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異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~

異世界美少女エリス<願望スイッチの魔法>

西村浩介は、冴えない人生を送る平凡な男だった。夢見た出世は叶わず、婚約者には愛想を尽かされ、職場でも軽んじられている。友人もおらず、ただ日々をやり過ごすことに疲れ果てていた。


そんなある夜、残業を終えて自宅アパートへ帰る途中のこと。街灯の下に、不思議な少女が立っていた。銀髪に白いワンピース、その手には小さな箱を持っている。


「こんばんは、西村浩介さん」


「俺を知ってるのか?」


「ええ、もちろん。私はエリス。あなたにちょっとしたプレゼントを持ってきたの」


彼女が手渡したのは、小さな銀色のスイッチだった。箱の中に収められており、片手に収まるほどのサイズだ。


「これは『願望スイッチ』。使い方は簡単。スイッチを押しながら心の中で何かを望めば、それが叶うわ。ただし、些細なことしかできないから、大それた期待はしないでね」


エリスは微笑んでそう言うと、煙のように消えた。


浩介はその夜、ベッドに寝転びながらスイッチを見つめていた。


「どうせまた、夢でも見たんだろうな」


試しに、部屋の片隅に転がっていた空き缶に向かって願ってみた。


「片付いてくれ」


スイッチを押すと、空き缶はスッと動き、ゴミ箱の中に収まった。浩介は目を見開いた。


「本当に動いた…!」


翌日から、浩介は願望スイッチを日常に使い始めた。部屋の掃除、仕事の小さなミスの修正、忘れた資料の復元。ささやかながら確実に便利だった。


そのうち彼は、もっと「役立つ」使い方を思いつく。通勤途中で混雑した電車の中、スイッチを押して「隣の人が降りる」ことを願う。すると、本当に隣の人は次の駅で降りた。


「これ、最高じゃないか!」


彼の生活は徐々に快適になっていった。


しかし、便利な道具は人の欲を増幅する。浩介はある日、婚約を破棄した元婚約者のSNSを見て、彼女が裕福な男性と幸せそうに写る写真に苛立ちを覚えた。


「あいつが俺を見下して笑っていると思うと腹が立つ…」


浩介は願望スイッチを手に取り、心の中で呟いた。


「あいつが失業しますように」


翌日、彼女のSNSには、解雇を嘆く投稿が載っていた。それを見た浩介は心の底から笑った。


「ざまぁみろ!」


その日から、浩介のスイッチの使い方は変わっていった。過去に馬鹿にしてきた同僚を転倒させたり、仕事を横取りした上司の商談を破談にしたりと、復讐に用いるようになったのだ。


しかし、スイッチを使えば使うほど、浩介の生活はどこかぎくしゃくしていった。部屋は静まり返り、誰とも口を利かなくなった。職場でも、同僚たちの視線は冷たい。


「なんだよ、みんなして…」


彼は不安に駆られ、さらにスイッチに頼るようになった。そして、ある日を境に事態は急変した。職場でのミスをスイッチで誤魔化そうとした瞬間、スイッチが反応しなくなったのだ。


「どういうことだ…壊れたのか?」


スイッチをいくら押しても何も起こらない。そのうち、スイッチから黒い煙が立ち昇り、目の前にエリスが現れた。


「こんにちは、浩介さん」


「どうなってるんだ! このスイッチ、壊れたのか?」


エリスは微笑みながら首を振った。


「あなたの行いが限界を超えたのよ。些細な願望だけ叶えられるはずだったのに、あなたはそれを人を傷つけるために使いすぎた」


「でも、俺はただ…!」


エリスは容赦のない目で浩介を見つめた。


「だから、リセットよ」


彼女が指を鳴らすと、浩介の視界が真っ暗になった。


目を覚ますと、浩介はアパートの部屋にいた。机の上には、壊れた銀色のスイッチが転がっている。それを手に取り、押してみても何も起こらなかった。


「終わったのか…」


彼は深く息をついた。部屋の中には物が散らかり、生活の荒れた痕跡が残っている。スイッチを手放し、浩介は立ち上がった。


「もう二度と、楽な道には逃げない」


彼は掃除を始めた。机の上のゴミ、床に散らばる衣類、それらを一つずつ片付けていく。その手はどこか軽やかだった。


「願望スイッチ」は壊れたままだが、浩介はそれを手に取ることなく生きることを選んだ。地道な努力の先にしか、真の幸福はないことを知ったからだ。


彼がスイッチを捨てたその夜、エリスは遠くからそれを見届け、満足げに微笑んだ。

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