北の書7 ~思春期最大の悩み 好きな子に話しかけられる?~
さて愛理ちゃんのお悩み相談は一段落したわけだけど、これで終わりじゃつまらないわよね。彼女に確認すると妹のお迎えに行く夕方までは時間があるということで、もう少しこの事務所でおしゃべりすることになった。
「悪いわね~受験生の時間を取っちゃって。でも緊張の糸をずっと張り詰めていたらいつかプツンと切れちゃうからね、息抜きも必要よ?」
「私こそ相談相手になってもらっちゃって、ピザもごちそうになりましたし。」
「良いのよ、どうせ夕方のお散歩代行までアタシ暇だし。さぁどうぞ。」
アタシはお茶に合うよう和菓子のモナカを出すと、彼女はとても喜んでくれた。恋する乙女が一番気にすること、それはダイエットである。冷蔵庫にはチョコレートケーキもあったが、ただでさえ今ピザを食べたばかりのだ。ケーキを出していたら絶対断られていただろう。洋菓子より和菓子のほうが低カロリーだからね、さすがアタシ。
「それよりその小野くんとはどうなのよ?よくしゃべるの?」
「いえぜんぜん話しません。登下校の時間も全然合わないので、同じ学校・同じ学年なのに、たまに廊下で見かけられたらラッキーって思うほどです。あと私はもし同じクラスだったとしても変に意識しちゃって、あんまり話しかけられないタイプだと思います。」
「男も女も"好きな相手に積極的になれるか?"の問題については2極化しがちよね。『好きだからこそたくさん話したい』タイプと、『緊張したりヘンなこと言って嫌われたりするのがイヤだから話しかけられない』ってタイプ。愛理ちゃんは後者ってことね?」
「はい…。のり子さんはなんだか積極的に話しかけそう。」
「そんなことないわ、アタシも中学生の頃は好きな男子に話しかけられなかったわよ。なんか意識しちゃって頭が真っ白になるのよね、なんとも思ってない男子とはいくらでもおしゃべりできたのにあの頃は自分でも不思議だったわ~。」
「じゃあ今は平気ってことですか?」
「それがね~よくわかんないのよね、最近は恋っていう恋をしていないから。だから余計に他人の色恋沙汰が気になるのかしらね?」
話を聞きながら、アタシのコップが空なことに気づきお茶を足してくれる愛理ちゃん。何も知らない他人が見たら完全に女上司を接待する新人部下って感じよね、若すぎる部下だけど。
「待って?ということはその男子とおしゃべりしたこともないの?いつも遠くから見てるだけ?」
「いえ、数回だけど会話したことはあるんです。しかも小野くん優しくて、彼の方から私に話しかけてくれました。今思えばそれが小野くんを好きになったきっかけです。」
なんですって?これは恋の相談を受けた者として、ぜひ詳細を知っておく必要がありそうね!
「ちょっと愛理ちゃん、ソレよそれ!」
「え?」
「そういう話が聞きたかったのよ!もっと聞かせて?いわゆる馴れ初めってやつね。」
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※この話は一部フィクションです。