ったらショックを受けるでしょう。それにお義母様もラガルド家での私の立場を知ったら
このお屋敷から追い出すでしょう」
「あなたを溺愛しているお義母様ならそのような心配はしなくてもいいんじゃない?」
「取り入る価値のないとわかったら簡単に手のひらを返される。さんざん経験してきました」
たしかに⋯⋯だけどどうしよう⋯⋯お義母様がリネットの真実を知ったからといって私に対する風当たりが変化するとは思えない。
何か手はないのかしら。
この状況を好転させる手ーー
⁉︎
そうだ⋯⋯
「リネット様、私が妊娠したことにしましょう」
「え?」
「隠すの。旦那様にもお義母様にも」
「だけど、つらいのはライラ様では」
「ライラでいいわ。大丈夫。私にメリットがある」
私が身重の身体になればお義母様は離婚を迫れない。
それがメリット。
狙いどおり私が妊娠を公表してからお義母様の嫌がらせがぱたりと止まった。
妊娠中の世話が必要という理由で実家からメイドたちを呼び寄せることに成功。
もちろんメイドたちには真実を話した。
これから妊婦のフリを続けるには協力者がいたほうがいい。
時期がくればお腹に詰めものをして大きく見せたりなんて、ひとりでできることではない。
私が妊婦を演じている間、リネットには体調が悪いという理由で部屋に篭ってもらう。
そしてリネットととは2人で過ごす時間を増やした。
ライラとリネットはいつも一緒にいて仲がいい。それはお義母様にとって想定外のはずだから。
数日後、私はメイドたちを引き連れて屋敷の廊下を堂々と歩く。
これは目の前から歩いてくるお義母様に見せつけるためだ。
お義母様は私を見るなり苦虫を噛んだような表情で私に頭を下げて道をゆずる。
勝った。
だけど、思わぬ知らせが届く。
駆け寄ってきたメイドが耳打ちをしてくる。
「旦那様が帰ってくる⁉︎」
まさか! 半年後だったはずの旦那様の帰還が明日になった⋯⋯
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